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技術者派遣について自身の経験を踏まえて

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初めに

初めまして、たーくと申します。現在はSESのエンジニアとして日々開発業務に勤しむ傍ら情報処理安全確保支援士として社内セキュリティ教育やシステム監査の勉強をしています。

対象読者

SESやその他の契約形態で客先に常駐し業務を行っている方

この記事を書こうと思った動機

先日、某企業が偽装請負の疑いで労働局から直接の指導を受けたことが理由です。
事の概要は以下の通りです。

登場人物
A社 SE派遣企業
B社 SE派遣企業
C社 システム開発企業

A社 → B社 A社社員を業務委託基本契約として社員を送り出し
B社 → C社 A社社員を業務準委任基本契約として社員を送り出し
C社 → A社社員 C社社員による直接の業務指示

今回の事象は、A社より社員を受け入れたB社がC社に準委任契約で社員を送り出したのに対し、
C社による業務指示が行われており、実態は準委任を名目にした派遣であると判断された。

要するに偽装請負が発生していたということです。

上記のようなことは業界に対しほんの一部の問題であり、この業界には蔓延している問題だと思っています。

この記事を読んで業界について理解を深め、上記のようなことが起こらないように自己防衛できるように知識を増やし、企業コンプライアンスにうるさくなってきているこの業界で、法律を遵守しつつも伸び伸びとエンジニアを全うできる人を増やすのがこの記事の目的です。

契約の種類

当記事で出てくる契約の種類について説明します。

委託

1 ゆだね任せること。人に頼んで代わりにやってもらうこと。「販売を業者に―する」
2 契約などの法律行為やその他の事務処理を他人に依頼すること。
3 客から取引所の取引員に注文を出すこと。

エンジニアに対する委託契約は1のことを指します。
また、委託という契約形態は法律では定められていません。

よく耳にする業務委託契約ですが、内容は請負や準委任など
法律に従って決められている契約形態のざっくりとした言い方です。

つまり請負も委任も準委任も全て委託契約ということになります。

請負契約

民法 第632条

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

と定められています。
また、請負のルールとして以下の5点が挙げられます。

1.指示を受けずに作業を完遂しなければならない
2.仕事完成義務を負う
3.瑕疵担保責任を負う
4.再委託することができる
5.成果物の納品によって対価を得る

ここで注意しなければならないので1の指示を受けずに作業を完遂しなければなりません。

これは、請負という契約では作業の全てを引き受けるということになり、スケジュールの管理や成果物の作成方法など全て請け負った側の責任で決定、遂行しなければなりません。

そのため、請負契約において、顧客からの指示を受けて作業をした場合は、偽装請負として罰せられる事になります。

受注した企業が受ける可能性のある罰則

・労働者派遣法第59条2号違反
無許可派遣事業として「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」

発注企業が受ける可能性のある罰則

・労働者派遣法第34条3項違反
労働契約申込みみなし制度の適用
※発注企業が当該労働者を直雇用しなければならない

準委任契約(SES)

当事者の一方が法律行為以外をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約。

法律行為というのは士業であったり免許が必要である業務のことを指します。

準委任契約(SES)の特徴は以下4点です。

1.瑕疵担保責任を負わない
2.成果物ではなく作業時間による対価
3.善管注意義務を追う
4.再委託が可能

準委任契約では請負契約と異なり時間による対価を得るため、、成果物に対する完成責任は負いません。

しかし、3の善管注意義務というものがあり、これは専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のことを指し、普通であれば行われるはずだった作業が行われなかった場合などには損害賠償が発生するケースもあり得ます。

また、準委任契約においても請負契約同様顧客より指示を受けた場合は上記と同じような罰則が与えられます。

派遣契約

派遣契約は、自社の社員を他人の利益のために、他人の指揮命令を受けて労働させます。

といった契約になります。

派遣契約で最も注意が必要なのは二重派遣です。
他社より派遣契約で受け入れている社員を再度他社と派遣契約を結び派遣することを言います。

二重派遣は、上記で説明した偽装請負よりも重く、事業停止や許認可取消処分も十分にあり得ます。

ただし、現在では二重派遣を行っている企業は少なく注意すべきは偽装請負になるでしょう。

日常で注意すべきところ

まず私がSESとして働く中で自社や顧客対し問題視した点を挙げ、
次に偽装請負になるケースをいくつか紹介します。

・客先に常駐することになった時点で自身の契約形態を知らない
⇒営業から契約形態の説明を受けていない。

・SES契約で常駐している顧客先において、自分一人しかいない
⇒指揮命令を行う自社責任者がいないので、強制的に顧客より指示を受ける構図が完成してしまう。

・同じ常駐先にいる他の企業のSES人員が顧客に対し直接の支持を仰いでいる
⇒直接的に自社に影響はないが、顧客がそれを良しとした場合、自社にも影響が及ぶ可能性がある。

上記の3点は全て偽装請負につながる可能性があります。
現在客先常駐しているエンジニアの方は自身の契約形態と働き方を一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

次にこんなことでも偽装請負になるの?という事例を紹介します。

AさんはX社よりSES契約でY社に客先常駐しています。
Y社にはAさんの他にX社の管理者であるBさんが在籍し、AさんはBさんより作業指示を受けています。

ある日、Aさんは同じフロアで働いている女性がコピー機前で困っているところを助けてあげました。

その女性はCさんと言います。Cさんは、Aさんの優しさに甘え自分の仕事や雑務をAさんにお願いするようになりました。

Aさんは人から頼りにされることを嬉しく思い、Cさんの作業を進んで手助けしました。

ここで問題とされるのは、AさんはCさんからのお願いを仕事ではなく単なる手助けだと思っている点です。

業務委託契約では、契約時に誰がどの企業とどのような仕事を行うかといった契約を行っています。

今回の場合では、Aさんの契約内容にはCさんの手助けはもちろん契約上にはないものですし、SES契約では、顧客より直接指示を受け仕事をこなすということは禁じられています。

「じゃあ、無下にお願いは全て断れと言うことか?」

無下に断るのではなく、一度自社の営業や上司に契約内容を提示してもらい、このような業務を行ってよいか支持を仰ぎましょう。

私も含めて人間ですので、業務中に少しの融通を効かせる場面は多々発生すると思います。

ですが、そこで安易に何でもしすぎるのは自社・顧客の両社にとって後々都合が悪くなってしまう可能性を秘めていることを念頭に置きましょう。

まとめ

ここまで、長々と説明してきましたが、結局なにをやってよくてなにをやってはいけないのか

請負契約

顧客の指示の元に業務を遂行してはいけません。
完成責任や瑕疵担保責任があるため、確実な仕事を行わなければいけません。

しかし、上記以外のことを踏まえれば、極論ですが、2週間納期の成果物を1週間で仕上げ、残りの1週間は遊んでいてもいいわけです(笑)

準委任契約

請負契約と同じく、顧客の支持を受けてはいけません。
しかし完成責任はありません。が、善管注意義務があるため、業務は全うしなければいけません。

また、成果物ではなく時間を対価にもらっているので、成果物が完成したからと言って遊んでもいけません。

派遣契約

他社の管理者を自社の管理者と同じように認識し、普通に業務を行えば大丈夫です。

ただし、働いている現場に自身がどの企業を経由し、どのような契約形態でいるのかは確り把握するようにしましょう。

可能性は低いですが、二重派遣(多重派遣)の可能性も0ではないです。

参考資料

【IT業界にある契約形態】を全部説明します(派遣・委託・請負・準委任・転籍出向・在籍出向)

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