はじめに
自社で利用するアプリケーションと生成AIを連携し、顧客情報や見込客情報(リード)のAI活用を行う例として、今回はWorkatoと生成AIの組み合わせによる、企業取引における反社チェックの自動化について紹介します。
反社チェックとは
企業取引における反社チェックは、リスク管理と健全な取引関係の構築に不可欠なプロセスであり、企業の安全な経営と社会的責任を果たす上で、欠かすことが出来ない作業です。
反社チェックは、反社会的勢力との関係を断ち切り、企業イメージの保持、法的リスクの回避、従業員の安全確保、そして社会的な責任を果たす上で重要な役割を果たします。
手作業による反社チェックの問題点
反社チェックの方法として、調査会社等の企業データベースを照会する方法と、検索エンジンを用いる方法(「企業名+特定キーワード」で検索)、これらを複数組み合わせて巡回する方法があります。
これらの作業は通常は手作業(と目視)で行われることが多いですが、手作業による対応には多くの問題点があります。例えば、次のようなものが挙げられます。
- 情報収集や照合に多大な時間とコスト(労力)を要する
- チェック件数の増加による担当者の負荷増大とミスや遅滞の発生
- 調査結果は各担当者がシステムに手作業で登録する必要がある
- 担当者の経験や知識、担当者の主観等により、対応や結果にばらつきが生じる
- 継続的なモニタリングや定期的な再チェックを必要とする場合、手作業での対応は困難
反社チェック自動化による課題解決
反社チェックの自動化は、企業に多岐にわたるメリットをもたらします。例えば、次のようなものが挙げられます。
- 情報収集や照合にかかる時間やコストの大幅な削減
- 自動化による処理速度(スループット)向上と品質確保
- 調査結果は自動的にシステム上に登録される
- 担当者による判断のばらつきをなくし、客観的で統一されたチェックの実現
- 継続的なモニタリングと定期的な再チェックの実現によるリスクの早期発見
以上により、担当者は手作業による反社チェックやその負荷から解放され、重要な業務に集中できるようになります。また、企業に対しては業務効率化のほか、リスク低減やコンプライアンス強化、迅速な対応、そして透明性向上等、大きなメリットをもたらします。
生成AIを用いた反社チェック
反社チェックの自動化は、調査会社等の企業データベースや検索エンジンが提供するWeb APIを活用(連携)することですぐに始めることが可能ですが、生成AIを活用することで、効率的かつ低コストに反社チェックを進めることが可能です。
例えば、Web検索機能に対応した生成AIサービスのAPIを利用して反社チェックを行い、その時点で必要な結果が取得できれば生成AIの結果を採用し、より詳細な結果を必要とする場合は、引き続き調査会社等の企業データベースのAPIを利用してより詳細にチェックを行う、といった流れで進めていくことで、企業データベースの利用にかかる料金を抑えることができ、最適なコストで反社チェックの運用が可能となります。
Gemini Developer APIを用いた反社チェック
生成AIサービスはChatGPTやGoogle Gemini, Claudeなど様々ありますが、反社チェックで生成AIを活用する際に最適なサービスはGoogle Gemini(Gemini Developer API)です。(2025/4時点において)
Gemini Developer APIを選択する理由は次の通りです。
- 無料枠が用意されており、無料で始めることが可能(状況に応じて有料への変更も可能)
- Google検索によるグラウンディングに対応しており、Google検索との組み合わせによる精度の高い結果が得られる
Workatoによる生成AI連携
iPaaS製品のWorkatoを利用すると、自社で利用する様々なアプリケーションと生成AIサービスの連携を簡単に実現することができます。
例えば、
等のアプリケーションからのイベント(ステータス変更、ボタン押下、値変更等)をきっかけ(トリガー)に、あるいは夜間バッチのような定時処理をきっかけに、Workato経由でアプリケーションからの値を取得したうえでGoogle Geminiに対してプロンプトに基づくリクエストを行い、アプリケーション上の指定のフィールドあるいはコメントへその結果をセットするような連携を実現することが可能です。
また、反社チェックのような結果に対してリアルタイム性を求める場合においては、Google検索によるグラウンディングを活用することでその要件を満たすことが可能です。
WorkatoによるGoogle Geminiを用いた反社チェックの実装例
以下は、反社チェックの処理を実装したWorkatoのレシピの一例です。
このレシピでは会社名と住所を渡すことで、その企業の反社チェックを行うことができます。
※ここでは説明を行う上で、便宜上入力インターフェースを表示していますが、実際はアプリケーションから渡された値が各フィールドへセットされます。
上記内容(値)をセットしてレシピが実行されると、以下のように結果を取得することが可能です。この出力結果はCRMやWebデータベース等のアプリケーションへ連携が可能です。
なお、本レシピでは事前に次のようなプロンプトを準備しており(Step 2)、この内容をもとに結果が返されます。Company nameとAddressには、トリガーにセットされた値が代入されます。
また、Gemini(Step 3)についてはカスタムアクションを選択し、Google検索によるグラウンディングを参考に次のような設定を行うことで、プロンプトとGoogle検索に基づく結果をGoogle Geminiより取得することができます。
まとめ
生成AIを活用することで、最適なコストで反社チェックの運用が可能になります。また、Workatoを利用することで、アプリケーションと生成AIを簡単に連携でき、反社チェックの機能を短期間でリリースすることができます。
なお、今回はWorkatoにおける生成AI活用例の一例として反社チェックを紹介しましたが、生成AIは反社チェックに限らず、様々な場面で応用することが可能です。自社アプリケーションで生成AIを活用してみたい、そしてWorkatoと連携して生成AIを活用してみたい方の参考になりましたら幸いです。