平成29年12月22日
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定
Ⅰ.基本的考え方
1.IT新戦略策定の背景
全ての国民がIT・データ利活用の便益を享受し、真に豊かさを実感できる社会の実現を目指して策定された「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成29年5月30日閣議決定)については、内閣情報通信政策監(政府CIO)の下で関係施策のPDCAサイクルの推進状況のフォローアップを行い、関係府省庁が実施する施策には一定の進捗・成果が見られる。
一方、国民目線に立った行政サービスのデジタル改革ができているのかとなると、未だなすべきことは多い。国の行政部門のデジタル化を起点として、民間分門や地方の取組の広がりへとつなげていくべく、IT新戦略を策定することとする。
2.ITを活用した社会システムの抜本改革
行政サービスの影響は、国民一人ひとりに及ぶ。結婚、転居、死亡・相続等のライフイベントが生じる度に、多数の行政手続のために多くの時間・手間、コストを要しているのが現状である。行政手続を行政サービスの一部分として捉え直し、サービスを利用者の視点から徹底的に見直した上で、デジタル化3原則(デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップ)を徹底し、添付書類を不要化すること等によって、それ自体が本来の目的ではない「手続を行うこと」の時間・手間、コストを削減し、例えば結婚生活の円滑な立ち上げ、新居での新生活の開始といった本来の目的のために時間や金銭を使うことができるようになる。
また、オープンデータを全ての地方公共団体で展開することにより、その土地に合ったイノベーションが起こり、働き方改革やデータを活用した新ビジネスによって、生活の利便の向上が期待される。
これまでも、行政サービスのデジタル化に取り組んできたが、必ずしも国民の利便性向上や行政事務の効率化につながってこなかった。
Society5.0時代にふさわしい行政サービスを国民一人ひとりが享受できるよう、非効率なシステム化や書面による申請などにより、申請者の手間のみならず、行政のバックオフィス作業を含めて生じる官民のコストを削減しなければならない。その削減されたコストを国民生活の質的向上に振り向けるべく「ITを活用した社会システムの抜本改革」を行い、サイバーセキュリティの確保を図りつつ、ITを最大限活用した簡素で効率的な社会システムを構築する必要がある。
このため、IT新戦略の策定に当たっては、次の方向性に沿って改革を行うこととする。
Ⅱ.IT新戦略の基本的方向性
官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)第10条に規定する行政手続等のオンライン化原則や同法第11条に規定するオープンデータの促進を徹底し、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」に定める具体的施策の実施を強力に推進するとともに、民間部門及び地方への横展開を見据えて取組を加速するため、以下の取組を行う。
1.行政サービスのデジタル改革断行
(1) 行政サービスの100%デジタル化
単に情報システムを作るだけでなく、デジタル化の前提として業務改革(BPR)を徹底し、利用者の目線で行政の業務の在り方を徹底的に見直した上で、デジタル化3原則に沿って、行政のあらゆるサービスを最初から最後までデジタルで完結させる。
具体的な取組として、まずは、個人のライフイベント(転居、死亡・相続等)や法人のイベント(法人設立、役員変更等)において、既に行政機関が保有している情報について、行政が添付書類を求めることの廃止を徹底する。
このため、マイナンバー制度等を活用し、特に多くの手続で添付が求められている登記事項証明書(商業法人)や戸籍謄抄本などの添付を不要とするための所要の法令改正作業に関係閣僚が直ちに着手し、順次関連法案を国会に提出する。
また、社会保険、税等の、社会基盤となる仕組みのデジタル化を促進する(社会保険・税手続における提出書類のデジタル化・民から官へのデータ連携等)。
(2) 行政保有データの100%オープン化
行政保有データの原則オープンデータ化を徹底し、データを活用したイノベーションや新ビジネスの創出を後押しする。
このため、平成29年度中に観光・移動分野等で官民ラウンドテーブルを開催し、民間ニーズに対応したデータのオープン化を加速化するとともに、行政保有データの棚卸リストを公開し、潜在的な公開ニーズを掘り起こし、オープンデータの取組を深化させる。
(3) デジタル改革の基盤整備
