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新たなオープンデータの展開に向けて

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※原文: http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20150630/siryou6.pdf

平成27年6月30日

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定

我が国は、オープンデータ(公共データを機械判読可能な形式で二次利用可能なルールの下公開すること)を推進する観点から、その基本戦略である「電子行政オープンデータ戦略」(平成24年7月4日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定。以下、「戦略」という。)や、これを踏まえた「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月14日閣議決定、平成26年6月24日改定)等に基づきオープンデータの取組を進めてきたところである。

これまでの間、公共データの利用ルールの策定をはじめ、国の公共データを横断的に検索することを可能とするポータルサイト(データカタログサイト)の整備、地方公共団体オープンデータ推進ガイドラインの公表等、公開面では一定の成果を挙げつつあるものの、更なる公開の促進に向けた課題もあるほか、今後は利活用面にも焦点を当てつつ、効果的かつ効率的なオープンデータの推進が求められているところである。

他方、我が国の喫緊の課題でもある地方創生に向けた取組の一環として、IT戦略本部の下に設置された「地方創生IT利活用推進会議」においても、地方創生の観点からのオープンデータの普及促進の在り方について、同会議でとりまとめられた「地方創生IT利活用推進プラン」にも重点項目の一つとして盛り込まれたところである。

このような状況を踏まえ、以下のとおり、我が国のオープンデータの今後の新たな展開に向け、その基本的な考え方を示すとともに、重点的に取り組む事項を整理し、政府全体としてオープンデータの取組の加速化(深める・広める・持続する)を図っていくこととする。

Ⅰ.これまでのオープンデータの成果と課題

【国の公共データの公開】

国のオープンデータの状況を見ると、国のデータカタログサイト(試行版:平成25年12月公開、本格版:平成26年10月公開)に掲載されているデータセット数は平成27年5月末時点で約13,000となっており、日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定、平成26年6月24日改定)に掲げられたKPI(2015年度中に世界最高水準の公共データの公開内容(データセット1万以上)を実現)については既に達成している状況にある。

しかしながら、これまではスモール・スタートの考え方に立ち、まずは府省庁がWebサイトで公開しているデータのオープンデータ化を優先して取り組んできたことから、戦略にも掲げられている独立行政法人、公益企業等については、既にオープンデータに取り組んでいるのは一部に留まっており、更なる取組の強化が求められるところである(→Ⅱ.2.(1)①(a))。

さらに、同サイトに掲載されているデータセットの内訳を見ると、機械判読可能なファイル形式のものの割合は依然として低く、英語等の外国語のデータもわずかであるほか、データセットのダウンロード状況を見ても、オープンデータに係るガイドライン等が約半数を占めているなど、データの質や量の両面での充実化とともに、データの利活用面からの対応を検討することも必要となっている(→Ⅱ.2.(1)①(b))。

その他、オープンデータとしてのデータの公開に当たり、制度上の制約等があるものも存在することから、このようなデータの取扱いの整理、それを踏まえた必要な措置の検討も必要である(→Ⅱ.2.(1)③)。

【地方公共団体の公共データの公開】

地方公共団体におけるオープンデータの取組状況については、政府としても地方公共団体の取組の参考となるよう「地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン」(平成27年2月12日公表)を策定したところであり、平成27年5月時点で約150の地方公共団体がオープンデータに取り組んでいるところである。

地方公共団体におけるオープンデータが普及することは我が国全体のオープンデータの価値そのものを高めることにもつながるものであり、地方創生の観点からも、更なる普及促進を図るとともに、政府としても地方公共団体等からの要望のある人材派遣・育成、成功事例の横展開等の支援を行っていくことが必要である(→Ⅱ.2.(1)④(a))。

また、地方公共団体によるオープンデータの取組にあたっては、全国的にデータの利活用を容易に行えるよう、データ形式(タグ、分類等)の標準化や、府省庁の所管法令等に基づき地方公共団体が作成・管理等を行っているデータの公開の可否の整理も課題として指摘されており、その対応も求められている(→Ⅱ.2.(1)④(b),(c))。

