はじめに
この記事はLITALICO Engineers Advent Calendar 2023 カレンダー3の13日目の記事です
LITALICOに2022年4月に入社したエンジニアの@taka-fujiです!
MTGのファシリってなかなか難しいですよね...会社を見渡してみても苦手意識を持っている方が少なくない気がします
適切にメンバーの意見を聞き出しつつ全体の納得いく形で合意をとって議論を収束させなければいけない、、、といったようにやることが多い上、意思決定をするのが主にファシリの人になりがちなので必要以上に責任を感じやすいことが苦手意識に繋がっている印象があります
そんな大変なことしかないように感じるファシリですが、務めることで以下のような恩恵が得られると思っています(なので悪いことばかりではないのかなと)
- 自身の意見・考えを共有しやすい
- MTGの内容を正確に理解しやすい
そのため、ファシリを上手に務めることができるようになれば、チームのあらゆる意思決定に自身の意見・考えをぶつけやすくなり、またそれら意思決定の背景を十分に理解できるようになるという旨味があると考えています
というわけで今回は、MTGのファシリを務める上でのコツについて整理していきたいと思います
ファシリを上手に行うのは簡単ではないと思いますが、本記事の内容が少しでも参考になれば幸いです!
それでは以下本題になります
本記事の内容
- MTGのアンチパターン
- MTGの中でファシリが担うべき役割
- ファシリ担当になったらすべきこと
- ドキュメントの書き方(おまけ)
まず、MTGのアンチパターンを通してMTGが本来どのようにあるべきかについて考えてみます
その後、MTGのあるべき姿の実現を行うのがファシリの役割であることについて触れ、それらファシリの役割を全うするためにするべきことについてまとめていくという流れになります
また、最後におまけとして『ドキュメントの書き方』についてもまとめてみました
ファシリをする上でドキュメントの用意・整理は外せないかなと思いますので、併せて参考にしてもらえると嬉しいです
MTGのアンチパターン
MTG前
私 「今日の14時から入ってる『施策〇〇について』というMTGは何を話すやつでしたっけ...? 事前に準備したほうが良いこととかありますかね??」
先輩 「いやあ、わからないな。まあとりあえず参加してみればその辺りもわかるだろうし何とかなるでしょ」
MTG中
ファシリ 「施策〇〇とは〜〜〜〜〜というものになっています。 本施策について皆さんどう思いますか? 何か意見もらえると嬉しいのですが」
参加者 「 (しーん...) 」
ファシリ 「では私さんどうでしょうか? この施策はやってみる価値があると思いますか?」
私 「 (ええ、そんな突然どう思うか聞かれても...そもそも施策〇〇についてちゃんと理解できていないから自分の考えも何もないよ) 」
私 「えーと、そうですね...とりあえず実施してみたら良いのではないでしょうか」
MTG後
先輩 「大変だったな、突然指名されて」
私 「はい...正直理解しきれていない内容でしたし、回答に何を求められているのかもわからなくて適当に答えてしまいました」
先輩 「あの状況だと仕方ないな。 結局試作〇〇はやってみることになったんだろうか?」
私 「たしかにどうなんでしょう、結論わからないままですね。 やる / やらないをいつまでにどうやって決めるのか謎のままですね」
先輩 「なんかよくわからないMTGだったな、あの時間で話が前に進んだ気しないぜ」
上記やりとりはフィクションですが、実際に仕事をしていて、似たようなMTGを経験した方も少なくはないのではないでしょうか?
