このページはなに?
レッドビーシュリンプやベルベットブルーシュリンプなどの鑑賞エビを飼育するため、私が試行錯誤した内容を記録しました。
日本全国、水道の水質は異なりますので、同じことをやっても結果が違ってきます。清流を源泉にした水道と、ダムの水を浄水処理してマンションの配管経由でやってきた水では性質はかなり異なります。
これらの差は人間にとっては大した違いはありませんが、水生生物、特に水質に敏感なエビにとって、大きな差があります。
絶対確実に水質を安定させるために、専用のRO浄水器
を設置する方もいらっしゃいますが、大掛かりな設備を使わずに水質管理をするために、私が普段行っている水質調整や、知識の備忘録を残します。
※理屈は抜きで、実際にやっていることだけ知りたい方は、__水質管理__の項を参照してください。
内容
- 温度管理
- 硝化サイクル
- 水質管理
- 周辺環境
温度管理
エビは非常に高温に弱い生き物です。
夏場の日本の室内で、エアコンがかかっていないと即死んでしまいます。
意外に低温には強いようです。
レッドビーシュリンプ
生存水温18度〜28度(30度以上で死の危険)
私はエアコンやオイルヒーターで室温を一定に保つことを心がけ、__20度〜24度__で管理しています。
積極的に産卵を促したいときは、26度くらいが良いと聞きますが未検証です。
ヤマトヌマエビ
低温?〜28度(30度以上で死の危険)
強い強いと効いていたヤマトヌマエビですが、私は何度も死なせてしまっています 1。
高温に弱いため、狭いボトルで温度が急変すると、体が赤くなって弱ってしまいます。
ベルベットブルーシュリンプ
低温?〜28度(30度以上で死の危険)
少し飼育に慣れてから飼っているので、安定した温度で飼育しています。
レッドビーよりも多少大きく温度が変動しても生きてますが、高温には耐えられなさそうです。
温度管理まとめ
一般的な熱帯魚用のヒーターは28度ですので、ヒーターで管理するときは注意が必要です。
小さな水槽でヒーターを入れると、温度の上下が激しいため、ボトルサイズではヒーターは入れないほうが良さそうです。
夏場、水温は容易に30度に達します。温めるより冷やすほうが難しいのですが、有効な手段はクーラーが効いた部屋に入れておくか、水面に冷却用のファンを当てる程度しか冷却手段がありません。
氷や冷却材を押し当てて急速に冷やすと、温度変化が大きくてエビにダメージを与えます。
緊急時は緩やかに替水をして、温度を下げますが、やりすぎるとこれもエビにダメージがあります。
エアレーションを入れることで気化熱で温度を下げることができますが、周辺の気温より少し下がる程度です。
硝化サイクル
硝化サイクル
水生生物は体内で発生したアンモニアをエラで水中に排出します。
アンモニア
は猛毒ですが、硝化細菌によって亜硝酸
に変化します。亜硝酸
も毒性が強いのですが、バクテリアが定着した水槽ではすぐに分解され硝酸
に変化します。
アンモニア: NH3
亜硝酸イオン:NO2-
硝酸イオン:NO3-
アンモニアは猛毒ですが、水中では無害なアンモニウムイオンに変化します。
NH3 + H2O ⇔ NH4+ + OH-
アンモニウムイオン: NH4+
温度が低いとアンモニアになる割合が低く、温度が高いとアンモニアになる割合が高くなります。
アンモニウムは硝化細菌によって亜硝酸に変化します。
2NH4+ + 3O2 → 2NO2- + 2H2O + 2H
更に亜硝酸は硝酸に分解されて、順に毒性を下げます。
2NO2- + O2 → 2NO3-
この変化の過程で、アンモニア2に対して、酸素4が消費されます。
亜硝酸や硝酸が多く検出される水槽では、水生生物はダメージを受けます。特にエビは水質に敏感なため、亜硝酸が少し検出されただけで死んでしまいます。
硝酸も毒性は弱いですが、蓄積すると害があります。
また、分解の過程で大量の酸素が消費されるため、エアレーションをかけ、水槽全体に水流が回るようにして、酸素を行き渡らせる必要があります。
エビの排泄物以外にも、食べ残した餌や、枯れた水草、死んでしまったエビなどが分解されて、アンモニアや亜硝酸に変化します。
pH
理科の時間に習った、酸性-中性-アルカリ性のことです。
pHは水素イオン濃度指数のことで、H+が多いと酸性で、OH-が多いとアルカリ性です。
水槽を普通に管理していると、pHは5.5〜8.5くらいの範囲になるとおもいます。
pHは対数ですので、pH6.0とpH7.0ではH+の濃度は10倍の差があります。
エビは弱酸性を好みますのでpH6.5が理想的です。