【公共データの利活用】

上述のように、データカタログサイト等の状況からも分かるとおり、今後はオープンデータの質・量の両面での充実化とともに、オープンデータをいかに利活用してもらうか、ニーズの的確な把握も含め、効率的かつ効果的にオープンデータを促進していくことが必要である。

このため、今後はオープンデータの公開面のみならず、利活用面での主なプレーヤーである地域の住民、企業、NPO、教育機関等も含め、全国レベルでのオープンデータの普及・啓発を行いつつ、ニーズを的確に把握する仕組みを構築するなど、政府、地方公共団体のみならず、利活用面での主なプレーヤーとともに一体となって利活用を推進していくことが求められる。(→Ⅱ.2.(2)①(a))。

また、利活用に係る評価指標等を検討し、継続的かつ計画的なオープンデータの利活用の活性化を図っていくことも必要である(→Ⅱ.2.(2)①(b))。

【オープンデータの国際展開】

上述のような我が国の状況は、主要なオープンデータの国際ランキングにおいて19位(2014年度時点)と評価されている。また、我が国は2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等が控えている中、観光等をはじめとする諸外国向けのデータを意識した対応も求められている。

このため、今後は我が国のオープンデータの取組に関する情報発信の強化とともに、国際ランキングの評価への積極的な関与を行っていくことが必要である(→Ⅱ.2.(1)①(c))。なお、国際ランキングの評価については、特に、政府のWebサイトの利用ルールが国際的にオープンライセンスと認められるものになるよう、政府標準利用規約の見直しは早急な対応が必要である(→Ⅱ.2.(1)②)。

【KPIの見直しや府省庁毎の目標設定】

これまでの成果等を活かしつつ、次の展開につなげていくためにはKPIの見直しや府省庁毎の目標値の設定、及び継続的なフォローアップ、その結果を踏まえた次なる展開への継続性を確保していくことも重要である(→Ⅱ.2.(1)①(b))。

Ⅱ.今後のオープンデータの展開に向けた基本的考え方と重点的に取り組む事項

1.今後のオープンデータの展開に向けた基本的考え方

Ⅰで述べたように、これまでのオープンデータの取組は、基本的な戦略策定や推進体制等の整備に加え、公共データの公開の側面を優先して実施してきたところであるが、相対的に利活用が遅れていること、公開と利活用のサイクルが十分に機能していない状況にあると考えられる。

このような状況を踏まえ、これまでの「経済の活性化、新事業の創出」、「官民共同による公共サービス(防災・減災を含む)の実現」及び「行政の透明性・信頼性の向上」に向けたオープンデータの取組を加速させつつ、今後、さらに効果的・効率的な展開を図るため、利活用の促進を意識した対応も併せて行っていく必要がある。

オープンデータの促進は、そもそも公共データを含むビッグデータの分析・利活用を通じた様々な効果、例えば、新たなサービスや事業の開発をはじめ、地域住民、コミュニティ、地方公共団体等の課題の発見(見える化)・解決、さらには超高齢社会の到来に備えた我が国全体の課題の発見(見える化)・解決等につながることが期待されているものである。

このような視点も踏まえながら、我が国のオープンデータの黎明期とも言える、これまでの公開面を中心とした対応から、今後はニーズオリエンテッドな「課題解決型のオープンデータの推進」に発想を転換していくことが重要である。

具体的には、府省庁において策定される重点施策等をはじめ、各々の所掌分野における諸課題への対応を検討するに当たっては、その解決の一手段としてオープンデータによる対応の可否も検討することとし、府省庁の政策決定過程にオープンデータによる対応の検討をビルトイン化するとともに、オープンデータによる取組を活用した場合にはそのユースケースの情報発信も行うこととする。

