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FinOpsフレームワーク解説 〜第3回〜 行動規範(Principals)

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目次:

今日のテーマはFinOps構成要素の一つめの「行動規範(Principal)」についてです。
スクリーンショット 2025-05-14 11.07.48.png

FinOpsにおける順守するべき行動規範を構成する下記要素について説明していきます。
 1. チーム間のコラボレーション
 2. ビジネス価値主導の意思決定
 3. 所有権と説明責任
 4. アクセス可能で正確なデータ
 5. 中央集権的なFinOpsチーム
 6. 変動コストモデルの活用

今日の一枚まとめ:

スクリーンショット 2025-05-14 10.49.40.png

内容:

FinOpsの原則(Principles)詳細解説
各原則について、定義・背景・具体例・注意点の4つの観点から体系的に解説します。
(この観点は特にフレームワークに基づく分解ではありません、個人的に理解に助かりそうだな、という区分けで色々書いてみたものです)

1. チーム間のコラボレーション

  • 定義
     部門横断的な協働体制を構築し、クラウドコスト管理を共同責任として取り組む姿勢。
  • 背景
     クラウド利用では、エンジニアの技術判断と財務部門の予算管理が衝突しやすいため。例えばエンジニアが性能優先でリソースを過剰確保すると、財務部門の予算管理と対立します。
  • 具体例
    • クラウド利用申請フローに「技術審査」と「財務審査」の両ステップを導入
    • 月次レポートを財務部門が作成し、エンジニアチームと共同で分析会議を実施
  • 注意点
    • 部門間の専門用語の違いを解消するための用語集作成が必要
    • 共同責任体制が「責任のなすりつけ合い」にならないようKPIを明確化

2. ビジネス価値主導の意思決定

  • 定義
     クラウド投資の判断基準を技術的利便性からビジネス成果(ROI)に転換すること。

  • 背景
     クラウド支出の大きな部分がビジネス成果に直結しない「ダークコスト」だと言われることがあり、投資対効果の明確化が急務。
     参考記事:https://japan.zdnet.com/article/35177489/
          https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000096580.html

  • 具体例
    • 新規サービス導入時に「期待収益増加額 vs 月間クラウドコスト増加額」をシミュレーション
    • A/Bテストでコストパフォーマンスを比較(例:$500/月増で売上+5% vs $300削減で売上±0%)

  • 注意点
    • 短期的なコスト削減が長期的な技術的負債を生まないようバランスが必要
    • ROI計算の際は間接的な効果(顧客満足度向上など)も定量化する工夫を

3. 所有権と説明責任

  • 定義
     「誰が使うリソースは誰が管理する」という責任体制の構築。
  • 背景
     クラウドリソースに適切なオーナータグが付与されていない現状(AWS調査)があり、コスト配分の不透明さが課題。
     参考記事:https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws-cloud-financial-management/gs-create-and-enforce-your-tagging-strategy-for-more-granular-cost-visibility/
  • 具体例
    • タグ付けポリシーを標準化(例:「部署-プロジェクト-環境」の3層構造)
    • 部門別ダッシュボードでリアルタイムコスト可視化(CloudHealth等のツール活用)
  • 注意点
    • タグ付けルールの強制実施にはクラウドネイティブなポリシー管理ツール(AWS Config等)が有効
    • オーナー不在リソースへの対処フローを事前に定義

4. アクセス可能で正確なデータ

  • 定義
     関係者がリアルタイムに正確なコストデータへアクセスできる環境整備。
  • 背景
     従来の月次レポートでは対応が遅すぎ、クラウドの従量課金特性に対応できない課題。
  • 具体例
    • コスト異常値を検知するとSlack/Teamsへ自動通知(AWS Budgets連携)
    • マルチクラウド対応BIツール(Tableau/Power BI)で統合レポート作成
  • 注意点
    • データ精度確保のため、タグ付け率98%以上を目標に設定(例)
    • 機密情報を含むコストデータのアクセス権限管理を厳格化

5. 中央集権的なFinOpsチーム

  • 定義
     全社的なガバナンスを担う専門チームの設置。
  • 背景
     部門ごとにバラバラな管理手法では、規模の経済や標準化のメリットを活かせないため。
  • 具体例
    • クラウド契約の一括交渉でSavings Plansを30%割引獲得
    • 全社共通のクラウド利用ポリシー策定(例:「開発環境は平日8-20時のみ起動」)
  • 注意点
    • 中央チームが「上から目線」にならないよう、現場との対話チャネルを確保
    • クラウドプロバイダー中立性を保つためマルチクラウド専門家を配置

6. 変動コストモデルの活用

  • 定義
     クラウドの従量課金特性を最大限活用する運用手法。
  • 背景
     オンプレミス時代の固定費思考から脱却し、真のクラウドネイティブなコスト管理が必要。
  • 具体例
    • バッチ処理にスポットインスタンスを採用しコスト70%削減
    • サーバーレスアーキテクチャ(Lambda)でアイドル時間のコストをゼロ化
  • 注意点
    • 急激な価格変動リスクに対応するため、スポットインスタンス利用上限を設定
    • クリティカルなワークロードにはリザーブドインスタンスを併用

まとめ

これらの原則を実践する際は、ツール選定だけでなく「組織文化の変革」が最大の鍵となります。
日本企業においては特にこの組織レベルの変革は非常に重たいタスクになってくるかと思います。実際に私もさまざまなお客様と会話する中で、組織間の隔たりや派閥(!)、また横断組織の難しさを感じるシーンが多々あります。。

ペルソナやそれ以降に出てくる要素をしっかり理解した上で、キーパーソンを抑えることが大事だなと改めて感じています。
したがって、次項では、これらの原則を具体化する主要ペルソナとその役割について解説します。

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