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技術広報でエンジニアのキャリアの不一致をなくす

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こんにちは、緑川です。
みなさん技術広報をしてますでしょうか? 技術を知る・広めるという活動は楽しいですよね。
技術広報という職種がいつできたかわかりませんが、この技術広報 Advent Calendar 2023を見てると、技術広報を担当されている方は年々増えているように観測され、私自身も技術広報担当者と話す機会が増えてきました。

それぞれの企業の担当者さんとお話をしていると、当然ながら各社で技術広報をする目的も悩みも違います。技術広報らしく「効果的に技術イベントに人を集めるにはどうすればよいのか?」、「テックブログを運用するのに重要なことは何か?」といった話をする一方で、よく耳にする話としては「KPIどうしていますか?」、「予算を獲得するのに上司への説得をどうしていますか?」という話も多い印象があります。すでに何年も技術広報を運用している企業は別として、技術広報の業務そのものよりも周りの理解を深めるための動きが求められるのは、やはりまだまだできたばかりの職種なんだな、と思います。

そんなこともあり、最近は「技術広報の本質はなんだろうな」と考えることがあります。技術広報の役割自体は、直近3年くらいの皆さまのアウトプットによって、下記で固まってきたと思います。

  • ブログやイベントで技術のアウトプットを増やす
  • エンジニア文化を浸透させる
  • エンジニア組織をブランディングする

技術広報の役割については多くの企業の担当者が公開していますので、状況、目的、予算などに応じて、参考となるケースを模倣していけば良いと思いますが、「なぜ技術広報を行うのか?」というところで、しっくりくるイメージがないのが正直なところ。ブログなどを見渡していると、「認知拡大のため」「採用のブランディングのため」「社内のエンジニアのレベルアップのため」「コミュニティへの貢献のため」というのが論じられていますが、最近の個人的な結論としては「技術広報はエンジニアのキャリアの不一致をなくす」と、いうのが本質じゃないかなと考えるようになりました。とは言え、私自身も眉唾です。

今回はなぜそのような考えに至ったのか図を用いてアウトプットしていきます。
ぼんやり考えている中で、ちょうどAdvent Calendarのシリーズ2の1日目が空いていたので記事を書いてみたのですが、来年には考えが変わっていると思いますので斜め読み程度にお読みください。

1. 技術情報について

まずは技術広報担当者が扱う技術情報の定義ですが、技術の情報と言っても色々あると思います。今回は技術広報担当者が企業に属している以上、広報する技術情報は「何かしら業務に必要な技術の情報」ということにしたいと思います。

その技術情報というのは個人が所有しているにせよ、社内に共有しているにせよ、何かしらの形で業務にいかされていることが多いはずです。図にすることこんな感じですね(図1)

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図1:技術情報を業務にいかす

ある程度業務を行うと、新たな知識や経験がうまれますので、それをアウトプットすることで、技術情報に新たな情報がストックされます。良いサイクルですね。この良いサイクルを回せれば技術情報がどんどん積み上がるので、業務を有利に進めていけるはずですが、なかなかこのサイクルを回せている企業は多くないと思います。それはなぜかというと、人々の業務時間が限られているからです。

アウトプットをしたくても業務に追われていると、永遠に業務を回すことになりますので、なかなかアウトプットまで辿りつきません。そして、技術情報というのは時間の経過とともに、情報が古くなり失われていくものなので、アウトプットが遅れると技術情報がどんどん失われていく負のサイクルとなります(図2)。

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図2:技術情報が失われる負のサイクル

この負のサイクルに陥らないためには、アウトプットを増やす必要があります。ただし、人々の業務時間を増やすことは不可能なので(無限に残業ができる場合を除く)、アウトプットをするには普段の業務を減らさなければなりません。普段の業務を減らす以上、そのトレードオフとして出てくる情報はアウトプットとしての効果を最大化したいですよね? この「アウトプットの効果を最大化にする」というのが、技術広報という職種が価値を発揮できる場の一つなんじゃないかなーと思っています(図3)。

技術広報が価値を発揮できる場所

  • アウトプットの遅れを取り除く
  • アウトプットの価値を最大化する

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図3:アウトプットの遅れを取り除くことが価値を発揮できる場の一つ

このあたりが「技術広報は採用のためだけじゃない」と言われる所以の気がしていますが、技術情報をストックすることは業務を有利に進めるためであったり、アウトプットすることで自分の経験を言語化したりするメリットがあると思います(他にもメリットは多いと思います)。この辺りの効果を最大化するノウハウや、アウトプットを業務として捉える文化作りなどは結構情報が出てき始めているので参考にしていきたいです。

ということで、技術情報というのは技術広報の人がストックをするのに奮闘するのが一つの仕事だと思います。ただ、この図だけだと、企業にとって重要な技術情報をなぜ広報するのかが謎ですね。

2.技術情報の広報について

人々が技術情報を発信するという点において、大雑把に考えられるのは下記になるかと思います(もっとあると思いますが)。

  1. 企業の採用活動のため
  2. 企業の営業活動のため
  3. コミュニティの発展のため
  4. 広くフィードバックを得るため
  5. 自分の成果を世間に残しておくため
  6. 単なる忘備録

