0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

FinOpsフレームワーク解説 〜第4回〜 ペルソナ(Personas)

Posted at

目次:

今日のテーマは、FinOps構成要素の一つである「ペルソナ」についてです。
  ・ペルソナごとの定義と役割
  ・ペルソナを日本企業によくある部署名に当てはめてみる

スクリーンショット 2025-05-14 16.56.55.png

今日の一枚まとめ:

スクリーンショット 2025-05-14 16.57.48.png

内容:

FinOpsの成功には、各ペルソナ(役割)が抱える課題を理解し、組織としての期待を明確にし、適切なKPI(重要業績評価指標)で進捗と成果を測ることが不可欠です。以下に主要なペルソナごとに解説します。

まずはコアペルソナについてです。

コアペルソナはFinOps活動に必ず関与し、実務の中心となる役割です。組織の規模や体制によっては一人が複数の役割を兼務する場合もあるみたいです。

1. エンジニアリング/開発・運用担当

課題
 • クラウドコストへの意識が低く、コスト最適化が後回しになりがち
 • コスト削減とサービス品質・納期の両立が難しい
 • コスト削減施策の効果や優先順位が分かりづらい
期待
  • コストを意識した設計・運用(例:無駄なリソースの削除、適切なリソース選定)
  • コスト最適化のための継続的な改善提案と実行
  • ビジネス価値に直結するイノベーションの推進
KPI
 • リソース利用効率(例:CPU/メモリ使用率、未使用リソース数)
 • コスト削減額・削減率
 • サービスごとのコストパフォーマンス(コスト/トランザクション等)
 • コスト異常検知への対応速度

2. 財務・経営管理部門

課題
 • クラウドコストの予測・予算化の難しさ
 • 部門横断でのコスト配分や説明責任の不明瞭さ
 • クラウド投資のROI(投資対効果)が見えにくい
期待
 • 正確な予算策定と予実管理
 • コスト配分ルールの標準化と透明性の確保
 • ビジネス部門との連携によるクラウド投資最適化
KPI
 • 予算遵守率(Actual vs. Budget)
 • コスト配分の正確性(タグ付け率、未配分コストの割合)
 • ROIやコスト削減施策の実現度合い

3. ビジネス部門/プロダクトオーナー

課題
 • クラウド投資がどれだけビジネス成果に結びついているか分かりにくい
 • IT/財務部門との目標や優先順位の不一致
 • コスト最適化と市場投入スピードのバランス
期待
 • クラウド活用によるビジネス価値の最大化(新規事業、顧客体験向上など)
 • 投資判断の迅速化とリソースの最適配分
 • 部門間連携による全体最適
KPI
 • クラウド投資に対するビジネス成果(売上、顧客獲得数、LTV等)
 • サービスごとのコスト効率(コスト/売上など)
 • 新サービスの市場投入までのリードタイム

4. FinOpsプラクティショナー/推進役

課題
 • 組織全体の意識改革・文化醸成の難しさ
 • ペルソナ間の連携不足や情報のサイロ化
 • KPIやプロセスの標準化・自動化の推進
期待
 • FinOpsの原則・プロセスの全社展開
 • 継続的なコスト最適化サイクルの構築と改善
 • ペルソナ間の共通言語・目標設定
KPI
 • FinOpsプロセスの成熟度(Crawl/Walk/Runモデルでの自己評価)
 • 自動化率(コスト分析・レポート作成の自動化度合い)
 • 部門横断のKPI達成率

5. 経営層/リーダーシップ

課題
 • クラウド投資の全社的な最適化とガバナンス
 • 事業成長とコスト最適化のバランス
 • 変化への迅速な意思決定
期待
 • クラウド戦略の全社浸透とガバナンス強化
 • ビジネス価値に直結するクラウド投資判断
 • 持続的な成長・競争力強化
KPI
 • 全社クラウドコストの成長率と売上成長率のバランス
 • 戦略KPI(例:新規事業の立ち上げ数、コスト最適化による利益率向上)
 • ガバナンス遵守率

次にアライドペルソナと呼ばれる役割についてです。

アライドペルソナは、直接FinOps活動を推進しないが、資産管理やセキュリティ、ITサービス管理など、FinOpsに関連する技術領域や運用に関わる部門です。コアペルソナと連携し、全体最適化を支援することが求められます。

