ランニングしながらAudibleで聴いた本の感想です。
本のまとめというより、自分が心に残ったことを3つだけ書いてます。
とりあえず思ったことをメモするのが大切と思い、なるべく30分以内で書き上げています。
が、この本は凄く勉強になったので、自分用に長々とメモしています。
聴いた本
行動経済学の使い方 (岩波新書)
大竹 文雄 (著)
心に残ったこと
行動経済学という学問
行動経済学という学問を私は初めて知りました。
「人間は合理的に意思決定する」前提で成り立っていたのが古典的経済学ですが、実際の人間は不合理で、義理人情を重んじたり、ギャンブルに出たりすることがあります。
このような人間の不合理な意思決定の傾向(あるある)をまとめたのが行動経済学です。
この「あるある」を知っておくことで、他人との交渉の場面や、自分を客観視したい場面などで役立つと感じました。
現在バイアス
人間の「将来のことより目の前の事柄を過大に評価してしまう」という特性のことです。
よくある例が「ダイエットしているのに目の前の美味しいものを食べてしまう」「1年後にもらえる110万と、今すぐもらえる100万の二択で、後者を選んでしまう」などがあります。
個人的には「今すぐ解決できそうな仕事に取り組んで、将来的な仕事を放置してしまう」ことがあるので、まさに現在バイアスだなと思いました。
現在バイアスに囚われると、場当たり的な対処で中長期的な目線が欠けてしまい、将来得られる利益が犠牲になってしまうことがあります。
仕事などでも、とりあえずの止血策、Workaroundが高く評価されて、長期的な恒久対処がないがしろにされる雰囲気が少なくないと思います。
人間の傾向なので仕方ないのですが、特性を知っておくことで客観視できると良いのかなと思いました。
ナッジ(スラッジ)
「行動経済学の知見から、良い選択を自発的に取れるように後押しすること」です。「軽くつつく」という意味の英語です。
例えば、コンビニなどで、レジ待機列に足跡のマークがあると思います。足跡のマークは、「ここに並んでください」と言わずとも「ここを先頭に、この程度の感覚で並んでください」と直感的に伝えています。
無意識に、人間の本能でより良い行動を取ってもらう仕掛け全般をナッジと呼びます。
具体的な事例として「デフォルト」があります。
デフォルトは、通販サイトの「メールマガジンを購読する」に最初からチェックマークが入っているイメージです。既定の選択肢を示すことで、人間の行動を後押ししています。
(ちなみに、通販サイトのメールマガジンのように、悪い行動への後押し=ナッジの悪用を「スラッジ」と呼びます)
ナッジの設計では「EAST」が重要とのことでした。
EASTはEasy, Attractive, Social, Timelyの4つで、これらを満たすようにすると人々の行動を後押しできます。
仕事上でも、「相手にやってほしいことはイイネのリアクションをする」「何らか対応してほしいときは、なるべく手順を少なくするよう設計する」「イイネだけで承認できる文章のチャットを送る」などがあると思います。
その他用語
この本は3つにまとめるには勿体ないくらい学びがあったため、その他の行動経済学用語・事例を以下にまとめます。
なお、相当雑に書いているので間違っている可能性があります。
プロスペクト理論
人間は、1万円得をしたときの嬉しさと、1万円損をしたときの悲しさでは、後者の方が2倍以上大きいそうです。このような非線形性のある関数を価値観数といいます。
そのため、「得をする行動」より「損を避ける行動」を選びがちになります。これを損失回避と呼びます。
また、価値を絶対的でなく相対的に判断するという傾向があります。例えば、ある商品を最初から18万円で売っている店と、元値が20万円で18万円に値引きしている店だと、後者のほうが「お得感」があります。これを参照点依存性といいます。アンカリング効果に近いものがあります。
保有効果
一度保有したものを、実際の価値より高く見積もることです。ボロボロのもので、メルカリで100円つかなそうなものでも、その人にとっては価値があったりします。学術用語ではないですが「思い出補正」のイメージです。
時間割引
遠くの利益は小さく見え、近くの利益は大きく見えることです。「目の前の門松が、遠くの木より大きく見える」という例えが使われます。
現在バイアスに似ています。
サンクコスト効果
