目次:
・FinOpsとは何か、なぜ今注目されているのか
・クラウドコスト最適化とビジネス価値最大化の重要性
今日の一枚まとめ:
内容:
FinOpsとは何か、なぜ今注目されているのか:
近年、クラウドコンピューティングの急速な普及により、企業のITインフラは大きく変化しています。クラウドは、柔軟性やスピード、イノベーションをもたらし、ビジネスの成長を強力に後押しする存在となりました。
しかし、その一方で 「クラウドコストの管理」 が最大の課題として浮上しています。実際、企業の 82% がクラウド利用における最大の課題を「コスト管理」と回答しており、 クラウド上での浪費コストが全体の28%にも上る という調査結果もあります。
参考:https://thinkit.co.jp/article/22744
クラウドのコストが膨らむ理由はさまざまです。例えば、必要以上のリソース確保や、利用状況の可視化不足、部門ごとのサイロ化による非効率な運用、さらにはマルチクラウド環境での最適化の難しさなどが挙げられます。こうした背景から、多くの企業がクラウド予算の超過や財務状況の悪化に直面し、戦略的な投資やイノベーションの推進力を失うリスクが高まっています。
このような課題を解決するために注目されているのが 「FinOps(フィンオプス)」 です。
FinOpsとは、「企業がクラウド利用を通じて最大のビジネス価値を得るためのクラウド財務管理の概念」であり、 単なるコスト削減や最適化だけでなく、クラウドの活用による収益増加や競争力強化を目指す新しい運用モデル です。
参考:https://optage.co.jp/business/contents/article/20230412.html
FinOpsの特徴は、エンジニア、財務、ビジネス部門など異なる立場のステークホルダーが協力し、データに基づいてクラウド支出を意思決定する点にあります。これにより、コストの可視化や説明責任、継続的な最適化が組織全体で推進され、クラウド投資のビジネス価値を最大化することが可能となります。
クラウド時代においては、従来のオンプレミスとは異なる変動費・従量課金モデル、そして迅速な意思決定が求められるため、FinOpsのような新たなオペレーティングモデルが不可欠です。
しかしながら、何の指針もなくFInOpsを実現しようとすることは非常に難しいものです。そこで生まれたのがFinOpsフレームワークとなります。その中には、 「だれが・なにを・なんのために・どのくらいの頻度で」 などの要素が含まれており、非常に実践的なものとなっています。今後の章では、まさにそのFinOpsフレームワークの具体的な構成や実践方法について詳しく解説していきます。
クラウドコスト最適化とビジネス価値最大化の重要性:
クラウドの導入が進む中で、 単なるコスト削減を目的とした運用から「コスト最適化」と「ビジネス価値最大化」へと企業の視点が大きくシフト しています。従来のオンプレミス環境と異なり、クラウドは従量課金制であるため、リソースの過剰利用や未使用リソースの放置による無駄な支出が発生しやすく、コスト管理の難易度が高まっています。
クラウドコスト最適化の本質は、単に支出を抑えることではありません。コストの可視化や分析、適切なリソース配分を通じて、必要な機能や性能を維持しながら、余剰分を排除することで、IT投資の効率を最大化します。これにより、削減したコストを新たな成長領域やイノベーション投資に再配分することが可能となり、企業の競争力向上や収益増加につながるはずです。
実際、クラウド財務管理(Cloud Financial Management)を組織に組み込んだ企業の多くが、コスト削減だけでなく、利益率や収益の向上といったビジネスへの直接的な貢献を実感しています。調査によれば、クラウド財務管理の実践により、コスト維持に寄与した割合が41%であるのに対し、利益率や収益の向上に寄与した割合はそれぞれ 52%、48% と高い水準を示しています。
参考:https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/aws-cost-optimization-guidebook/
また、コスト最適化の取り組みを継続的に行うことで、クラウドネイティブなアーキテクチャや自動化の推進、俊敏なビジネス対応力の強化といった副次的な効果も得られます。これらは単なる経費削減にとどまらず、企業全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)や持続的な成長を支える重要な要素となっています。
このように、クラウドコスト最適化は 「コストを抑える」から「ビジネス価値を最大化する」 ための戦略的な取り組みへと進化しています。
次章以降では、こうした最適化を実現するためのフレームワークや実践方法について詳しく解説していきます。