ハートリーフォック近似では占有状態による軌道{$\phi_i({\bf r})|i=1,2...N$}によるSingle Slate行列式を試行関数として用意し、ハミルトニアンの期待値である全エネルギーを最小化する。軌道関数の正規直行化
$$\delta_{ij}=\int \phi^*_i({\bf r}) \phi_j({\bf r})d^3r \label{eq1}\tag{1}$$を拘束条件とする。この拘束条件をラグランジュの未定乗数法に用いて全エネルギーを最小化する。
その結果、ハートリーフォック近似での一体ハミルトニアン$H$が定義できて(その組み立て方法からしてHはエルミート)、
$$H \phi_i({\bf r}) =\sum_{j} \lambda_{ij} \phi_j({\bf r}) \label{eq2}\tag{2}$$という方程式を得ることになる。これを上の拘束条件とともに解けばよい。
- ただこう言われても理解しにくいので以下のちょっとした考察が必要である。実際、$\lambda$が一意的に決定されるわけではない。
ミソは、式$(\ref{eq2})$が何を表しているか?である。式$(\ref{eq2})$の表すところは、
『$H$は「占有状態の張る空間」を「占有状態の張る空間」に写像すること』である。そう書いている文献がみつかりにくいーどこかには書いてたと思うんだが。すなわち$\lambda$はユニタリ変換の分だけ不定である。
なので、「占有状態の張る空間」を全エネルギー最小になるように決めれば良い。すなわち$H$の固有値固有関数を求めて下から詰めればよい。ハートリーフォック近似は「占有状態の張る空間」を求める理論である.
-
こう考えるとハートリーフォック近似におけるエネルギー固有値の役割も明瞭である。
-
独立粒子近似を超えて、平均場近似での励起状態を考えるには基底状態と直行する「占有状態の張る空間」というのが基本になる。
-
不純物散乱(金属中での話ではあるが半導体などでも参考になる)を考えるとき、アンダーソンの直行性定理とユニタリ極限や総和則を理解しておいたほうが良い。アンダーソンの直行性定理は、独立粒子近似で考えればいいのだがその前提としてこういう考察をしておくとありがたみがわかりやすいのではないか、と思う。
-
時代がweb化することで情報が失われやすいこともある。copilotは「拡散方程式を変分法で導出してください」というと導出してくれたりします。