国・地方公共団体・民間等の全てがデジタル改革・データ連携に取り組む上での基本ルールを構築する(語彙、コード、文字等の標準化)。特に、先行して、医療・農業の分野でのデジタル改革・データ連携を実施し、データ利活用による社会システムの抜本改革のベストプラクティスを創出する。
2.民間部門のデジタル改革及びIT・データ活用ビジネスの推進
上記1.の取組の民間部門への横展開として、以下の取組を行う。
(1) ビジネスにおけるIT・データの最大限の活用
民間部門におけるIT・データの最大限の活用を図るよう、まずは、①上記1.(3)の基本ルールに基づくデータ連携を推進し、バリューチェーン全体を効率
化する、農業、物流、港湾等の連携プロジェクトの推進、②マイナポータルの活用によるデータを用いた健康づくり・病気予防の強化、③テレワークなど
ITを活用した働き方改革・BPRの推進などに取り組む。
(2) オープンデータの活用促進
民間保有データとの組合せを含めたデータ活用を促進することで、イノベーション・新ビジネスを創出する。
(3) 官民協働による手続コスト削減
官民が協力して、法定の民間手続等の簡素化に向けた取組を展開する。
3.地方のデジタル改革
上記1.の取組の地方への横展開(全国展開)として、以下の取組を行う。
なお、地方においてこれらの取組が円滑に行われるよう、地方公共団体における官民データ活用推進計画策定を支援する。
(1) 地方の行政サービスの原則デジタル化
国のみならず地方の行政サービスについても、添付書類を含め原則デジタル化を図る。また、地方公共団体の業務システムにおけるクラウド導入を推進し、コスト削減や業務の標準化等を図る。
(2) オープンデータの推進・活用(原則オープン化)
全地方公共団体が行政保有データを原則オープン化し、オープンデータを活用した地方発ベンチャーの創出の促進、地域の課題の解決を図る。国は、地方公共団体による取組を促進するため、ガイドラインや推奨データセット(標準フォーマットを含む。)の策定、人材育成環境の整備等の支援を積極的に推進する。
(3) IT・データ活用による行政・生活サービスの高度化
国民生活の質の向上に資するよう、①自動運転移動サービス等による移動手段の確保、②遊休資産の活用(シェアリングエコノミー)による、空き施設・空き家等の活用、女性・高齢者の働き場の創出などに取り組む。
Ⅲ.取組体制等
上述の改革を通じ、社会システムのデジタル改革に資するよう、本基本方針の具体化のための取組体制等を以下のとおり整備する。
①行政サービスのデジタル改革に向けた法整備等(Ⅱ.1.(1)・(2)関連)
登記事項証明書等の添付を不要とする法律改正案の可能な限り速やかな国会提出を含む「デジタル・ガバメント実行計画」を平成29年度中にeガバメント閣僚会議において決定する。
②オープンデータ官民ラウンドテーブル(Ⅱ.1.(2)関連)
民間ニーズに即したオープンデータの取組や民間データとの組合せを含めた活用を促進するため、平成29年度中に、民間企業等データ活用を希望する者とデータを保有する府省庁等が直接対話する「オープンデータ官民ラウンドテーブル」を、観光・移動等の分野で開催し、オープンデータ化を加速する。
③デジタル改革・連携プロジェクト関係省庁連絡会議(Ⅱ.2.(1)関連)
農業・物流・港湾等の連携プロジェクト及びデータを用いた健康づくり・病気予防の強化のための関係省庁連絡会議を開催し、国民がデータ利活用のメリットを実感できる事例を創出する。
④「IT新戦略起草委員会(仮称)」の設置
IT新戦略案の起草に当たっては、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)新戦略推進専門調査会の下に「IT新戦略起草委員会(仮称)」を速やかに設置し、来春から夏までを目途にIT新戦略を策定することとする。
<今後の進め方>
平成29年度 | 平成30年度 | |
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①行政サービスのデジタル改革に向けた法整備等 | ・デジタル・ガバメント実行計画の決定 | ・登記事項証明書等の添付を不要とする法律改正案の国会提出 |
②オープンデータ官民ラウンドテーブル | ・観光・移動等の分野でオープンデータ官民ラウンドテーブルを開催 | ・オープンデータ化の加速 |
③デジタル改革・連携プロジェクト関係省庁連絡会議 | ・農業・物流・港湾等の連携プロジェクト等の推進のための会議を設置し、検討開始 | ・関係省庁の連携によるデータ活用の事例創出 |
④「IT新戦略起草委員会(仮称)」の設置 | ・IT新戦略案の検討 | ・IT新戦略案の起草 |
※原文: https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20171222/siryou.pdf