本記事は、別サイトの自分の記事をお引越ししてきたものです。
情報が古くなっているものも一部ありますが、読み物程度にどうぞ。
そうそう無くならないでしょうね。
恐らくなくなると考える方は、Excelを単なる表計算ソフトウェアだと思っているのかもしれません。でも、OpenOfficeやらLibreOfficeやらKingOfficeやら「無料/格安のExcel」が山ほどあるのにExcelの牙城がびくともしていないのは、Excelが便利な開発環境だからです。
もう一度言います。Excelは開発環境です。
Microsoft OfficeのアプリはどれもVBA(Visual Basic for Application)というコンピュータ言語を使用して様々なシステムを構築できます。名前くらいは聞いたことがあると思います。
正直なところ、このVBAはプログラミング言語としてはかなり貧弱な上に仕様も恐ろしく古く(1998年リリースのVB6.0相当)、人気がないどころか長年ボロクソに言われている言語ですが、VBAを使うとC++やGoその他の様々な言語で開発された/した本格的なライブラリを呼び出せます。コマンドプロンプトから外部アプリも実行できます。ソフトウェア的な観点でできることは実質無限です。
例えばExcel1つで、宛先ごとにテンプレートに文言を流し込んで一斉送信する業務用メーラーや、サーバーからデータを取得してグラフを表示したりテンプレートに流し込んで印刷しつつサーバーを遠隔操作するスクリプトを生成して実行する自動サーバー遠隔監視システムなども開発できます。…というか作ったことがあります。そもそもExcelは立派なフロントエンド(画面)を持つ一般向けソフトウェアですから、案件によっては開発者が自前でフロントエンドを開発する必要がなくなります。実は今でもExcelを採用すれば工期や費用が抑えられる(ハズの)現場はたくさんあるんですよ。
とはいえもちろん、今ではWebだけで上記のようなシステムを開発できる様々な手法がありますし、ReactやVueなどフロントエンド環境もかなり良くなってきました (今の私はこちらが本業です) が、Excelはたった十数年前までシステムのフロントエンドとして真っ先に候補に上がるソフトウェアの1つでした。ですから今でもExcelが主体の「現役」システムは非常に多く、そういうシステムは丸ごとWebに乗り換えるより、現状維持で機能追加しながらメンテナンスする方が費用対効果がずっと高いのです。
またExcelは使い慣れている人がとても多いソフトウェアなので、Excelフロントエンドを強く好むユーザーやクライアントも多くいます。使い慣れたシステムがExcel主体というユーザーだけに限らず、単純に利用者としての心理的ハードルが低いのも喜ばれる大きな理由でしょう。どんなに最先端の技術を使って良くできたシステムを作っても、使う人間が「使いやすい」と感じなければただのクズですから。
まぁ長い目で見れば、相対的にExcelの重要性は下がっていくかもしれません。正直なところ絶対にExcelでなければ開発できないものはありませんし、Excel自体にも費用がかかります。とはいえローカルデータベースの代名詞だったAccessも、実は企業向けの提供は今もひっそりと続いています。あれだけ大々的に廃止を宣言したにも関わらず、あのMicrosoftに方針を転換させるほどの巨大な需要が存在していたということです。オンラインソフトウェアの分野で一歩先を行くのはGoogleですが、そのうち過去のExcel資産が何の疑問もなくブラウザ上で動く時代が来るかもしれませんね。
ということで、Excelはそれ自体が高レベルなローコード開発環境なので、開発屋としては今でも無視できない存在の1つなんですよ。
(追記) ちなみにMicrosoftはVBAの後継にPythonを検討していました。現に一部の機能が使用可能になっていますが、その後進展がないためVBAの代替にはなっていません。まだしばらくVBAは現役のままになりそうです。