これまでの戦略やロードマップ等に基づく取組等も継続しつつ、このような「課題解決型のオープンデータの促進」に発想を転換するとともに、上述のオープンデータの促進に係る課題等を踏まえ、以下のとおり、重点的に取り組む事項について政府一体となって取り組む(深める・広める・持続する)こととする。

なお、公共データの公開と利活用は相互に密接に関連していることから、厳密に分けて整理されるべきものではなく、便宜上どちらの要素が強いかの観点から一定の整理を行いつつ、取組に当たっては一体的に推進していくことが必要である。

2.重点的に取り組む事項

(1)データ公開の推進

①データカタログサイト等の質・量両面での拡充

(a)独立行政法人、公益企業等におけるオープンデータの推進

独立行政法人や公益企業等におけるオープンデータの推進については、内閣官房又は所管府省庁からオープンデータの意義(例えば、オープンサイエンスの取組、企業の社会貢献等)も含め、保有するデータの原則公開の考え方の下、オープンデータの取組を促していくとともに、その際、工程表等の作成により計画的な展開がなされるよう努めるものとする。

また、独立行政法人等によるデータカタログサイトを通じたデータ提供に向けて検討を行う。

(b)公開データの質・量両面での拡充

府省庁は、これまでのWebサイト中心のオープンデータ化に加え、Webサイトに掲載していないデータ(利用者の求めに応じて提供している情報等)についてもオープンデータ化を推進する。

また、データカタログサイトについては、機械判読に適したファイル形式のデータの登録率の向上を図る。特に、機械判読性に優れたcsv形式のファイルや、これに準ずるExcelファイルについては、2015年度末までに、各府省庁において登録率の目標(公開済みデータの20%以上)を達成するものとする。

英語等、外国語のデータについては、既に府省庁のWebサイトで公開予定のものに加え、日本での旅行やビジネス・留学において有用なデータをはじめ、クールジャパンや農産物等輸出関連のデータについても我が国からの情報発信の強化、国際競争力強化の観点から、データカタログサイトへの掲載を推進することとする。

併せて、データカタログサイトに登録されている外国語のデータについては、2015年度末までに、各府省庁において、登録率を10%以上、もしくは前年度比60%増の目標を達成することとする。

府省庁が公開するデータの構造等の標準化については、「二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)」等に基づき推進しているところであるが、今後、環境や農業等をはじめ、分野毎の特性に応じた取組が進むことが想定されるため、ガイドラインの周知徹底や、必要な情報提供等に取り組むこととする。

この他、国際ランキングにおける評価の対象分野となっているもののうち、日本での公開が不十分である、司法・安全・環境、運輸・観光、国土・気象、企業・家計・経済及び人口・世帯については、積極的に公開に取り組むこととする。

(c)国際ランキングにおける評価項目の見直しの提案等

国際ランキングについては、我が国での公開数は多いものの、国際ランキングの評価対象分野となっていない分野の存在(防災・減災等)や、評価対象分野の一つである公共交通分野については、我が国では民間の公共交通機関が多いこと(国等のオープンデータとしての取扱いとなっていない)など、我が国の状況を正確に反映するよう、評価実施主体に対し見直しを提案するほか、関係の国際会議等への積極的な参画を通じ、我が国の国際的な評価の向上に取り組むこととする。

②政府標準利用規約の見直し

政府標準利用規約(1.0版)について、国際的にオープンなライセンスと認められるCC-BY互換のライセンスに早急に見直し、各府省のWebサイトのライセンスもこれに準拠することとする。

③公開に際し制度上の制約等がある案件への対応

データの二次利用に当たり、申請・承認が必要なデータや、有料扱いとなっているデータ等、オープンデータとしての公開に制度上の制約等があるものについて、法的な整理や個別データ毎の実態把握を行った上で、法制的な措置等の要否について引き続き検討を行い、できるだけ早期に結論を得ることとする。

