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行列式と逆行列

Last updated at Posted at 2023-05-31

予備:
まず2次元ベクトル空間において「面積とはなにか?」を考えてみる。
面積は、2つのベクトル${\bf a},{\bf b}$の関数である。ベクトル${\bf a}$を固定して考えると、${\bf a}$に垂直方向の成分を乗じたものが面積である。${\bf b}$の「${\bf a}$に垂直方向の成分」は${\bf b}$の線形関数である。ただし、マイナス方向にもなり得るので、「まずは線形関数である向き付き体積$S({\bf a},{\bf b})$」を考え、その絶対値を面積である、とする必要があることがわかる。


次に、3次元ベクトル空間において、3つのベクトルa,b,cのつくる平行六面体の向きつき体積関数$V({\bf a},{\bf b},{\bf c})$」を考えよう。この関数$V$に対して以下の1,2を要請する。以下の議論はN次元にも適用することができる。

向きつき体積と行列式

以下の「向き付き体積」が行列式そのものである。要請1と2は上述の考察から、「向き付き体積」として自然なものである。

要請1
$V({\bf a},{\bf b},{\bf c})$が、それぞれの引数についての線形関数であることを要請する。例えば${\bf a}$,${\bf b}$を固定して${\bf c}$の関数として体積を考えるなら${\bf a}$,${\bf b}$の作る垂直面に対する成分のみが効くので加算的であるからである。これは2次元のときの議論と同じである。
要請2
$V({\bf x},{\bf x},{\bf y})=0$を要請する。体積なので同じベクトルが2個入るとゼロとなること.

このような性質を持つ線形関数は完全反対称線形関数である。すなわち2を用いて、$V({\bf a+b},{\bf a+b},{\bf c})=0$を1の線型性を用いて展開しさらに2を用いると、$V({\bf a},{\bf b},{\bf c})+V({\bf b},{\bf a},{\bf c})=0$となるのがわかる。これは1番目と2番めの引数について行ったが、他の組み合わせの引き数についても同様であり、完全反対称化線形関数と呼ばれる。

さて、要請1から、3つの基底ベクトル$e_1,e_2,e_3$を用いた3x3x3=27個の$V(e_i,e_j,e_k)$が存在し、$V({\bf a},{\bf b},{\bf c})$は、この基底$e_1,e_2,e_3$による${\bf a},{\bf b},{\bf c}$の成分表示から計算できることになる。しかし、27個必要かというとそうではないー上述の完全反対称性より基底をひっくり返す(置換する)と符号が変わることになる。これはすべての置換について言えるから$V(e_1,e_2,e_3)$がわかれば体積が計算できることになる。

この向きつき体積こそがa,b,cの作る行列式そのものである。内積の定義とは無関係に導入されることにも注意しておく。長さ(内積で定義されるもの)は、ここで考える体積とは別の概念である。
(この時点での蛇足:外積代数の概念について。$V(e_i,e_j,e_k)$を${e_i}$^${e_j}$^${e_k}$などと書いたりもする。${e_i}$^${e_j}$も考えることができる。反対称化の要請から${e_i}$^${e_j}$^${e_k}$は3次元空間では1個しかないが、4次元空間中の${e_i}$^${e_j}$^${e_k}$は4個存在する。体積は線形性と反対称性を用いて${\bf a}$^${\bf b}$^${\bf c}$を基底ベクトルを用いて表現したときの${e_1}$^${e_2}$^${e_3}$の係数となる。

逆行列

上述の体積関数において、${\bf a}$を${\bf x}$に置き換え$V({\bf x},{\bf b},{\bf c})$を考えよう。${\bf x}$に${\bf a}$をいれると元の行列式の値(=向きつき体積⊿とおく)を再現する。一方で、${\bf x}={\bf b}$あるいは${\bf x}={\bf c}$とすると要請2からゼロとなってしまう。またV(x,b,c)はxの線形関数であり、V(x,b,c)=Axと書ける(・は内積である。これをまとめると、「⊿=V(a,b,c)として、Aa=⊿、Ab=0、Ac=0」である。同様にして、BCも作れる。

A,B,Cのそれぞれを行ベクトルとして(行、列は英語(横書き)で考える)上から並べた行列を考える。これに行列(a,b,c)(これは列ベクトルを横に並べる)を掛け合わせると、⊿を対角成分に持つ対角行列を得る。これを⊿で割っておけば逆行列となる。

上述の記述は多次元にも一般化できる。3x3行列を教えたら一般的な話はだいたいみなわかる。線形代数の教え方には問題が多い、掃き出し方などを延々とやらせなくていいし、数値をいじるのならpythonと組み合わせて教えたほうが良い。サラスの公式を暗記させるなども悪弊だと思える; 数独と行列式の関係を考えてみたほうがいい。伝統的な余因子行列の教え方では意味がつたわらないことも多い。

外積代数

$V(e_1,e_2,e_3)$のことを$e_1$^$e_2$^$e_3$などと書いたりする。N次元空間において完全反対称化線形関数$A(v_1,v_2,...,v_{M})$を考えると,その基底($A$の計算に必要なもの)は$A(e_1,e_2,...e_M)$など「N個の中からM個取り出す場合の数だけ」あることになる。これを$e_1$^$e_2$^$e_3$...^$e_{M}$などと書く。これが外積代数の基底となる。ベクトルの順序は意味がないが、これに含まれる$e_i,e_j$をひっくり返すとマイナスが出る。Mは1からNまで取りうる。たとえばN=3、M=2では3次元空間において$e_1$^$e_2$,$e_2$^$e_3$,$e_3$^$e_1$を考えることになる。3方向の射影面の基底である。

ここでもうちょっとアイデアを拡張してMの違うものも全て集めた集合$E$を考える。集合$E$はそれらの基底から線型結合を取ったものとしてよい。
そして定義域$E$における二項演算子として^を定義する(注意:上の記述では^を二項演算子として定義していない)。すなわち、$(e_1$^$e_2)$^$e_3$=$e_1$^$e_2$^$e_3$と定義すれば良い。これにより線形空間$E$に二項演算^が導入できた(双線形な写像)。


注:3次元空間における2次元の面積を議論するには、基底の等価性、基底の変換について議論しないといけない。これには内積の議論も必要になる。

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