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AWS Lambdaによるサーバーレス構成でのCacheとCashを考える

Last updated at Posted at 2017-12-12

はじめに

Serverless Advent Calendar 2017の12日目の投稿です。

ここでは、AWSベースのサーバーレスアーキテクチャで、主にFaaS(Function-as-a-Service)の利用を前提としますが、データキャッシュ(Cache)が必要な場合にどのように実現するのか、その技術解とお金(Cash)の関係について整理してみました。

サーバーレスアーキテクチャにしたは良いけど

サーバーレスアーキテクチャをベースにすることで、処理数に応じてリソースの最適化を図れるので、スモールスタートしやすく、またマイクロサービス化しやすいので、積極的に検討するようにしています。

ただ、よく自社で課題になるのが、データキャッシュに関する処理。
例えば、何かしらのIDを持つイベントを受け取り、それに対して名称を付与するようなケース。AWS Lambdaでデータを処理して、DynamoDBにデータを保存するような場合に、どこで名称のデータを保持するかが問題になります。

lambda-cache.png

DynamoDBは、スループット課金のため、あまり高頻度なRead/Writeをするには向いていません。もちろん、それだけの投資が行えるサービスであれば良いのですが、ID->名称の変換だけで、それだけのコストが発生するとなると、なかなか費用帯効果が得にくいケースが多いのではないでしょうか?
しかも、DynamoDBのRead処理は、レイテンシがそこまで高速ではなく(といっても数十~数百msですが)、システムのパフォーマンスに制約が発生するので、あまりこのような用途には向かないでしょう。

ということで、普通はインメモリでのキャッシュを利用することに至りますよね。

キャッシュパターン

ここでは、以下を前提に考えます。

  • 料金は、東京リージョンでのオンデマンドとして計算する。
    • データ転送量は除く。
    • 1ドル=115円で計算する。

ElastiCache(Redis)

AWSにおけるキャッシュサービスといえば、まずはElastiCacheですよね。ElastiCacheのエンジンは、MemcachedとRedisがサポートされていますが、私はRedis派です。キャッシュとして保持できるデータもHash/List/Setなどの色々な型をサポートしており、対応できる幅が広く、レプリケーションにも対応しているためです。

ElastiCacheを利用する場合は、以下のような要件の場合に向きます。

  • 高頻度なWrite/高頻度なRead
  • Writeスルー1

ただ、コストはそれなりに高いです。

インスタンスタイプ スペック 単位時間コスト 1ヶ月のコスト
cache.t2.medium 2vCPU、3.22GiB $0.104/h $76.13(約8,800円)
cache.m4.xlarge 4vCPU、14.28GiB $0.452/h $330.87(約38,100円)

さらに注意が必要なのは、上記は 1ノード である、ということです。ElastiCache(Redis)は、Multi-AZでの冗長化構成に対応していますが、追加のノードはレプリカノードとなるので、利用する場合は単純に2倍のコストがかかります。加えて、非同期レプリケーションとなるので、データのロストを避けるために同一AZにもレプリカノードを配置するとなると3~4倍のコストがかかることになります。

DynamoDB Accelerator(DAX)

いつもElastiCacheを使うかどうかで悩むことが多かったのですが、2017年の4月にDAXが発表され、新たな選択肢ができました。
DAXを利用することで、DynamoDBにデータを保持しつつも、数ミリ秒~マイクロ秒での低レイテンシでの処理が実現可能になります。

DAXを利用する場合は、以下のような要件の場合に向きます。

  • 高頻度なRead
  • Writeスルー1

大事なポイントは、DAXのタイトルにあります。

Amazon DynamoDB Accelerator(DAX) – Read heavyなワークロード向けインメモリ型キャッシュクラスタ

そう、Read heavy であることです。DAXでは、DynamoDBに書き込んだデータを読み込む際にキャッシュされるので、2回目以降のアクセスなどが高速化されます。書き込み自体が高速化されるわけではないので、頻繁にキャッシュを更新するような場合には、書き込みスループットの設定値を上げる必要が出てきてしまいます。

DAXを利用する場合のコストですが、ElastiCache(Redis)よりは1GiBあたりのコストは低くなります。

インスタンスタイプ スペック 単位時間コスト 1ヶ月のコスト
dax.r3.large 2vCPU、15.25GiB $0.322/h $235.71(約27,100円)

DAXでも、可用性向上のためには、3ノード以上でのクラスタ構成での運用が推奨されています。
ただ、DAXの場合、データ自体はDynamoDBに保持されているので、DAXノードがダウンしても、データ自体はロストせずに済みます。

また、LambdaはPythonで実装派の自分としては残念なところなのですが、DAXはまだPythonには対応していません。そのため、DAXを利用する場合はJavaかNodeのSDKを利用する必要があります。

Lambda In-Memory

もうひとつは、適用条件は限られますが、Lambdaのインメモリを利用するパターンです。これは、Lambdaのインスタンスは再利用されるため、それを活用する方法です。
以下のような方法で実現しています。

