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システム開発者のためのGDPR要件まとめ

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はじめに

GDPR(一般データ保護規則)は、EUにおける個人データの保護を強化するための規則で、2018年5月に施行されました。
この規則は、EU内で事業を行う企業や、EU市民のデータを取り扱う企業に適用されます。

本記事では、GDPRの主要な要件をシステム開発者の視点から、図解を交えて詳しく解説します。

注意: 本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。GDPRに関する最新情報は各自で情報収集し、自己責任で対応してください。


1. データ処理の原則

GDPRでは、個人データの処理に関する7つの基本原則が定められています。

  1. 合法性、公正性、透明性: データ処理は合法で、公正かつデータ主体に対して透明でなければなりません。
  2. 目的限定: 明確かつ正当な目的のためにデータを収集し、その目的に適合する形でのみ処理します。
  3. データの最小化: データ処理の目的に必要な最小限のデータのみを収集します。
  4. 正確性: データは正確であり、不正確な場合は速やかに訂正または削除されなければなりません。
  5. 保存期間の制限: データは、必要な期間を超えて識別可能な形で保存してはなりません。
  6. 完全性と機密性の確保: 適切なセキュリティを維持し、不正な処理や偶発的な損失からデータを保護します。
  7. 説明責任: データ管理者は、これらの原則に対する遵守を証明できる必要があります。

2. データ処理の合法性

個人データを処理するには、以下のいずれかの合法的根拠が必要です。

  • 同意: データ主体から明確で自由意思による同意を得る。

  • 契約の履行: 契約を履行するために必要な場合。

  • 法的義務の遵守: 法律によって義務付けられている場合。

  • 重大な利益の保護: データ主体または他者の重要な利益を保護するため。

  • 公共の利益または公的権限の行使: 公共の利益に関わる業務を遂行するため。

  • 正当な利益の追求: 企業の正当な利益を追求するため(データ主体の権利と利益が優先)。


3. データ主体の権利

GDPRはデータ主体に以下の権利を保障しています。

  • アクセス権: 自身のデータがどのように処理されているかを知る権利。
  • 訂正権: 不正確なデータを訂正する権利。
  • 消去権(忘れられる権利): データの削除を要求する権利。
  • 処理制限権: データ処理を制限する権利。
  • データポータビリティ権: 自身のデータを他のサービスに移行する権利。
  • 異議申立権: データ処理に異議を唱える権利。

4. プライバシー・バイ・デザインとデフォルト

プライバシー・バイ・デザインは、システムの設計段階からプライバシー保護を組み込む考え方で、7つの基本原則があります。

  1. 事前対応・予防的アプローチ: 問題が発生する前にリスクを予測し、対策を講じます。
  2. デフォルトでのプライバシー保護: ユーザーのプライバシーがデフォルト設定で最大限に保護されるようにします。
  3. 設計段階からのプライバシー組み込み: システムの開発プロセス全体でプライバシーを考慮します。
  4. 完全な機能性の確保: プライバシーとシステムの機能性を両立させます。
  5. エンドツーエンドのセキュリティ: データの収集から削除まで、全ての段階でデータを保護します。
  6. 可視性と透明性の確保: データ処理の方法や目的を明確にし、透明性を保ちます。
  7. ユーザープライバシーの尊重: ユーザー中心のアプローチを取り、プライバシーを最優先に考えます。

5. データ保護影響評価(DPIA)

DPIAは、高リスクのデータ処理を行う場合に必要となるプロセスです。

具体的な状況:

  • 新技術の使用: AIやビッグデータ解析などを導入する場合。
  • プロファイリングを含む自動化された処理: 個人の行動や傾向を分析し、自動的に意思決定を行う場合。
  • 大規模な特別カテゴリーデータの処理: 健康情報や宗教的信条などのデータを大量に処理する場合。

「大規模」の評価基準:

  • データ主体の数
  • データの量と種類
  • 処理の期間と頻度
  • 地理的範囲

6. データ保護責任者(DPO)の任命

DPOの任命が必要となる具体的な条件は以下の通りです。

DPOの要件:

  • 独立性の確保: 組織内で独立した地位を持ち、職務を遂行できる。
  • 専門知識: データ保護法令と実務に関する知識と経験。
  • リソースの提供: 職務遂行のための十分なリソース。

7. データ侵害の通知義務

データ侵害が発生した場合の義務は以下の通りです。

  • 監督当局への通知: 実行可能な限り速やかに、かつ72時間以内に報告。
  • データ主体への通知: 個人の権利と自由に高いリスクがある場合に通知。
  • 通知内容の具体的要件:
    • 侵害の性質
    • 影響を受けたデータの種類と数
    • データ主体への影響
    • 講じた対策

8. 国際データ移転

EU域外への個人データの移転は、適切な保護措置が必要です。

  • 十分性認定: 欧州委員会が十分な保護水準があると認めた国への移転。
  • 適切な保護措置:
    • 標準契約条項(SCC): 最新のSCCを使用。
    • 拘束的企業規則(BCR): グループ企業内でのデータ保護ポリシー。
    • 認証メカニズムや行動規範の遵守
  • データ移転に関する要件:
    • リスク評価: 移転先でのデータ保護状況の評価。
    • 追加の対策: 必要に応じた技術的・組織的対策。
    • 文書化: 判断と手続きの詳細な記録。

9. 罰則について

GDPRの違反に対する罰則は以下の通りです。

  • 重大な違反:
    • 罰金額: 最大2,000万ユーロまたは全世界年間売上高の4% のいずれか高い方。
    • 対象: 基本原則の違反、データ主体の権利の侵害など。
  • より軽微な違反:
    • 罰金額: 最大1,000万ユーロまたは全世界年間売上高の2% のいずれか高い方。
    • 対象: 記録保持義務の不履行、DPOの任命義務違反など。

まとめ

GDPRの要件を遵守することは、法的リスクを軽減し、ユーザーの信頼を築くために重要です。
システム開発者は以下の点に注意してシステムを構築する必要があります。

  • データ処理の基本原則の遵守
  • プライバシー・バイ・デザインの実践
  • データ主体の権利の尊重
  • 適切なセキュリティ対策の実施
  • 国際データ移転の要件を遵守
  • 罰則の認識と対応
  • データ保護責任者の任命と支援
  • データ侵害への迅速な対応

参考資料


注意: GDPRに関する規制や解釈は、時間とともに変化する可能性があります。最新情報は公式サイトや専門家の情報を参照し、自己責任で対応してください。

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