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縮退がある点で有効質量をフィッティングで求めるときの注意点

Last updated at Posted at 2025-04-20

ZincBlend構造のVBMでのGamma点での有効質量をバンド計算で求めるのにはどうしたらいいか?縮退がある場合に注意しないといけない。普通はフィッティングで求めたい。

Gamma点で考えることにする。Gamma点での群対称性を考えると(L=1,S=1/2)の3x2=6つの状態が縮退しており、角運動量合成法則により$p_{3/2}$(J=3/2,4重縮退)と$p_{1/2}$(J=1/2,2重縮退)の2つの準位に分類できる。スピン軌道相互作用により、この2つの準位が分離する。$p_{3/2}$はHH(Heavy Hole)+LH(Light Hole)であり、$p_{1/2}$はSH(スプリットオフ)である。

$p_{3/2}$は二重縮退であり、Gamma点周りの分散関係が問題になる。
HHバンドとLHバンドに分かれる。キッテル本には以下のようなHH,LHの分散(有効質量)の式がある。
image.png

  • $e({\bf k})$の式には${\bf k}=0$を特異点(分岐点)とする関数が含まれている。すなわち、
    $z_1=k_x^2,z_2=k_y^2,z_3=k_z^2$という3つの変数$z_1,z_2,z_3$に関する複素解析関数であると見立てると、$z_1=z_2=z_3=0$が特異点となっている(多変数複素関数は難しいらしいが、無限回微分可能かどうか考えれば良い)。

  • k=0でテイラー展開できない。$k_y$を有限の値、$k_z=0$を固定して考えてみる。$k_x^2$の関数として$k_x^2=0$での微分を考察する.$k_x^2$での微分が、$k_x \to 0,k_y \to 0$において、その比を与えないと定まらないことがわかる。注意深く考察しておくべき。33式が複素解析関数$y=\sqrt{z}$という分岐のある関数を含むためにこういうことが起こっている。

「大雑把に言って」と書かれている点に注意が必要。球面でないので向きによって2次曲率がものすごく違っている。ダイヤモンドでもSOCをいれないと有効質量は計算できない。

  • Siで100方向だと($k_x=k,k_y=k_z=0$として)
    $\epsilon(k)=(A \pm B) *k^2=(-4.29 \pm .68) *k^2$
  • Siで111方向だと($k_x=k_y=k_z=k/\sqrt{3}$として)
    $\epsilon(k)=(A \pm (B^2+C^2/3)^{1/2}) *k^2=(-4.29 \pm 2.89) *k^2$

となる。向きによって質量が全く違っていることに注意しないといけない。(ほんとにこんなに違うのかな?).
通常、300Kとかいう室温が問題になるので、そもそもその範囲が、この摂動論の有効範囲かどうかにも注意がいる。

フィッティングしようと思ったら、たとえば、100,110,111方向でフィットしないといけない。で、数式33からA,B,Cを決めるか、あるいは何らかの単純な方法で有効質量を求めないといけない。あるいはSOCハミルトニアンを直接に書かせたほうが簡単かもしれない。

一般に縮退がある場合は同様のことがおこりえる。Hamiltonianがk空間でスムーズなものであってもその固有値は二重縮退なら二次方程式の解の公式を用いることになり、どうしても特異点周りの展開になってしまう。
バンド構造はBZ中で多くのバンド面があるが、交差したり、接触したりしており、それなりにいろいろと面倒くさいことにはなっている。

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