  • キャッシュ対象のデータをLambda関数のグローバル変数に保持する。
  • インスタンスが新たに立ち上がった場合など、キャッシュがなければ、(DynamoDBやS3などから)データを取得する。
  • 一定時間を過ぎている場合、データを再取得する。

Lambdaのインスタンスの制御は、AWS任せなので、自分でコントロールはできません。
そのため、ゆるい一貫性(ある程度の時間を要して、書き込みしたデータがキャッシュに反映される)で問題が無い場合での利用に限定されますが、Lambdaの処理だけでシンプルに実現でき、コストも抑えられるので、条件が合えば強力な選択肢です。実際のプロジェクトで急遽DynamoDBへのアクセス負荷を減らすのに必要になった際に、役に立ちました。

Lambda In-Memory を利用する場合は、以下のような要件の場合に向きます。

  • 高頻度なRead
  • 呼び出し回数が少ない
  • ゆるい一貫性
  • キャッシュデータが大きくない

2017/11/30にLambdaの最大メモリ量が、3,008MB(=2.93GiB)に拡張されました(それ以前は、1,536MB)。そのため、2GiB程度までキャッシュが可能そうです(キャッシュを目的にして増えたわけではないでしょうが)。

キャッシュだけのコストを出すのは難しいですが、1回あたりのLambda処理が0.1秒として、1秒あたり10回の呼び出しを行う場合は、以下の程度のコストがかかります。

  • 合計コンピューティング(秒/日)= 10回/秒 x 0.1秒 x 86,400秒/日 = 86,400 秒/日
  • 合計コンピューティング(GB-秒/日)= 86,400 秒/日 × 1GB = 86,400 GB-秒/日
  • 1ヶ月のコンピューティング料金 = 86,400GB-秒/日 x 30.5日 × $0.00001667/秒 = $43.93(5,100円)

もちろん、呼び出し回数が多ければその分コストは大きくなりますが、元々Lambdaで処理する内容であり、呼び出し回数が少ない状況では都合が良さそうです。

おおよそのコードの内容ですが、以下のようにして、定期的にキャッシュが更新されるようにしています。

pytyon
import datetime
import json

_beacon_dict = {}
_updatetime = 0

def lambda_handler(event, context):
    update_beacon_dict()

    req_body = json.loads(event['body'])
    add_attributes(req_body)

    # データの保存
    ・・・

    return {}

def add_attributes(beacon_data):
    '''
    キャッシュデータを利用して、属性を付与します。
    '''
    global _beacon_dict

    beacon_id = beacon_data['beaconId']
    if beacon_id in _beacon_dict:
        # キャッシュからデータを取得してパラメータを追加
        beacon_data['name']  = _beacon_dict[beacon_id]

def update_beacon_dict():
    '''
    有効期限をチェックし、キャッシュデータの更新を行います。
    '''
    global _beacon_dict
    global _updatetime

    diff_time = 0
    if len(_beacon_dict) != 0:
        now = datetime.datetime.now()
        epoch_now = datetime.datetime_to_epoch(now)
        epoch_updatetime = datetime.datetime_to_epoch(_updatetime)
        diff_time = epoch_now - epoch_updatetime

    if len(_beacon_dict) == 0 or diff_time >= 5*60*1000:
        # キャッシュデータの更新
        ・・・
        _beacon_dict = new_dict
        _updatetime = datetime.datetime.now()

まとめ

キャッシュのパターンを整理すると、以下のようになります。
※費用は、あくまで目安です。インスタンスタイプやクラスタ構成などの条件で変わります。

方法 適用が向くケース 制限 1GiBキャッシュあたりのコスト
ElastiCache(Redis) ・高頻度なWrite
・高頻度なRead
Writeスルー
・可用性を上げるなら3ノード以上必要 1ノードの場合:
2,600~2,800円
3ノードクラスタの場合:
7,800~8,400円
DynamoDB Accelerator(DAX) ・高頻度なRead
・Writeスルー
・可用性を上げるなら3ノード以上必要 1ノードの場合:
1,800円
3ノードクラスタの場合:
5,400円
Lambda ・高頻度なRead
・呼び出し回数が少ない
・ゆるい一貫性
・キャッシュデータ2GiB以下(目安) 10回実行/秒
100ミリ秒/回
の場合:
5,100円

1GiBキャッシュあたりのコストで見ると、Lambdaでもそれなりの単価になりますね。上記はキャッシュする/しないに関わらず、Lambdaの実行にかかるコストのため単純な比較はできないですが、10回実行/秒以下の頻度の呼び出しであれば、メリットがありそうです。

キャッシュの更新や呼出をどう行うかによって、どの方法が良いかは変わりますが、処理の特性とコストを踏まえて、キャッシュの方式を選択できると良いと考えています。


  1. Writeスルー:キャッシュに書き込んだデータが、整合性を保って読み取り可能になる。 

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