はじめに
この記事について
2022年春に、Tencent Cloudで新しいVM製品であるTencent Cloud Lighthouse(以降Lighthouseと記載します)が東京リージョンでもリリースされました。Lighthouseは軽量アプリケーションを低コストで運用できることをウリにしている製品です。私の会社でも、Lighthouseを導入して実運用を開始しましたので、Lighthouseの解説と、利用内容の紹介をしていこうと思います。
注意事項
- この記事では、全て東京リージョンの利用を前提としています。他のリージョンによっては、サービスの内容や料金体系が異なる場合があります。
- この記事に記載している情報は2022年7月時点のものです。サービスの内容や料金体系は時間の経過とともに変化することがあります。
Lighthouseとは
概要
Lighthouseは、軽量のVMを立てることができるクラウド製品です。Tencent Cloudには、既にCVM(Cloud Virtual Machine)というVM製品がありましたが、Lighthouseは軽量アプリケーションに特化したVM製品です。したがって、多くのマシンパワーや大容量・高速レスポンスの通信が要求されるシーンはCVMで、そういった厳しい要求が無いシーンはLighthouseで、といった棲み分けをすることができます。
料金体系の違い
CVMとLighthouseで大きく異なるところは、その料金体系にあります。
CVMは、利用時間と通信量に応じた従量課金制となっています。使ったらその分だけお金を支払う方式です。従量課金制は、Tencent Cloudに限らず多くのクラウド製品で採用されている方式ではないでしょうか。クラウド製品=従量課金とイメージされている方も多いと思います。
一方のLighthouseは、1ヵ月分の料金を前払いする、いわばサブスク形式の料金体系となっています。言い方を変えれば、「一度お金を払えば使い放題になる」です。通信量に関しては、無制限に通信し放題・・・というわけではなく、価格帯に応じて、1ヵ月間で通信できる容量が決まっています。サブスク形式の利点として、先に金額がわかるので、料金の管理がやりやすいといった点が挙げられます。従量課金制の場合、その月が締まるまでは正確な金額を知ることができません。
利点
Lighthouseの利点は、なんといっても価格の安さです。VM1個につき5ドル/月
から。衝撃の価格設定です。前述の通り、Lighthouseはサブスク形式の料金体系です。5ドル支払えば、VM1個が1ヵ月間使い放題です。5ドルで利用可能なインスタンスは、Linux/CPU 2コア/RAM 2GB/SSD 30GBの構成で、1TB/月の通信容量が確保されます。
料金の安さを比較するために、CVMで近い構成のVMを利用したとしましょう。CVMには、(Standard S5) Linux/CPU 2コア/RAM 2GB/SSD 50GBの構成があり、利用料金0.04ドル/時間、通信料金0.13ドル/GBです。一切通信させずに1ヵ月(31日)稼働させ続けた場合、29.76ドルかかります。サーバー用途で通信させないケースは無いと思いますので、この価格に通信料金が乗ってきます。Lighthouseで確保される1TBの容量を通信する場合、通信料金は133.12ドルかかります。利用料金と合わせると162.88ドルです。
Lighthouseを利用するだけで、162.88ドルかかるものが5ドルで済むのですから、VMを立てる場合はLighthouseを積極的に使っていきたいところです。LinuxだけでなくWindowsのインスタンスも作ることができます。Windowsの場合は価格が少し上がって、VM1個につき8.5ドル/月
から。それでも安いですね。
価格表
CVMの方が良いケース
Lighthouseの価格が安いことをプッシュしましたが、Lighthouseでは実現できないこともあります。それは、インスタンスをVPCの中に配置することです。プライベートIPアドレスを割り当てたり、VPCの中のインスタンスと連携させるケースでは、Lighthouseは適さない(運用し辛くなる)ことがあります。そういった場合は、素直にCVMを使いましょう。
また、Lighthouseのインスタンスは、(企業向けであるEnterprise価格帯を除くと)CPUのコア数を2つから増やすことができなかったり、RAMは最大8GBで、SSDも最大100GBです。あくまでも「軽量アプリケーションサーバー」なので、ヘビーな使い方をする場合もCVMを使った方が無難でしょう。
インスタンスの作り方
それでは、Lighthouseでインスタンスを作ってみましょう。
Tencent Cloudのコンソールにアクセスし、Productsを開くと、ComputeのグループにTencent Cloud Lighthouseがあります。
Createを押します。
リージョンを選びます。
続いて、デプロイするイメージを選択します。
Lighthouseは、代表的なアプリケーションのイメージがあらかじめ提供されており、これらを使うことで環境構築の作業を省くことができます。自分で環境構築する場合は、System Imageのボタンを押すことで、OSだけのイメージを選択することができます。
続いて価格帯の選択です。インスタンスの用途に合わせて、サーバー要件に見合ったものを選択します。Lighthouseは、通信できる容量があらかじめ決められているので、Transferの数字にも注意する必要があります。Instance bundleをEnterpriseに切り替えると、より性能の高い価格帯を選択することができます。
最後に、インスタンスの名前と支払月数等を設定して終わりです。Lighthouseは1ヶ月単位のサブスクリプションですが、Purchase periodを変えることで、あらかじめ先の分までの支払を設定することができます。(まとめて支払うことによる割引などは無いようです。)
黄色のマーカーで示した箇所にチェックをいれると、支払時期が迫ったときに、自動的に支払いとサブスクリプションの更新をしてくれます。チェックを外しておくと自動更新されず、期間を過ぎるとインスタンスが利用できなくなります。自動更新の設定は、インスタンスを作った後でも有効/無効の切り替えをすることができます。
弊社での使い方
主に従業員向けのWebサービスのサーバーとして運用しており、2つのWebアプリケーションをLighthouseで稼働させています。
もともとCVMでサーバーを立てていましたが、CVMからLighthouseにサーバーを引っ越ししました。Lighthouseインスタンスは最小構成にしているため、1ヵ月で10ドル(5ドル×2)で運用しています。CVMで運用していた時は、1ヵ月で90ドル(45ドル×2)ほど料金がかかっていたので、Lighthouseに引っ越ししただけで毎月80ドル浮くことになりました。
使ってみた感想
Lighthouseを導入して1ヵ月が経過しました。2つのWebサービスはともに利用者が10人~20人居ますが、今までサーバー負荷やレスポンス速度で問題が起きたことは無く、CVMの時と相違ない動作をしています。多少CPU依存なWebサービスもありますが、それでも問題なくリクエストを捌いています。利用者が数百人規模になるとさすがに厳しくなってくるでしょうが、プロジェクト単位で利用する分には、全く問題なかったです。そこそこパワーがあるVMを、5ドルで手に入れることができるのはとても魅力的だと感じました。