また、有害なアンモニアを無害のアンモニウムに留めるため、水中のH+が多い状態のほうが望ましいです。
硝化サイクルまとめ
- 水質を弱酸性に維持する
- 水温を低温に維持する
- 十分なエアレーション
- 餌を与えない
アンモニアを無害なアンモニウムにしておくためにも、水質は弱酸性を維持します。
水温を低温で安定させます。急に温度が上昇すると、水中のアンモニウムの含有量が多い場合、一部がアンモニアに変化してエビにダメージを与えます。
アンモニアや亜硝酸の毒性を速やかに下げるため、バクテリアに十分な酸素を供給します。エアレーションやフィルター、モーターで水を十分に循環させましょう。
淡水エビはソイルや水槽についたバクテリアや藻を食べて成長します。特段エサを与えなくても、水質がきれいに保たれていれば成長します。水が一番大事なエサと考えてください。
水質管理
水作り
弱酸性で安定した水質を保つため、エビが好む水質に調整します。
ネットで大繁殖させている方々は、ほとんどRO浄水器を使って純水を用意してから調整を行っています。これは、ネットで公開されている情報を完全再現させることができる確実な方法です。
しかし、RO浄水器を用意し、毎回大量の水を捨て水にして純水をつくる必要があり、素人にはハードルが高い設備です。
ここでは、私が行っている方法を紹介しますが、完全に同じ水質を作ることは不可能なので、それぞれの環境に合わせてアレンジする必要があります。
私の住んでいるところでは水道は深井戸から取水しています。
- TDSが50ppmで安定(水1リットルに50mgの不純物)。かなりきれいな軟水
- KHが高めに出る傾向があり、アルカリ性に偏る傾向がある
- GHがほぼ0
TDS:水中の不純物濃度を示す。単位はppm。
KH:炭酸塩硬度。低すぎるとpHが安定しない。高すぎるとアルカリに傾いたり水草が育たない
GH:総硬度。水に溶けているミネラル分。エビにミネラルは必須
では、調整していきます。
1.ペットボトル(4リットル)を用意
酒屋で安いウィスキーを大容量で売っています。取っ手もついてて扱いやすいので捨てずに水換えで使います。
水道水を入れます。
2.カルキ抜き
バイコムのカルキ抜きを使います。
わずかな量でカルキ抜きができます。
カルキ抜きとは水道水の消毒のために投入された塩素を中和することです。塩素は水生生物のエラや粘膜を痛めるので確実に処理します。
私は4リットルの水道水に1mlのカルキ抜きを投入します。
3. Shrimp Mineral
エビに必須のミネラルを添加します。
このシュリンプミネラルは「4リットルの水に対して1mlでGHを2上げる」と書かれていますが、この分量ではGHがそれほど上がらないため、3ml計って投入します。
4. アラガミルク
「KHを上昇させてpHを安定させる」と書いてありますが、KHもpHもあまり変化しなかった。
とっても濃い液体で、カルシウムがたっぷり添加できる。
1リットルに対して1滴。合計で4滴たらします。
5. BIO CULTURE SMW
これもミネラル添加剤。水が酸性に傾き、KHを妥当な数値で安定させてくれます。
1リットルに対して2滴。合計で8滴たらします。
6. よく混ぜてTDSを測定
ここでTDSメーターでTDSを測定して、数値がいつもと同じかチェックします。
数値が大きくずれていた場合は、なにかを多く入れ過ぎたり、入れ忘れたりして、調整に失敗しています。
水を捨てて調整をやり直します。
私の場合は、調整後140〜150ppm程度になります。もとが50ppmでしたので100ppmほどのミネラル分が含まれます。
調整後の数値は以下の通り。
- pH:6.5
- KH:2〜3
- GH:2〜3
- TDS:140〜150
7. 水槽に投入する
水槽の底床を掃除しながら水を4リットルほど抜き、作った水を入れますが、一気に入れて温度を急変させてしまうとエビにダメージを与えます。
そこで、MULTI CUP(1リットル)を使います。
水槽の角において、少しずつ水槽に水を足せるスグレモノです。
カップに水を足して放置、減ったのに気づいたらまた水を足して・・・を繰り返して時間をかけて投入します。
一気に水を足す場合は、作った水の水温にも気をつける必要がありますが、徐々に水を足す方法であれば水温を合わせなくても大丈夫です。
8. 水換えのタイミング
150ppmの水で換水しますが、水槽Aでは220ppm、水槽Bでは180ppm程度になっています。このあたり、飼育環境や植えている水草や使っているフィルタなどで安定する数値は水槽ごとに異なります。