④地方公共団体のオープンデータの取組に対する支援

(a)地方公共団体の人的支援策の検討

オープンデータの取組を介したコミュニティ活動の推進や、データの分析等を通じた地域課題の解決などを推進する民間有識者等の人材の育成や地方公共団体に対する派遣を行うこととする。

また、既にオープンデータに取り組んでいる地方公共団体の成功事例の収集や成功事例の他の地方公共団体への横展開等に関する支援を行うこととする。

(b)データ形式(タグ、分類等)の標準化

地方公共団体がオープンデータに取り組むに当たり、全国的にデータの利活用を容易に行えるよう、既に取り組んでいる地方公共団体にも配慮しつつ、政府において国の標準化とは別に、地方公共団体特有のデータ形式の標準化(情報の分類方法、タグ付けの方法等)に取り組むとともに、必要な情報提供を行うこととする。

(c)府省庁の所管法令等に基づき地方公共団体が作成・管理等を行っているデータの整理

府省庁の所管法令等に基づき地方公共団体が作成・管理等を行っているデータのうち、オープンデータとしての公開の可否が制度上明確になっていないものの取扱いについて、早急に整理を行い、必要に応じ、法改正も含め、その対応策について検討することとする。

(d)データカタログサイトからの地方公共団体のデータ提供

地方公共団体におけるオープンデータの取組体制の負担軽減を図るとともに、データカタログサイトのデータの質の向上を図る観点から、地方公共団体によるデータカタログサイトを通じたデータ提供について検討することとする。

(2)データの利活用の推進

①国内の取組

(a)オープンデータの利活用の普及・啓発

オープンデータの普及・啓発を行うNPO等の民間団体と連携し、我が国の典型的な利活用の成功事例を収集・類型化、情報提供する仕組みを構築することとする(SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用等)。

併せて、利活用の成功事例集は、(1)④の成功事例の横展開においても活用するとともに、公的機関や民間企業等におけるオープンデータの利活用の啓発にも活用する。

また、オープンデータの利活用成功事例の横展開の推進等を担うオープンデータ伝道師の任命とその活動の支援を行う。

オープンデータに関するニーズの把握や掘り起こしについては、個別の取組を引き続き行うとともに、データカタログサイト等を通じた匿名の投稿を可能とするほか、開発者フォーラムの設置などによるニーズの収集・フィードバック等、新たな取組を行うこととする。

さらに、将来の我が国を担う人材育成の観点から、大学のみならず、小中学校、高等学校等において、発達段階を踏まえ、地理空間情報等のオープンデータの利活用を推進することを通じて、ITを利活用できる人材の育成に努めることとする。

(b)利活用に係る評価指標のあり方、KPIの項目や目標値の設定

利活用に係る評価指標のあり方や、利活用の進捗状況について適切に評価できるKPIの設定等については、オープンデータに係る対象者からの利活用意識の把握や、オープンデータ利活用事例集への応募案件数等、今後、具体的かつ実効性のある項目について検討し、継続して評価できるようなKPIを計測できる仕組みを構築することとする。

②オープンデータの国際展開の推進

我が国がオープンデータの分野において、国際的にもイニシアティブを確立できるよう、オープンデータを推進している諸外国の政府・大学・NPO等との政策や事例の共有化を図りつつ、積極的に海外展開を図るための方策について早急に検討し、必要な対応を行うこととする。

例えば、防災・減災、環境分野等の我が国が優位な分野や、集中的に取り組んでいる地方創生や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けた取組にも焦点を当て、外国語データの充実化やオープンデータの利活用等に関するアプリやシステム、ノウハウのパッケージ化をはじめ、オープンデータを切り口とした新しいシステムや事業のアジア等での情報発信・提案を推進する。

また、オープンデータの利活用への取組について客観的に評価するための国際的評価指標(グローバル・インデックス)の確立に向け、上記分野等を中心に主体的に取り組み、海外発信を行うこととする。

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