「することができる」とは
技術文書を読んでいると「することができる」「することが可能である」という表現を目にします。実はこの「することができる」という表現は冗長なため有害、つまり多用すべきでないという考えがあります。
気になって「することができる」についてGoogleで検索してみました。結果、「することができる」という表現について書いたブログ記事をいくつか見つけました。以下、発見したブログ記事の一覧です。
列挙したブログ記事の全てで「することができる」を多用しないように警告しています。
「することができる」を自動で検知
私も「することができる」「することが可能である」のような冗長表現をできるだけ利用しないように気をつけています。「することはできる」は有害、 中身がないのに、長い表現 と考えているためです。書籍「ドキュメント作成システム構築ガイド」を執筆した際には、RedPen で「することが」のような冗長表現を自動検知していました。以下、作成した冗長表現を検知する RedPen 用のスクリプト(redundant-ja-expression.js)です。
var redundantExpressions =
new Array('することが', 'ことも', '可能で', '可能と', 'ことにします',
'ことにして', '言えます', 'しかしながら' , '一面においては', 'その結果として', 'このような', 'そのような', '意味において', 'まず初', 'まず最初','完全に','となって','そういった','を行う','をおこなう','するもの','したもの', '特に', '万一','かどうか', 'させること','行なった' , 'ことは','ことによって', 'してやり', 'してやる','のではないか', 'となります','一番最初','では次に','いますので','一切','きっと','する方法で','まずはじめ','するのです');
function validateSentence(sentence) {
for (var i = 0; i < redundantExpressions.length; i++) {
if (sentence.content.indexOf(redundantExpressions[i]) != -1) {
addError('冗長な表現 "' + redundantExpressions[i] + '" を利用しています。', sentence);
}
}
}
RedPen により検知された「することが」は短い表現に置き換えました。しかし、まだ確証はもてません。本当に「することができる」は有害な(多用するべきでない)表現なのでしょうか。
「理科系の作文技術」における「することができる」
木下先生によって書かれた「理科系の作文技術」は技術文書のバイブル的な本です。この書籍で「することができる」はどの程度利用されているか調べました。出現回数を調べるのに、PDFフォーマットの「理科系の作文技術」を利用しました。以下、PDF版の書籍で「することができる」を検索している様子です。
すると「することができる」は5回だけ利用されていました。「することが可能」は一度も利用されていません。本の長さを考えれば出現回数が少ないのがわかります。やはり「することができる」は多用するべきでない表現とわかりました。
なぜ人は「することができる」を使用するのか
私も論文を書き始めたばかりの頃、「することができる」「することが可能」を多用していました。持って回った表現を書いている自分が格好いい(頭がよくなった)と感じたのです。とはいえ冗長な表現は「読みやすさを」損ないます。特に長い文で「することができる」のような冗長な表現が利用されると、文の意図が理解できなくなります。長い文の分割方法についてはこちら(文が長すぎる問題とその対処)で解説しました。参考にしてください。また文書中の長すぎる文を検知するには、RedPen が提供する機能 SentenceLength を利用します。
結論
「することができる」は多用するべきでない表現です。ドキュメントを書くときには気をつけましょう。最後に、本稿の題目に含まれる「と考えられる」も冗長な表現です。技術文書では「と考えられる」も多用しないでください1。
-
「有害と考えられる」はダイクストラの論文「Go To Statement Considered Harmful」に由来する表現です。題目としての語呂がよかったので例外的に使用しました。また、「することができる」ではない冗長表現の例として紹介できると考えました。 ↩