こんにちは。
先日、社内の有志メンバーでちょっと変わった形式の読書会を開催したので、その参加記事となります。
ちょっと変わった読書会
今回の読書会は、
Active Book Dialog(以下、ABD) という形式で開催しました。
ABDは、近年注目されている読書会で、書物の内容理解だけでなく、コミュニケーションツールとしても注目されています。
肝となる部分を抽出すると、
- 本を分担して読む + まとめる(コ・サマライズ)
- 読んだ箇所ををリレー形式で発表する(リレープレゼン)
- 感想や疑問をもとにディスカッションする(ダイアログ)
となります。一般的なメリットについては公式サイトをご覧いただければ、と思いますが、私個人の実感としては
- 読んだ箇所を発表するために要約するので、必然的に論理構成を考えながら読むことができる
- 共通の題材本をベースに会話できるので、コミュニケーションツールとして有益
- ディスカッションから出てくる知識が意外と深い(ハッとさせられる)
ことが、特にやってて楽しいなと感じる点です。
今回の題材本
社内ABDでは、プログラミング関係だけでなく、さまざまな本を題材としていますが、今回は、クリエイティブ系の方からの推薦本で、
「アイデアのつくり方 (著: ジェームス・W・ヤング)」
としました。
(過去、「リーダブルコード」など開催しています)
この本はなんと、原著は1940年、私の手元にある本は1988年初版ということで、私が生まれる前に書かれた本です。
ちなみに、手元にある本も、初版78刷で、こういったことからも、不変的な価値がある本なのかなと思います。
今回推薦されたのは、「アイデアの生産はスキルとして得られるもの」 であり、その具体的な方法が記されているということで、デザイナーだけでなくエンジニア、事務職、経営層など、各々のフィールドで、自分の業務に活かせるエッセンスが含まれているといった理由からでした。
ABDをやってみる
前置きは長くなりましたが、いよいよABDです。
今回は短い本ということもあり、全体を四分割して、割り振りをしました。
リアルで集まると実際に本を裁断して行うこともあるようですが、今回はオンラインということで、各々本を用意して読み進めます。
分担はこんな感じです。
私は、緑のパート、④と⑤を担当しました。この部分を、20分で読み、一枚のスライドにまとめます。
本を分担して読む + まとめる(コ・サマライズ)
実際読んでみると、難しい単語が少なく読みにくい日本語ではなく、数分で目を通すことができたのできましたが、これをスライドにまとめようと思うと中々難しい・・・・
「今時の文章」のように、起承転結がはっきりしておらず、例えば、例の中で結論を書いているなど、要約泣かせの文章だなと感じました。
(この辺りの考察は、のちほど、ダイアログでも深掘りしていきます)
文意をしっかりと考えないと自分の中で言語化することができず、、、、その過程で、一歩進んだ理解になったかなと思います。
これはまさに、ABDで取り扱ったからこそできる読み方ですね。
完成したスライド
※ハートマークは参加者が「いいね」と思ってくれた部分です
そんな苦労して作成したスライドがこちらです。
7ページ分を一枚のスライドにまとめるので、原著の論理構成や、よく使われるロジカルなパターンをイメージしながら大事なところを捉えながらまとめていきます。
私の場合は、ABDとしてはやや掟破りですが、「要するに」というのを意識して、エッセンスを抽出してまとめています。
(傾向として、短くなりがちで、その章を読まない他の人にとっては、やや不親切かもしれません・・・)
例えば、他の参加者のをみてみると、
このように、例まで拾って、「原著に忠実」にまとめられています。このあたりは「各々のスタイルで」といった感じですね。
読んだ箇所ををリレー形式で発表する(リレープレゼン)
つづいて、リレープレゼン です。各々読んだ箇所を、作成したスライドをベースに、3分間で発表していきます。
3分という時間が、短いようで長く、長いようで短く・・・・・
私の場合はいつも早口になってしまいます・・・・(要反省)
スライドも短いので、結果として時間が余りがちです・・・
ちなみに、ここまでのポイントとしては
著者になりきって 行うこと
あまり自分の意見は入れないように注意すること
です。あくまで「本に何が書かれているか」を大切にするということですね。意見や感想はその後のフェーズで対話します。単純な単語の変換や、単語の並び順の変更でもニュアンスが変わるので、実は難しいポイントでもあります。
余談ですが、発表の段階で、順序付けされた言葉に変換していくと、
- 「なんか、つながりが・・・・」
- 「これってなんでだっけ?」
- 「ここちょっとニュアンスが違うな」
と、自分の要約の甘さを感じるフェーズでもあります。。
感想や疑問をもとにディスカッションする(ダイアログ)
ここで小休憩 + ギャラリーウォーク(他のスライドを参照し、「いいね」をつける)を挟み、ダイアログ へと移ります。
ダイアログでは、これまでのスライドやプレゼンを元に、気になったことを対話していきます。
例えば今回では、「本の内容」から「読めるんだけど、なんかまとめにくいよね」というところまで、さまざまな考察が行われました。
-
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ」というのはその通り
- 任天堂はこの考えで発展した
- チームラボのサウナとのコラボもここに通じるものがある
-
書かれた時代が半世紀以上前である
-
使用されている例が今の時代に即していないのが分かりにくさの原因の一つ
- 例えばアインシュタインとかは当時は「時の人」 だったのでは?
- そもそも、英語が原著なので、翻訳の過程での単語の変換でニュアンスが変わっているのかも
- それにもかかわらず、今でも通じるエッセンス なのはさすが名著
- 音楽を聞くというのが当時も今も変わらない息抜きというのは面白い
-
使用されている例が今の時代に即していないのが分かりにくさの原因の一つ
-
「ノイローゼ気味になる」経験(考え込む経験) って今は難しいよね
- 昔は、例えばゲームをプレイしててもそういう経験ができた(いわゆるやり込み)
- 今のスマホゲームだと、そういう経験は難しいのかもしれない
などなど。
一冊の本からここまでディスカッションできるって素晴らしいですよね。
年齢やこれまでのキャリアが異なる人が参加すると、普段聞けない内容を聞くことができるので、それもABDの面白さです。
まとめ
実はこの日、私は2つのABDに参加しました。
一つは話題の「良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門」、そしてもう一つがこの「アイデアのつくり方」。
テーマも書かれた時代も異なる二冊でしたが、意外と似ているところがあったり、内容云々ではなく日本語というところでも考えさせられることがあり、非常に面白い体験でした。
ABDは、「ちょっと変わった読書会」ですが、やってみると、一人でただ本を読むだけでは味わえない非常に面白い体験ができます(中々魅力が伝えられない・・・)。
スライドにまとめて発表し、ダイアログするという過程が、
- 本への深い理解
- (文書構造を考えることになる + アウトプットもできる)
- 日本語への理解
- 「聞く」経験
- コミュニケーション
などなど、さまざまなメリットをもたらします。
興味のある方はぜひ、一度やってみることをお勧めします。
(社内でもまだまだ開催予定です)