今年もde:codeに参加し、2日目の最後に澤さんのセッションを聞いてきましたので、まとめておこうと思います。
澤さんのセッションではプログラミングとか技術系の要素はほとんどなく、エンジニアとしてこれからどうしていくのか、自分はどうありたいと思っているのかという考え方・マインドセットの話です。
超満員
多分decodeのセッションで一番多くの人が集まったセッションだったんじゃないかなと思います。しかもホールに入りきれずサテライト席まであったようで、キーノートと同じ規模でやってもいいんじゃないかと個人的に思いました。
では、内容をまとめていきます。
子供のころになりたかったものは何か?
こんな問いから始まりました。
各自自分のことを振り返ってツイートしましょうということになったのですが、これが自分のキャリアを考えるうえで重要なキーワードとなるようです。さらに「なんでそれになりたかったのか?」ということを考えてみてくださいとも。
ちなみに澤さんは運動会のリレーの選手になりたかったらしいです。
社会人になるときにロールモデルはいたか?
自分の身近な人、就活でお世話になった人、有名人誰でもいいので「こんな人になりたい」と思った人はいたか?なんでそう思ったのか?
これも自分のキャリアを考えるヒントになるらしいです。
ちなみに澤さんは007に登場するエンジニアQに憧れていたそうです。
前の俳優を知らないのですが、この方ですかね?(間違っていたらごめんなさい)
澤さんのエンジニア時代
澤さんはQに憧れてエンジニアになったものの、プログラミング未経験だったこともありいきなり挫折を味わったようです。
当時は自由にアクセスできるネット環境なんてないので、今の時代の未経験者がエンジニアになるより相当きつかったはず…
これは ハーマンモデルという脳の特性を見るもので、利き脳(クセ)や得意不得意などがわかる診断です。これによると澤さんはエンジニアに必要な要素が弱く、そもそもエンジニア向きではなかったことが分かったそうです。
わかってしまえばどうということはないのですが、少なくとも当時はそれを知るすべもなく「バカ」で「のろま」なエンジニアだったそうです。
言葉は悪いですが、この「バカ」で「のろま」というのが今回のセッションテーマの核に繋がるようです。
4つの区分で見るキャリア
- 縦軸:知識・経験(上に行くほど豊富)
- 横軸:スピード(右に行くほど早い)
この2つの軸でキャリアを4象限に分類したものが上の写真です。
これが全てと言うわけではなく、キャリアを考える1つの切り口です。
ここで重要なのは主語が「あなたは(私は)」ではないことです。
ここでの主語は「今ここで仕事をしている状態は」です。
どんな人でも「選んだ仕事」や「置かれた状況」によって4つのうちのどこかにプロットされます。
例えば澤さんが次の状況に置かれた場合のイメージです。
- エンジニアとしての澤さん:「愚かで遅い」
- 登壇を禁止された澤さん:「賢いけど遅い」(プレゼンの経験はあるので「俺だったら…」とかいう嫌なおっさんになってしまう)
- パワポ職人の澤さん:「早いけど愚か」(パワポ作成タスクしかやってはいけない状況だと習熟度は高まるが経験は積めない)
- プレゼンターとしての澤さん:「賢くて速い」
この考え方はキャリアを考えるうえで非常に重要で、選べば誰でも「賢く早い」の位置に行けるということ。
キャリアで悩む方はたいてい主語を自分にしてしまって苦しむパターンが多いようでそうならないように注意してくださいとも話されてました。
これを組織から見た場合
- 「愚かで遅い」という位置にいる人が増える: 組織を停滞させる
- 「早いけど愚か」という位置にいる人が増える:変化への対応に弱くなる
- 「賢いけど遅い」という位置にいる人が増える:組織の成長を著しく阻害する
左下は当然として、左上はなまじ知識や経験がある人がいるためモノを言えないようになり、右下はタスクワークなのでプロセスやツールが変わったらリセットされるリスクがある。なので特に経営者やマネジメント層は「社員を左下に追いやってないか」「右上にいく努力を怠っていないか」ということを意識する必要があるようです。
では右上はなにか?
組織を引っ張っていく上昇気流が生まれるようです。
ここに位置する人が増えれば増えるほどその人たちが「ロールモデル」になっていくということでした。
組織はそういった人をどうやったら増やしていけるのかを考えることが大事になってくるし、自分がロールモデルになるにはどうすればよいのかを考えていくことが大事になってくるようです。それと同時に周りに与える影響について言語化する必要があり、これを怠るといつの間にか右下や左上にいたりするので注意が必要だそうです。
プロットされる位置は必ず変わることができるので、自分が輝ける場所を見つけましょうということなのですが、ではどうやってそれを見つけるのか?