サンクコストとは埋没費用、つまり、もう取り戻せないボツになった金額のことをいいます。この埋没費用のことを惜しんで、なかなか物事をやめられない事象を「サンクコスト効果」と呼びます。
例えば、ギャンブルで「ここまで注ぎ込んだからなかなかやめられない」という事象や、企業でも「新規事業のために費用を投資してきたので、今更諦められない」ということがあります。
所得変動と認知能力
かなり元も子もないですが、所得が低い人は目先のことに目線が行ってしまうので、中長期的な考えができず、結果的に認知能力が下がるそうです。
選択肢過剰
選択肢が多いと選べなくなる、という人間の性質です。
これを逆に使い、「松竹梅」を準備しておくのはビジネスの常套手段です。
平均への回帰
統計学では平均値に回帰していくことを指しますが、行動経済学では「平均に行くだろう」と思う人間の特性を指します。
たとえば、コイントスで9回連続オモテが出たら、(次はウラが出るだろう)と思ってしまいます。しかし、実際は次にウラが出る確率は、これまでと同じく1/2です
代表性ヒューリスティック
ヒューリスティックは人間が経験則などから直感的に意思決定をすることを示します。
代表性ヒューリスティックは、人間が物事を判断するとき、「代表的なもの」に引っ張られて、ステレオタイプなバイアスをかけてしまう傾向があることを指します。
たとえば、「警官のような制服」を着ている警備員は、「犯罪はしないだろう」「治安を良くする行動をしそう」と思い込んだりします。
プロジェクションバイアス
自分の現在の感覚を対象に押し付けて(投影して)物事を判断してしまうバイアスのことです。
例えば、昼食後に夕食の買い物に行くと、今はお腹がいっぱいなので、食事を買う量を抑えたりすることがあります。現在の「お腹がいっぱい」という状況を、夕食時にも継続しているとバイアスがかかった状態で買い物してしまいます。
デフォルト
「既定」の意味で、相手に取ってほしい行動を初期状態にしておくことです。
コミットメント
約束することです。人間は一貫性を保ちたいという法則があるため、一度誰かと約束したことは守りたい傾向があります。
たとえば、ただダイエットするのと、SNS上で「ダイエットする」と宣言してダイエットするのでは、後者のほうが取り組む確率が高いはずです。
タクシー労働者の労働供給
古典的な経済学では、タクシーの賃金が上がるとき、運転手はより働くと考えられていました。
しかし、ニューヨークのタクシー運転手を調べたところ、「一定の収入(目標所得)になったら仕事を切り上げる」運転手が多かったようです。賃金が上がると、労働時間が短くなる、という結果でした。
最近の研究では、目標所得で切り上げる人もいるし、そうでない人もいる。ベテランは後者(収入が高いときに多く働く)の傾向が高い、ということが分かっています。
ピア効果
周囲の人の影響で、能力や行動が変化することです。
スーパーのレジ打ち係に関する研究では、生産性の高い人から見られているとき、同僚の生産性が向上したそうです。
なお、ただ、生産性の高い人の背中が見えているだけのときは、生産性は変化しなかったそうです。
能力は「正のピア効果」と「負のピア効果」があります。
周囲とのレベル差が小さいときはピア効果がプラスに働き、差が大きいとピア効果がマイナスに働くそうです。
賃金硬直性
古典的経済学では賃金は需要に応じて変化する、とされますが、実際は賃金は変わりにくい、という性質のことです。
特に、不景気のときに賃金が下がりにくい会社では、景気が良くなっても賃金が上がりにくいらしいです。
贈与交換
贈与は「ものを与えること」ですが、モノの受け渡し以上に送り手・受け手の社会的な関係を構築しがちになる、という傾向のことです。
アルバイトで、例えば会社から従業員に贈り物をすると、従業員のエンゲージメントが高まったからか、生産性が向上したという研究があるようです。
「贈与論」という本もあるようです。
互恵性
好意的な行動には、好意的な行動で返す、という人間の性質です。
古典的経済学では、人間は常に合理的に行動する、とされてきましたが、実際の人間は「他者の行動」に大きく左右されます。
ハロー効果
ある対象の評価をするとき、目立つ情報に引っ張られて評価する傾向がある、というものです。
例えば、清潔感のあるサラリーマンは「仕事ができそう」という印象を持ちますが、実際にそうであるかは不明です。
なおハローは後光のことです。Helloではありません。