株式会社 日立製作所 茂木 昂士
日立グループ OSS Advent Calendar 2018 25 日目の記事となります。今回は今月開催された APIDays Paris 2018 に参加してきたので、その内容を紹介していきたいと思います。
APIDays とは
APIDays (https://www.apidays.co/)とは API に関する世界最大のコミュニティイベントで、これまでに 35 回、11 か国で開催されてきました。毎回、世界から数千もの人が集まって、API に関する技術や API を活用したビジネスなどについての講演や、参加者同士での意見交換が行われています。
今回開催された APIDays Paris 2018 は 12/11-12 の 2 日間、フランスのパリで開催されました。今回のイベントには約 3000 人もの参加者がいて、世界的な API 業界に対する関心の高まりが表れていました。
また、今回のイベントではこのアドベントカレンダーにも参加している中村さん(@yuichi-nakamura)も、「Implementing security requirements for banking API system using Open Source Software (OSS) 」というタイトルで、3scale と Keycloak へのコミュニティ貢献に関する講演を行いました。(講演資料はこちら)
今回は会場の様子や、講演を聞いていた中で気になったキーワードを紹介したいと思います。
会場の様子
今回のイベントは、 Beffroi de Montrouge という現地のカルチャーセンターを会場として開催されました。初日の開場時には長蛇の列ができていて、改めて API という分野に関する注目度の高さを感じました。
会場入り口付近では、本イベントのスポンサーが紹介されていて、Microsoft や IBM といった企業もスポンサーとして紹介されていました。
会場では、API に関係するサービス・ソフトウェアが分野ごとに分類された API Landscape が展示されていました。(元の画像はhttps://www.apidays.co/api-landscapeからダウンロードできます。)
イベント開催前の APIDays のサイトでは、 2016 年版の Landscape が公開されていましたが、それと比べると掲載されているサービス・ソフトウェアが 4 倍近くまで増えていました。このことからも API という分野がここ数年でどれだけ注目されているかが分かります。
また、本イベントは「人との繋がり」を重要視しており、至る所で意見交換が行われていました。主なベンダの人々が集結している印象です。API に関わる OSS についても、主要な人物が顔をそろえていました。
主要なキーワード
今回のイベントでは API に関する技術よりも、API をどのように活用してビジネスにするか、という観点の講演が多かったように思います。「どのように API を公開するか」ということよりも「公開した API をどのように活用していくのか」という段階に移ってきている印象でした。(参加者の中には「技術的な話が少なくて少し残念だった」と言っている方も何人かいましたが…)
ここからは、講演を聞いていて私が気になったキーワードをいくつか紹介していきます。
API Product Management, API Lifecycle Management
これまで、API はサービスやソフトウェアの内の 1 機能として捉えられてきましたが、近年では「API は一つの製品である」と考えられるようになってきています。そのため API においても一般的な製品と同様に、エコシステムやライフサイクルを管理していくことが重要となってきます。上で挙げた The API Landscape でも、API Lifecycle Platform というくくりで多くのサービスが登場してきています。
また API では User Experience に対する言葉として Developer Experience というものがあります。これは、API とは開発者に対する Interface であり、開発者の体験を高める(記述が分かりやすい、簡単に始められる、ドキュメントが充実しているなど)ことが、API を利用してもらううえで重要であるという考え方です。こういった考え方も API ビジネスの中では重要になってきています。
Open Banking
前回の APIDays では、欧州の銀行での API が脚光を浴びていましたが、今年は日本を含むアジア太平洋地域での銀行 API の状況の紹介がありました。アジアでも銀行 API が盛り上がっており、APIDays も4月にシンガポールにて Open Banking をテーマに開催するそうです。また今回は銀行だけでなく、農業分野、社会インフラ分野での政府やテレコムキャリア主導の動きも紹介されており、API が幅広い業種に広がっていることが伺えました。
GraphQL
これまでは API といえば REST が主流でしたが、最近では GraphQL が注目を浴びているようです。今回のイベントでは QraphQL だけを対象としたトラックがあり、各セッションとも多くの人が聞きに来ていました。API のビジネスが拡大していくと、API エンドポイントの数が増えて管理が煩雑になってくるが、GraphQL なら単一のエンドポイントで提供できるという側面があるようです。GraphQL 自体は数年前から注目されていましたが、引き続き注目していきたいと思います。
他にも色々な講演がありましたが、今回はここまでにしたいと思います。
さいごに
今回のアドベントカレンダーは新しい試みで色々と苦労しましたが、何とか 25 日間完走することができました。今回の企画に賛同して記事を書いてくれた皆さん、そして見てくれた皆さん、本当にありがとうございました。
これからも皆さんの役に立てるよう、Qiita での情報発信は行っていきたいと思っています。また、来年以降もアドベントカレンダーを続けていけるようにしたいとも思っています。今後ともよろしくお願いいたします。