自分はどうありたいのかを考える
自分がどうありたいのかということを掘り起こして言語化していくことが大事。
そのためには自分を知ればよいわけですが、自分の中身というのは意外とわかっていないことが多く、なかなか言語化できていないことが多いようです。言語化って日ごろから意識していないと本当に難しいです。
明日からなれる「愚かで遅い」人になる方法
ちなみに、愚かで遅い人間になるには寝不足になれば良いとのこと。
誰もがパフォーマンスを上げるために今すぐできる改善が「睡眠」であり、この睡眠を改善しない限り今日の話は無駄になってしまうようです。これは何時間寝るという話ではなく、自分にとって快適な睡眠を知ることが重要とのことです。
自分を知る2つのメソッド
自分を知るためには何より行動が大事だということで、2つのやり方が紹介されました。
レジュメを書こう
日本語でいうと履歴書や職務経歴書ですね。私は7年前に就活で履歴書を書いたっきり全く書いてません。次に書くのは転職するときかなと思ってましたが、転職するしないにかかわらず全員書きなさいと言われました。
レジュメを書くことで、自分にどういう経験値があるのか、人に言えることは何なのかということが手っ取り早く言語化できるそうです。なんとなくわかってるでは表現できないのでダメなのだそうです。
レジュメを書く場所としてはLinkedinがお勧めらしいです。日本語で書いて良くて、ビジネスパーソンしかいないSNSなので自分の実績をどんどんアップロードしてドヤることが大事なようです。
私はLinkedinは転職する人が使うというイメージがあったのですが、この感覚は日本人特有のものらしいです。
日本はビジネス上の繋がりであってもfacebookで繋がることが多いのですが、海外ではプライベートはfacebook、ビジネスはLinkedinと使い分けるのがスタンダードということでした。
リクルーターと会おう
これも転職するかどうかは別として転職フェアなど会う機会はいくらでもあるのでぜひ会ってみましょうという話です。リクルーターに限らず外部の仕事を扱っている人が対象で、試しに会ってみるだけでもたくさんの学びをもらえるようです。
IT業界は特に人材の移動が多いので、聞く価値のある情報がたまっているとのことでした。
この「レジュメを書く」と「リクルーターに会う」というのは次のようなイメージで、これをやることで健康になれる(魅力ある人材になれる)ということでした。
- レジュメ作成=問診表を書く
- リクルーターに会う=健康診断を受ける
やめることを決める
まずキャリアを考えるうえではやめることを決める。
これは今すぐ会社をやめることではなく、1週間や1日の自分の作業の中で「この仕事はいらない」とか「このミーティングはいらない」と思ったものを全部やめましょうという話です。試しにやめてみて、それによって起きる変化を見てみましょうということで、一言もしゃべらない会議とか、自分がやる必要がないタスクなどが対象です。
時間というのは増やすことも戻すこともできず、皆一生は一度きり。ということは余計ななことに時間を割いている余裕はないはずなので、余計だと思ったことはやめましょうということのようです。
澤さんの場合、チームや定例のミーティングを全部やめたそうです。驚くことに問題は起きるどころか情報のやり取りの方法を絞ったおかげで純度が上がってコミュニケーションの質が上がったそうです。
こんなふうにやめることを決めると時間が浮くので、浮いた時間で自分と対話するんです。この時「自分がどうありたいか」を自分に問いかける時間として使うということでした。
澤さんの場合はヒーローでありたいと思ったときにロールモデルとしてQに行き着いた。そうしてエンジニアになったもののポンコツのエンジニアでしたが、3年後にWindows95とともにインターネットの時代がきて、みんな初心者に戻ったそうです。
そこでパソコンを買って必死に覚えて、分からない人に分かりやすく説明をし続けた結果、今の商売に行きついたということでした。
これから先、こういったゲームチェンジ(技術的な転換点)は何度も来るし、もうすで何回か来ました。
例えば最近だとAI時代ですね。少し前までAIというのは一部の研究者たちだけがやってたものだったのにみんなが使うような時代になりました。
このときみんなAIの初心者に戻ったんだという話を聞いて確かにその通りだなと思いました。
HoloLensもそうですね。MRの世界ってまだ数年の歴史ですが、これは世界を変えると思って私も購入しました。次はHoloLens2が欲しいです。
テクノロジーの世界はこういったゲームチェンジが頻繁に起きていて、そのゲームチェンジの時に、ありたい自分というのをイメージできていると「これだ!」というように気づくことができる可能性があるわけです。
だから皆さんもやりましょう。いつでも初めて大丈夫。だから今日からやりましょうということでした。
人は幸せになるために生まれてきた
人はなんのために生まれてきたのか?幸せになるため。これに尽きます。
これはすごく大事なことなんですが、やらなきゃいけないとか、仕事だからとかでついつい忘れてしまいがちなんです。
これを忘れたら何のために生きてるのかわからなくなるということですが、確かに日々仕事をしている中ではまったく意識しないですね。
ついつい忘れがちなので、ぜひお覚えて帰ってほしい。思い出して帰ってほしいと話されてました。
そして慶大の前野教授という方の紹介がありました。もともとエンジニアでロボットを研究していたが、それを突き詰めたら幸福学に行き着いたという方です。
人が幸せになるにはこの4つの因子があるそうです。
- やってみよう
- ありがとう
- なんとかなる
- あなたらしく(生きる)
今回のこのセッションはリアルタイムで聞いていたんですが、実はこの辺の話の時に私は絶賛遭難中でした。
と言うのも、今まで「自分がどうありたいのか」を考えましょう、それを見つけるためにはこうしましょうという話だったのに、いきなり「人は幸せになるために生まれてきた」とかいう哲学的な雰囲気のある話になったんですね。その繋がりが全く理解できなくて置いてけぼり食らってました。
ですが、こうして振り返りながら書いていてようやく理解出来て納得できました。この話は自分がどうありたいかという今日の話の先にあるものというか終着点のような感じで、これから仕事をしていく中で「自分にとっての幸せとは何か?」を考えた時、「ありたい自分である」ことが幸せのはずなんですね。では、「ありたい自分であるためにはどうすればいいのか?」その答えは今回のセッションの中にヒントがあるんですね。だからこの話に行きつくのかと腑に落ちました。
このde:codeに参加した方はテクノロジーの世界に生きている人たちなので、最後はテクノロジーの力を使ってたくさんの人を(自分自身も含めて)ハッピーにしましょうという形で締めくくられました。