個人が情報発信するぶんには3. ~ 5. が多そうですね(この記事は4.のために書いています)。個人が自分のために情報をアウトプットするぶんにはいいのですが、企業がわざわざ技術広報という役割を作り、人件費を払ってまで技術情報を広報するということは1.か2.が求められていると思います。

言うまでもないですが、ITエンジニアは今やほとんどの企業の利益に関わる重要なポジションですね。企業でITエンジニアが案件をこなすことにより、多くの利益につながっていると思います(図4)。

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図4:ITエンジニアが企業の利益につながる

ただ、この社内のエンジニアは人数が安定せず、入社や退職を繰り返しますね。退職が入社を大きく上回ってしまうと、社内のエンジニアがいなくなってしまうので、企業は利益を失ってしまいます。なので、企業は採用活動を行っていると思いますが、昔からITエンジニアの人数は企業が求める需要に追いついていないので、ITエンジニアの採用活動は年々難しくなっています。

このITエンジニアの採用活動が遅れてしまうと、退職が入社を上回り、社内のエンジニアの人数が減り、企業は案件をこなせず競争力を失ってしまいます(図5)。

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図5:ITエンジニア採用活動が難しなるのでエンジニアの入社が遅れる

この採用活動が遅れる要因を取り除く為に、上記の「企業の採用活動のため」「企業の営業活動のため」に技術情報の広報を役立てていきたいですね。

3.採用活動の遅れを取り除くのに必要な技術広報とは?

図5を見ていると、採用活動が遅れるくらいなら、採用プールの人材全員に内定通知を送ればよさそうですね。実際にそうしている企業も多いと思います。ところがそれでも社内のエンジニアは増えません。なぜなら人材獲得競争の激化により、他社のオファーによって、内定数よりも内定辞退数が上回ってしまう事が起きるからです(図6)。

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図6:内定数が辞退数を上回ってしまう例

その辺りは有効求人倍率を元に考えたいのですが、最近のITエンジニアの求人倍率は3.5倍くらいあるそうです。

他に辞退につながる要因としては、パッと思いつく限りでは、「現職への想い」や下記のようなものがあると思います。下記の箇条書きについては、失望ということでまとめられそうです。

  • 業務への無関心:IT業界はたいてい何かしらのドメインに特化しているがそもそもその業務のドメインに興味がない
  • 条件の不一致:年収、リモート体制、有給、勤務時間など、働く条件面での不一致
  • 採用体験の不快感:メールでのやりとり、カジュアル面談、面接、オファー面談を通して体験に不快感を感じられると志望順位が変化する
  • キャリアの不一致:技術スタック、開発環境、チーム、やりたいこと、責任のあり方などの本人が望むキャリアとの不一意

図にすると、図7みたいな感じですね。

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図7:辞退数をあげてしまう要因

これら辞退数が増える要因の中で減らせる要素はどれか考えたいと思います。
まず「現職への想い」というのは本人の気持ちなので変えるのは困難です。偉い人や現場の説得によって変わるかもしれませんが、技術広報の役割ではないと思いますので今回は変更不可とします。

次に「他社のオファー」ですが、これも他社の動きに依存するので、技術広報で変えるのは不可能ですね。採用選考にかかる時間を極端に短くすれば他社のオファーを減らせるかもしれませんが、他社も選考期間を減らしてくるだけなので難しいですね。

失望としてまとめていますが、「業務内容への無関心」も本人の気持ちなので、ほぼ変更はできませんね。「条件の不一致」というのも技術広報では年収やリモートワーク体制をどうにかできませんので改善は不可能だと思われます。

「採用体験の不快感」は面接官のトレーニングや日々の良質なコミュニケーション次第で減らすことができそうですね。

最後に残った「キャリアの不一致」ですが、これを解消するために技術情報をスタックして、技術広報をするのではないかなーと思っています。採用活動において、キャリアの不一致というのは「求められている内容と、自身が求めている内容が違った」ということで起きるかと思いますが、採用活動中に渡せる情報が少ないとこういう事が起こりやすいと思います。本来なら、「いやいや、こういう働き方もできますよ」とか「いやいや、こういう技術を取り入れた例がありますよ」とか補足をする事でキャリアの不一致をなくしていけるとは思いますが、技術情報のスタックや公開情報がないとそれができないんですよね。「情報の補足ができないことによって、キャリアの不一致の溝が埋められず、辞退につながるよね」というのが、めっちゃ長い文章になってしまいましたが、技術広報というのはここに紐づくんじゃないかと思っています(図8)。

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図8:キャリアの不一致をなくすのに技術広報は役に立つかもしれない

まとめ

こんな長文を書いておいて、アレですが、「技術広報はエンジニアのキャリアの不一致をなくす」というのが本質なのかは私自身も眉唾です。
ただ、個人のパーソナリティが重視されるこの時代に、技術ブランディングを上げ続けることに本当に意味はあるのか? というのも疑問に思うところ。結局、技術広報がやることとしての技術情報の露出は変わらないのですが、考え方を少し変えると、結果も少し変わると思いますので、下手の考え休むに似たりかもしませんが、個人的には「技術広報はエンジニアのキャリアの不一致をなくす」という感じでパーソナリティを考慮して来年は動いていければと思います。

たぶん来年にはまた考えが変わっていると思いますが、最近考えていることとしてアウトプットさせていただきました。特に思想やこだわりがあるわけではないので、コメントとか反論とかいただければすごく嬉しいです。

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