私が先ほどのMTGで良くないと感じている点は以下になります
- 目的や議題が不明な状態で呼ばれる
- 意図がわからない状態で情報の共有が始まる
- 論点が曖昧な状態で意見を求められる
- 結論がわからない状態で終わる
参加者の時間と脳のリソースを取ったのに何も話が進んでいない、というのでは誰も嬉しくないですね
MTGの中でファシリが担うべき役割
良いファシリは、上述のようなアンチパターンとなるMTGをしない人、だと考えています
つまり、以下のようなMTGを創り上げることがファシリが担うべき役割だといえます
- 目的が明確になっており、MTG開始段階で、MTG終了後の理想状態が参加者全員に共有されているMTG
- 情報の共有前に、全体に意図の共有が行われているMTG
- e.g. 情報の共有自体が目的なので、説明を通して概要を把握してもらえたら嬉しい
- e.g. 〇〇の観点で意見を聞きたいので、懸念がないかを考えながら説明を聞いてもらえると嬉しい
- 論点が明確になった状態で参加者が意見を言えているMTG
- 最終的な結論を、全体で認識すり合わせた上で終わるMTG
どのようにしたらファシリが担うべき役割を全うすることができるのかについて、下記の『ファシリ担当になったらすべきこと』でまとめていきます
ファシリ担当になったらすべきこと
MTGのファシリをすることが決まったら、以下のような流れで準備・対応をしておくと良いと思います
- MTGの目的を言語化する
- MTGで使うドキュメントを用意する
- MTG進行についてイメージする
- MTGを実際に進める
それぞれについて説明していきます
雑談・アイスブレイクのやり方については今回触れていません
それらに特化した記事がたくさんあるかと思いますので、そちらを参考にしてみてください
MTGの目的を言語化する
以下の条件を満たすように、MTGの目的を整理・言語化します
- 参加者で認識がずれず、同じゴールを思い描くことができる目的であること
- 『目的を達成したか?』という質問に対して Yes / No で "はっきりと" 回答できる目的であること
これによりMTGのゴールが明確になり、「良いMTGだった!」と満足感・納得感を持って終えるために何をすべきかがはっきりするようになります
とはいえ抽象度が高いので、具体例を見ていきましょう
例えば、以下のような目的はあまり良くないと考えます
- 施策〇〇について話す
- 施策〇〇の妥当性を考える
『施策〇〇について話す』の場合、施策について議論したいのか、情報共有がしたいのかが曖昧であり、参加者によって思い描くであろうゴールが変わってくる可能性が高いです
また、『施策〇〇について話すことはできましたか?』という質問に対しても、「話はしたからどちらかというとYesだが、特に何かが決まったわけではないから微妙な感じ」というように "はっきりと" Yesとは回答できないリスクも生じます
『施策〇〇の妥当性を考える』についても同様で、妥当性を判断するために必要な情報を発散させたいのか、意見を収束させて妥当性の結論を出すところまでしたいのかが曖昧であり、思い描くゴールが異なってきます
では、どのような目的であれば良いといえるのでしょうか
例えば、以下のような目的であれば先述の条件を満たしているといえるのではないかと考えます
- 施策〇〇の妥当性検証を通して、施策〇〇を行うかどうかを決める
これであれば、「妥当性について意見を出しつつも、最終的には施策を行うのかどうかについて結論を出せば良いのだな」と参加者の目線が揃うと思います
また、『目的を達成したかどうか?』という質問に対しても、最終的に施策を行うかどうかの結論が出ていればYesですし、出ていなければNoというふうに "はっきりと" 回答することができるはずです
MTGで使うドキュメントを用意する
目的が整理できたら、MTGで実際に使用するドキュメントを用意しましょう
用意するドキュメントには以下の項目を含めると良いです
- MTGの目的・ゴール
- 論点
- 論点について話す上で必要な事前情報(前提情報)
- 意図 / 背景
- 内容
- 論点に対するファシリの意見
- 結論
- 背景 / 理由
MTGの目的・ゴール
こちらは、『MTGの目的を言語化する』の項目で整理した内容を書いておけば大丈夫です
論点
前提として、MTGの目的が共有であって議論でない場合には、本項目はなくても大丈夫です
何かを議論したい場合には、本項目を設けておくで参加者の認識をすり合わせることができ、次に話す事前情報の共有がスムーズに進んだり、意図しない方向への脱線(目的に関係ない内容へ脱線していく)を防ぎやすくなります
論点について話す上で必要な事前情報(前提情報)
MTGを進める上では、事前に情報を共有しておきたいシーンは少なくないと思います
そういった内容を整理するのが本項目になります
ここで大事になるのが、「MTGの中でファシリが担うべき役割」の内容でも書いたように『意図 / 背景』を共有することになります
これらの内容がないと、参加者はどのような観点を持って情報の共有を受ければいいのかわからず、情報共有後の全体の状態がファシリが望んでいた状態と乖離しやすくなります
この乖離が発生すると、MTGをスムーズに進行させるのは一気に難易度が上がるので、極力丁寧に『意図 / 背景』の共有をするようにしておくと良いと思います
具体でどのような情報を書けば良いかということなのですが、端的にまとめるのが理想であり、以下くらいの情報量で十分だと思います
- 意図 / 背景
- 施策〇〇を実施すべきか迷っている
- 特に予算の観点で懸念を漏れなく洗い出せているかが気になりポイント
- 施策〇〇の説明を通して、予算関連の懸念がないかについて一緒に考えてもらいたい
論点に対するファシリの意見
本項目は、議論をより円滑に進めるために『一番重要』といっても過言ではないです