定期的にTDSメーターで測定し、水槽Aでは250ppmを超える場合、水槽Bでは210ppmを超えるようになったら、水換えを行うことにしています。
9.底床掃除
TDSメーターで水質を測定し、だんだん数値が上がってきたときは、底床にエビのフンが堆積しています。
プロホースを使って底床を掃除します。真っ黒な水がバケツに溜まってびっくりします。
また、硝酸塩や亜硝酸塩が溜まっているときに、水面に顔を近づけて匂いをかぐと、生臭い匂いがします。すぐに底床を掃除します。
ボトル水槽の管理
ボトル水槽は通常の水槽とは別の概念で行います。
水作りの1〜6までと同様にして、水を用意します。
ボトル水槽の底床は溶岩石
ソイルは稚エビを育てるには最適ですが、ソイルの隙間にエビのフンなどが蓄積しやすく、頻繁に掃除する必要があります。
直径20〜30mmの溶岩石を底床にして、隙間だらけの底床にすると、小さなエビやスネールが隙間に潜り込こめるので、ちゃんと掃除してくれます。
ボトルをライトで十分照らし、モスを敷き詰める
ウィローモスを敷いて、硝酸塩まで分解された有害物質を吸ってもらいます。
光量が十分であれば、ウィローモスがすごい早さで育っていきます。
ウィローモスは水中の硝酸塩を吸って大きくなります。
水槽からあふれる前に、適量を刈り取って捨てます。
ボトル管理は足し水が基本
水が蒸発した分だけ水を足します。大掛かりな底床掃除や水換えはしません。
ただ、匂いをかいで悪臭がするようであれば、大きめのスポイトなどで底床の水ごとフンなどを吸って水換えをします。
4リットルのボトル水槽(エアレーションなし)
6匹のメダカと10匹ほどのエビを飼育しています。
ボトルの内壁を掃除させるために、カバクチカノコガイという大型の貝を1匹入れています。
また、水草についてきてしまったスネールが、すこし多めに繁殖しています。
このボトルのTDSは300を超えていますが、環境は安定しています。
毎日、少なめにメダカにエサを与えています。エビはその残りやフン、水草を食べています。
非常に安定していて、1年程度維持しています。
水の循環がまったくないのに、メダカが上層を泳ぎ回るので、水面には油膜が張っていません。
ウィローモスが水槽下部に広がり、メダカが泳ぎにくくなるので、月に一度くらいウィローモスを刈り取ります。
ミクロソリウムを入れておくと数が増えています。
クリプトコリネ・バランサエという大型の水草を入れていたこともありましたが、水面を覆って酸素が取り込めないので撤去しました。
1.5リットルのボトル水槽(エアレーションなし)
選別漏れしたエビを10匹ほど管理しています。
今の所、生体はエビだけです。
エサは与えていませんが、エビは水草やコケをたべて活発に活動しています。
こちらもTDSは300を超えていますが、底床にデトリタスが蓄積していませんので環境は安定しています。
ただ、水の循環がまったくないので、水面には油膜が張っています。
まだ余分な養分が多いため、アマゾンフロッグピットという浮草を入れていますが、水面を覆って酸素が取り込めなくなるので、増えたら捨てています。安定したらアマゾンフロッグピットは全部捨てる予定です。
周辺環境
直射日光を避ける
窓辺からの直射日光は避けた位置に水槽を設置しましょう。
直射日光で水温が上昇する危険がありますし、日光で藻が大量繁殖して景観を損なったり水質の悪化を招きます。
温度の急変を避ける
真夏の日本の家屋は温室です。
その中に水槽をおいておくとエビが生きていける環境ではなくなります。
危険な外壁塗り直し
自宅の外壁の塗り直しを行いましたが、その時エビが暴れ始めたので、エアレーションを止めて隔離しました。
シンナーの匂いがしていました。
有機溶剤はエビに猛毒ですので、外壁塗り直しのときは、水槽のエアレーションを止めて換気扇も止めて、密室に隔離しましょう。
ゴキブリ対策
・・・水槽の水に寄ってくるのですよ・・・
ゴキブリホイホイを要所に配置して寄せ付けないように。
モスで水槽を満たす
硝酸塩の状態まで分解が進むと、これ以上の分解がなかなか進みません。
そこで、植物にそれを養分にしてある程度吸い取ってもらうことにしています。水槽の環境が安定し、エビのエサにもなるのでおすすめです。
ただ、底床掃除を減らすほどにはなりません。
-
ヤマトヌマエビはコケ取り能力に定評があります。
狭い水槽のコケ取りをさせたときに大量の苔を食べてもらいましたが、大量に発生した排泄物がバクテリア分解の許容量を超え、かつ、温度の上昇もあり、亜硝酸が増えすぎて死に至ったと推測しています。 ↩