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はじめに

この記事では代数学の群を紹介します。

前回の復習

前回は直積集合と二項演算を紹介しました。

これから紹介する群は直積集合と二項演算をペアで取り扱います。つまり、演算の対象と演算をペアで取り扱います。

群とは、次の条件すべてを満たす演算の対象(直積集合)と演算(二項演算)のペアです。

  • 結合律
  • 単位元の存在
  • 逆元の存在

群かどうかは、条件を満たすかどうかに依ります。そのため、どういう場合に条件を満たすかに関心があります。

順番にこれらの条件を見てみましょう。

結合律

結合律を満たす場合とは、演算による結果が演算する順番に依存しない場合です。

まずは、演算による結果が演算する順番に依存する場合を見てみましょう。2 + 3 * 5で確認します。

(2 + 3) * 5 == 2 + (3 * 5)

左辺は25、右辺は17です。演算による結果が演算する順番に依存します。つまり、結合律を満たしません。

次に、演算による結果が演算する順番に依存しない場合を見てみましょう。2 * 3 * 5で確認します。

(2 * 3) * 5 == 2 * (3 * 5)

左辺は30、右辺は30です。演算による結果が演算する順番に依存しません。つまり、結合律を満たします。

念のため、もう一つ例を見てみましょう。5 % 3 % 2で確認します。%はmodです。つまり、剰余を返す演算です。

(5 % 3) % 2 == 5 % (3 % 2)

左辺は0、左辺は0です。演算による結果が演算する順番に依存しません。つまり、結合律を満たします。

ここでは特定の値でのみ確認しましたが、結合律を満たすことを証明する場合には、すべての要素において結合律を満たすことを示す必要があります。しかし、ここではその証明を省略します。(足し算や掛け算の性質、もしくは、足し算や掛け算の定義によって結合律が約束されていると私は思います。つまり、結合律の証明は演算の性質、もしくは、定義に依存すると私は思います。)

単位元の存在

演算(二項演算)は演算の対象(直積集合)の要素を変換するモノでした。

ここで紹介する単位元は特別な要素で、この単位元とペアを組むと変換されなくなります。

単位元とペアを組むと変換されなくなるとはどういうことか、単位元とはどのようなモノか見てみましょう。

前提として、集合Gの単位元をeとし、集合Gの任意の要素をaとします。

そのような場合、この要素のペアは集合Gの直積集合の要素 (e, a) または (a, e) となります。

そして、この要素 (e, a) または (a, e) を集合Gの二項演算で変換すると a になります。

ここで気を付けて欲しいところは (e, a) を変換して a になることと、(a, e) を変換して a になることが別物だというところです。つまり、順番も大切だということです。そして、変換後は集合Gの直積集合の要素ではなく、集合Gの要素になるというところも大切です。

ここまでが一般的な話です。もう少し具体的な話を見てみましょう。自然数の直積集合とその二項演算が掛け算である場合で単位元を確認しましょう。

単位元を探すことは次の式を満たす自然数を探すことと同じです。e * 5 = 5または5 * e = 5を満たすeです。簡単ですよね。この式を満たす自然数は1です。

5の代わりに自然数の任意の要素を用いたとしても、この式を満たす自然数は1です。

逆元の存在

ここで紹介する逆元も特別な要素で、この逆元とペアを組むと単位元に変換されることになります。

逆元とはどのようなモノか見てみましょう。

前提として、集合Gの任意の要素をaとし、aの逆元をbとします。

そのような場合、この要素のペアは集合Gの直積集合の要素 (a, b) または (b, a) となります。

そして、この要素 (a, b) または (b, a) を集合Gの二項演算で変換すると単位元になります。

ここでも気をつけて欲しいところは順番も大切だというところです。

ここまでが一般的な話です。具体的な話を見てみましょう。有理数の直積集合とその二項演算が掛け算である場合で逆元を確認しましょう。

逆元を探すことは次の式を満たす有理数を探すことと同じです。e * 5 = 1または5 * e = 1を満たすeです。簡単ですよね。この式を満たす有理数は5分の1です。

しかし、簡単なことにこそ注意が必要です。

有理数の要素0には逆元がありません。つまり、e * 0 = 1または0 * e = 1を満たすeがありません。

あとがき

参考書にある群の定義を少し紹介します。

群.txt
結合律   :∀a, b, c ∈G, (a ○b) ○c = a ○(b ○c)
単位元の存在:∃e ∈G, ∀a ∈G, e ○a = a ○e = a
逆元の存在 :∀a ∈G, ∃b ∈G, a ○b = b ○a = e

Gは集合で、a, b, cは集合Gの要素、eは集合Gの単位元、○は集合Gの二項演算です。∀は要素に付け足すことで、任意の要素を意味します。また、∃は要素に付け足すことで、要素が存在することを意味します。

カンマはプログラム言語のセミコロンのような働きがあると私は思います。つまり、宣言の順番を指定する働きがあると私は思います。

単位元の存在の定義を解釈すると、「集合Gの要素eが一つあり、その一つの要素に対して、次の条件を満たす集合Gの任意の要素aがある」というような解釈になります。

同じように、逆元の存在の定義を解釈すると、「集合Gの任意の要素aがあり、その任意の要素(それぞれ)に対して、次の条件を満たす集合Gの要素bが一つある。」というような解釈になります。

厳格な定義です。この記事で私が書いた内容がむなしく感じられるほど厳格な定義です。

単位元と逆元を集合Gの直積集合の要素だと勘違いする可能性がありますが、単位元と逆元は集合Gの要素です。気を付ける必要があります。

このような感じで数学の記事をなるべく簡単な言葉で書いてみようと予定しています。

間違いに気付きましたらコメントなどで教えていただければ幸いです。

参考書

参照URL

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