はじめに
ご覧いただきまして、ありがとうございます。
ニッセイ情報テクノロジー株式会社 プロダクト・サービス事業推進室の青木と申します。
本稿では、LiDAR(ライダー)を活用したサービスを検討した際の話を記述させていただきます。LiDARとは、レーザー光を照射してその反射光から対象物の距離や形状を計測する技術です。この技術とAIを掛け合わせ、住宅内の危険個所を自動診断するアプリケーションを居宅介護支援事業所や自治体向けに開発しようと試みましたが、失敗に終わった話をご紹介させていただきます。
LiDARを活用したサービスを検討した背景
「高齢者の住宅内事故を未然に防ぎたい」
高齢者の住宅内事故は事故全体の約7割を占めています。発生場所は、居室、台所、階段の順に多く、事故の主な原因は、つまずいたり、踏み外したりするなど、足元の不注意がほとんどです。
参考文献
事故によって身体障害や健康を損なうリスクが高いとされているため、事故を未然に防ぐことが重要であると言えます。この対策の1つとして、住宅内の危険個所を知らせるサービス(アプリケーション)を開発し、バリアフリーの促進を目指しました。
サービスイメージ
LiDARとWiFiセンサーを利用して対象領域の3D画像や図面、生活導線を把握し、その情報を入力としてAIに危険箇所を診断させ、その結果を3D画像上に表示させることを構想しました。これにより、誰もが同じ目線で改善箇所を検討できるようになると考えました。
知識がない方が、言われるがままに不適正な工事を実施してしまうケースもあるようです。このサービスによって、真に改善すべき箇所を誰もが把握することができれば、そのようなケースを防ぐことができると考えています。
当サービスの難しさ
下記2点の難しさから、このサービスは断念することになりました。
①IT機器の調達コストが高い
スマートフォンを用いて住居内を撮影することでサービスを実現しようと検討しましたが、LiDARが使用できるスマートフォンはiPhoneの場合、「iPhone 12 Pro」以上が必要となります。そのため、事前に複数台準備しようとすると、多額の費用が必要となってしまいます。センサーに関しても同様です。
情報収集に必要なコストと、得られる効果を比較検討した結果、現状では、そこまで費用を投じるだけの効果が見込めないとの結論に至りました。
②マネタイズが難しい
利用シーンとしては、バリアフリーを検討するタイミングくらいであると考えられます。また、居宅介護支援事業所や自治体、高齢者の方にお金を払ってでもこのサービスを利用したいと思えるかをヒアリングしましたが、良い回答は得られませんでした。(理由はここでは記述し辛いので伏せます)
得た教訓
LiDAR に限らず、専用のデバイスが必要なサービスはIT機器の調達コストが高くなりやすい傾向にあるため、それに見合う価値のあるサービスのアイデアでなければ成り立たないと痛感いたしました。綺麗ごとだけではお金は稼げないようです。
今回はLiDARという技術を知り、この技術が使えるアイデアはないかと考え、サービスアイデアを検討しましたが、技術ドリブンでサービスを検討すると、マネタイズで行き詰まってしまうケースが多いです。
「面白そう!」という感情だけで突っ走るのではなく、一呼吸置くこと。技術知識とサービスアイデアのストックを増やすことで、さまざまな組み合わせを検討できるようにしていくことが大切だと思いました。