1. ITサービス管理(ITSM/ITIL)

課題
 • サービス品質や可用性とコスト最適化のバランス
 • 変更管理やインシデント対応がコストに与える影響の把握
期待
  • サービスレベル維持とコスト効率の両立
  • サービス運用データとコストデータの連携による最適化提案
KPI
 • サービスごとのコスト効率(コスト/サービスレベル達成率)
 • 変更管理によるコスト削減額
 • SLA(サービスレベル合意)遵守率

2. IT資産管理(ITAM)

課題
 • クラウドリソースの全体把握と管理の複雑化
 • ライセンスや資産の無駄遣い・非効率利用
期待
 • IT資産の最適配置とコスト削減
 • 資産利用状況の可視化とコンプライアンス遵守
KPI
 • 未使用/非稼働資産の削減数・削減率
 • 資産監査合格率
 • ライセンス利用率

3. IT財務管理(ITFM/TBM)

課題
 • IT・クラウド投資の全体最適化とビジネス価値の可視化
 • 財務データとクラウドコストデータの統合
期待
 • IT投資のROIやTCO(総所有コスト)の明確化
 • クラウド支出の予算化・予測精度向上
KPI
 • IT投資ROI(投資対効果)
 • 予算遵守率
 • クラウドコストの予測誤差率

4. サステナビリティ(Sustainability)

課題
 • クラウド利用による環境負荷の把握と削減
 • サステナビリティ指標とコスト指標の両立
期待
 • クラウドリソースの効率的利用によるCO₂排出削減
 • サステナブルなクラウド運用の推進
KPI
 • クラウド由来CO₂排出量
 • サステナブルクラウド利用比率
 • サステナビリティ施策によるコスト削減額

5. セキュリティ(Security)

課題
 • セキュリティ対策強化とコスト最適化の両立
 • セキュリティ施策のコストインパクト把握
期待
 • 必要十分なセキュリティレベルの維持とコスト効率化
 • セキュリティリスク低減とコストバランスの最適化
KPI例
 • セキュリティインシデント発生件数
 • セキュリティ関連コストの最適化率
 • コンプライアンス遵守率

ペルソナを日本企業の部署名に例えると

ここまで書いていて感じたこととしては、現場でやっている身としては聞き馴染みのない名前が多くて、だれのことだかイメージしにくいですよね。
サンプルとしてですが、ここまで出てきた各ペルソナに対して、よく企業の中で見かける部署名を対応させてみました。

ペルソナ 具体例(サンプル)
FinOpsプラクティショナー クラウドコスト最適化マネージャー, FinOpsアナリスト, クラウド運用チームリーダー
エンジニアリング クラウドアーキテクト, システムエンジニア, プラットフォームエンジニア
財務 財務アナリスト, 予算管理担当, 経営企画部(財務担当)
プロダクトオーナー サービス企画担当, プロダクトマネージャー, 事業開発担当
調達(Procurement) クラウドサービス購買担当, ベンダー管理担当, 契約管理担当
リーダーシップ CTO(最高技術責任者), CIO(最高情報責任者), クラウド推進本部長
ITサービス管理(ITSM) ITサービスマネージャー, 運用管理担当, ITサポートデスク責任者
IT資産管理(ITAM) IT資産管理担当, ライセンス管理担当, 情報システム部(資産管理担当)
IT財務管理(ITFM/TBM) IT財務管理担当, ITコスト管理アナリスト, IT予算計画担当
サステナビリティ サステナビリティ推進担当, 環境経営企画担当, CSR推進担当
セキュリティ クラウドセキュリティエンジニア, 情報セキュリティ管理者, セキュリティ運用担当

最後に

どんなプロジェクトでもステークホルダーや関係者という形で、だれに・なにをしてもらうのか、どう言った役割分担で進めることが最適なのかは、必ずトピックになると思います。
特にこのFinOpsという分野においては、お金を扱う領域だからこその関係者の多さがあります。

この関係者の多さが、FinOps最適化が難しいと言われる理由の一つかと思いますが、ここまで書いてきたペルソナに対して適切に役割分担を検討して、責任分解点をしっかり整理していくことで、確実に前に進むはずです。
少しでも参考になればと思います。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?