なぜ一番重要かというと、本項目がないと以下のような問題につながり得るからです
- 議論の火種がなく、意見が全く出てこない
- 「皆さんどう思いますか?」と聞いて回答が誰からも返ってこない、みたいなことになる
- 意見は出てくるのだが、各々の観点がバラバラで収束させづらい
- 目的に関係ない話題に脱線することも起こり得る
理由含めてファシリの意見を事前に整理しておくことで、ファシリが提示した意見に対して賛否や懸念点等を議論できるようになるので、議論がある程度まとまった方向に進みやすく、意図しない方向への脱線も防ぎやすくなります
ここで、脱線を防げることをメリットとして挙げておりますが、脱線することがチームとして一切旨味がないわけではない点については補足しておきます
新しい観点・気づきを得ることができたり、チームとして見えていなかった課題を発見することができたりと、嬉しいこともあります
ただ、脱線した時の内容を適切に整理した上で、本来の目的達成までをMTGの限られた時間のなかで行うのは難易度が高いと考えています
そのため、特に優先すべきMTG本来の目的達成を目指すために、ここでは脱線を防ぐことをメリットとして整理していることはご認識ください
MTG進行についてイメージする
ドキュメントを用意することができたら、8割準備は終わっていますが油断してはいけません
非常に良いドキュメントを用意できたからといって、MTGが円滑に進むかというと、必ずしもそうとはいえません
ファシリは参加者の反応を見つつ全体の認識に齟齬が生まれないように情報を共有して、説明・議論といったフェーズの変化を管理していく必要があります
ドキュメントの内容をただ読むだけでは参加者の様子は見えませんし、参加者から質問を投げられて回答したりしているうちに、説明・議論といったフェーズの変化が勝手に起こり、気がついたら関係ない話へと進んでいくこともあります
また、MTGが始まってから本題に入るための導入や、MTGを締める時の話など、意外と難しかったりするものです
導入や締めの内容はさほどMTG自体に影響はないのですが、ファシリに慣れていないとテンパってしまって共有すべき情報の内容や流れに抜け漏れが生じる可能性も否定できません
当日起こる意図しない状況に余裕を持って対応できるようにするために、想像できる範囲の問題・状況とその時の対応はイメージしておくと良いと考えています
MTGを実際に進める
先ほど「MTG進行についてイメージする」で当日意図しない状況が起こることについて触れましたが、例え意図しない状況が起こりまくってMTGがどれだけ混沌としたとしても、ファシリがMTG中にすべきことは1つです
『MTGの目的に必要な情報共有・議論に誘導する』です
混沌とし始めた時、今この瞬間の話はMTGの本来の目的に必要な話なのかを判断して、必要に応じて適切な話題に話を戻すことがファシリが当日アドリブ的に求められる動きになります
MTGの目的を一番深く理解しているのは設定したファシリ本人なので、少しでも違和感を感じたらその違和感は正しいと信じて、一度話をストップさせてでも目的につながっているかを全体で確認するようにしましょう
前述の通り脱線するのが100%悪いわけではないです
優先すべきはMTG本来の目的達成であるということを前提としています
以上がMTG中の基本的な動きになりますが、MTGの最後にもう1つだけすべきことがあります
それは『以下の内容を確認して議事録に残すようにすること』です
- 決定事項
- NA
- 担当者
- 期日
- 内容
- 次のMTG日程(必要あれば)
これらを確認することで、MTGの最後に全体で認識をすり合わせることができることに加えて、日にちが経ってからMTGの内容を振り返る時のサマリとしても活用することができます
MTGを終えたあと実は参加者と認識がずれていた、というのは意外とその後の業務の手間を増やすので、MTG時点で正しくお互いの認識を共通化しておくことは非常に役に立ちます
MTGの最後、5分だけ時間に余裕を残すようにして必ず参加者全員で確認するようにしましょう
最後の確認の一手間が、その後の業務効率に大きく関わるのであれば確認しない理由はないですから
まとめ
今回、ファシリとしてより良いMTGを作るためにやっておくと良いと考えることについて整理してみました
皆でファシリ上手になって、チームの意思決定ガンガン導いてあげちゃいましょう!
次回は @zacky_50 さんの記事になります!
ぜひ次の記事も楽しんでいってください!
【おまけ】ドキュメントの書き方
前提
例えばGoogleドキュメントのように、インデントを用いて箇条書きができるドキュメントについて私が意識していることを列挙しています
内容
- 大見出し以外は、メモにならないように「1文」の形で書ききる
- メリットは以下
- 執筆者の論理的思考力の訓練
- 欠席者が理解しやすくなる(「それっぽいけどちゃんと読むとメモ書きで内容がよく分からない」となることを防ぐ)
- メリットは以下
- ピラミッド構造を意識する
- 上位メッセージに対して、下位メッセージが補足や理由説明になるようになっている構造のこと
- 3層までで内容を整理できるようにする
- これが3層目
- 4層目以降まで続くと読みにくくなる(個人的な印象として)
- 同じ階層の文は多くて5~7個までを目安
- 超過する場合、同階層内で内容の粒度が異なる文はないか?を確認する
- 同じ階層の文だけを読んでも、内容が把握できるのが理想
- 下階層が1文だけの時は警戒する
- 上の階層の文章に含められないか検討する
- 複数の文章に分けた方が理解しやすくないか検討する
- 議事録の末尾には、NAを洗い出して明記する
- 全てのタスクについて、「担当者」「期日」を明確にする
- NA以外の箇所で既に書いた内容と重複しても良いので、とにかく洗い出す