前書き
『「運」という不確実なものについて、世の先人たちが語る「運」には、ある種の共通項があるのではないか?』
毎日続けている読書感想文「1日1話」の記事の読書の中で、何度か「運」について語る先人たちの記事を読んできた私は、「運」について語る記事について「運シリーズ」というタグを振る感想文をQiitaの中でも書くことを始めた。
先人たちが語る「共通項」について考察し、エンジニアとして、人間として生きるためのヒントを掴もうというためである。
今日読んだ記事、致知出版社『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』の【9月25日】目。大和ハウス工業の中興の祖、樋口武男さんの記事、
自らも「強運」だと語る樋口さんの記事を「運シリーズ」として紹介させていただく。
本題【9月25日】 運を強くするには人の道を守ること 樋口武男 大和ハウス工業会長兼CEO
樋口武男。経営者。大和ハウスへは中途入社したという。
創業者の石橋信夫からの絶大な信頼を得て36歳の若さで支店長に抜擢され活躍し、大和ハウス工業のトップにまで上り詰めた。
プレハブ住宅の建設で創業した大和ハウス工業を連結売上4兆円規模の大企業へ発展させた中興の祖として活躍した。
2020年、高齢のため会長職を自ら勇退。
1938年生まれ。御年、83歳。
樋口が語るのは『運を強くする』方法。運の話だ。この本でたびたびテーマになっている「運」。日本経済界の重鎮、樋口が語る「運」とは?。
『福岡時代には忘れられないお客様がいます。工学博士の小田さんという方です。現役の頃は土木工学の権威だったそうですが、リタイア後は先祖の残した山を開発して、六百区画もの宅地を持っていました。
それをわが社にも売らせてくださいと飛び込みで訪ねていきましたが、この小田さんは地元では「変人」と呼ばれて、人を家に上げたことがない。他社も数社訪れたそうですが、全部門前払いされたといいます。
当然私も最初はそうでしたが、通いに通いつめてようやく玄関先で話せるようになり、さらにはある日、「きょうはどうぞうお上がりください。私は何万人もの人に会ってきたが、あなたのような人は初めてだ」と、どこをどう気に入られたのか分かりませんが、部屋に上げてもらいました。
そうして仕事をいただいて、息子のように可愛がってくださるようになった頃、小田さんは、
「私の資産は二十、三十億あるでしょう。それを全部あなたに託してもいいから、独立して会社を起こしたらどうですか」
と言われたんです。当時の二十、三十億円といったらおそらくいまの百億円くらいあるでしょう。もともと私は自分の会社を持ちたいという思いで社会に出ていますから、喉から手が出るほどありがたいお話でした。
しかし、二十五歳で入社して三十六歳で支店長にしていただき、こうして福岡の支店長をさせていただいているのも自分一人の力ではないという思いもある。私は「一晩考えさせてください」と言って、その場を後にしました。
よくよく考えてみても、会社が自分を必要としてくれていることは分かっていました。世話になった会社に後ろ脚で砂をかけるようなことをしては人の道に外れるのではないかと思いまして、翌日、
「大変ありがたいお話ですが、これからも先生とは”大和ハウスの樋口”としてお付き合いさせてください」
とお返事しました。』
ふむ。先ずは「変人」と言われている資産家にどうやって樋口が気に入られたのかが気になるところであるが、他社のライバルサラリーマンには無い、そうとうな根気があっただろうことは想像できる。
もしかして資産家も根負けしたのかもしれないな。一流の人が持つと言われる「狂」の部分を、樋口に認めたのかもしれない。
結果、樋口は現在の価値でいうところの百億円くらいの土地の営業権を獲得できたという。建設会社の営業マンのノルマのことはよくわからないがそれだけでも相当な成果となるのではないだろうか?
そして更に、資産家が自分の資産を託すので独立してはどうか?と持ち掛けたという。「息子のようにかわいがってくださるようになった頃」とあるが、ビジネスライクな付き合いじゃあなくプライベートでも付き合いをしていたのだろう。
将来「自分の会社をもちたい」という話もしていたのであろう。
なかなかにスケールの大きな話である。たしかに「運が強い」といってもいいだろう。でも、樋口はその話を断ったという。「人の道に外れるのではないか」と思ったのがその理由だ。
樋口は続ける。
『こういう方との出会いがあるのも私の運の強さだと思います。小田さんが亡くなられてからも十三回忌までずっと出させていただきましたが、そのくらいになると集まるのは五、六人になるんですね。
オーナー(※創業者の石橋信夫氏)も事あるごとに「樋口君も運のいい人と付き合え。運の悪いやつと付き合うと運を取られるぞ」と言っていましたが、要は人の道を守らない人間に運なんてついてこないですよ。
それと、親を大切にしない人間が他人様を大事にできるわけがないですよね。親を大切にするというのは恩ある人を大切にするということです。だから、世話になった人に後ろ足で砂をかけて逃げるようなことは絶対にしてはいけない。
運を強くするには人の道をちゃんと守ることが一番大切だと思います。要するに人として当たり前のことを当たり前にする、凡事徹底ということです。』
なるほど。樋口が語る「運」。彼もまた自らの行動が「運」を手繰り寄せると語っている。
そしてその方法は「凡事徹底」。「当たり前のことを当たり前にする」ことだ。
なんだ、そんなことかと思う人も多かろう。でも私はそうは思わない。「当たり前のこと当たり前にする」これはなかなかに難しいことなのだ。
だから私は、当たり前のことをばかにせず、ちゃんとやってできるようになりたい。
(参考)
樋口武男(大和ハウス工業・会長) ー私の履歴書 日経スペシャル テレビ東京
経済学部開設40周年記念事業講演会「経営者に学ぶ社会を生き抜く力」 -ふくし新書 日本福祉大学
後書き
以上、「運シリーズ」第6弾、大企業の経営者が考える「運」とはっ! でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
よろしければ、過去の「運シリーズ」も読んでいただければ幸いです。