Pythonは長年「おしゃれでステキな言語」をひたすら目指し続けてきた珍しいコンピューター言語です。(英語でelegant)
Pythonはコンピュータ言語の中でも特に英語などの自然言語に近く、シンプルで読みやすいため、教育機関でC系言語を学ぶことが多い本職のプログラマーより、AIを研究する科学者やアナリストなど、業務上プログラムを書く比較的ライトなプログラマーに好まれる傾向がありました。とはいえ、本職のプログラマーからも支持を得られなければ言語はすぐに消えていきます。Pythonがすでに30年以上の歴史を刻んできたということは、それだけのファンを獲得し維持してきた証拠です。
Pythonは実用主義の多くの言語(多くはCやshellに似ている)とは対照的に、長年「コードの見た目とシンプルさ」に重点を置いて人気を維持してきました。ですからPythonは何よりもまず、「Cのカタにハマった世界に風穴を開けた先駆的なファッションリーダー」なんですよ。
ですから回答としては、「なぜ使うかって?Pythonが好きだからさ!」になるでしょうね。
Python「カワイイは正義!」(画像はBing Image Creatorで生成)
なお、速度が二の次にできる理由は他にもあって、実は仮想サーバーやクラウドサービスが浸透した現代のWebサイトの開発では、言語そのものの処理速度がサーバー運用コストに大きな影響を与えることは滅多にありません。(爆速で有名なNodeのシェアは現在2%程度です) ですからほとんどの現場では、社内のプログラマーが使い慣れた言語を使う方が費用対効果は高いのです。実際人気サービスになったら、それこそUberがやったように丸ごとNodeで作り直せばいいのですよ。Goもいいですね。その頃にはいくらでも札束で殴れます。
さらにもう一つ、Pythonが支持される理由は、「超高速のC/C++製ライブラリが充実しているから」です。
PythonにはC++でPython用ライブラリを開発するためのツールが公式で提供されています。つまり、そもそもPythonの公式が「速度が足りない時はC++を使ってね」というスタンスなんですよね。
Pythonには、Python向けですらない一般のC/C++製ライブラリを読み込むためのブリッジライブラリも存在します。さらに、Pythonに近い文法でC++ライブラリを開発できる「Cython」というトランスパイル言語まであります。ちなみに、AI開発に欠かせない超有名ライブラリの「NumPy」はCython製で、ちゃんと実用的な言語ですよ。
こういう他の言語の恩恵も最大限生かすPython独自の文化(グルー言語)は、Pythonの安定した成長とシェアに大きく貢献しています。
とはいえ 一般的なWebサイトの開発でC/C++の助けが必要になることは滅多にありません。 いくらPythonが同じスクリプト言語のPHPやRubyより遅いといっても、人間が目で見て分かるほどの差はないからです。
ということで、おしゃれでステキな見た目を備えつつ、実はC/C++というレーシングカーまで乗りこなすPythonの魅力が少しでも伝われば嬉しいです。言語はあくまで好みなので、色々使ってみると視野も広がって楽しめますよ。
なおPythonとは正反対、Cの申し子で実用主義の塊みたいなPHPは、世界中のWebサイトで今でも75%のシェアを保っています(2024年末)。
ここ数年のAI人気でPythonは言語としてのトップシェアを獲得しましたが(2位に転落したのはJavaScript)、分野ごとのシェアはまた別の話ですね。