1. はじめに
近年、ウェブサイトやアプリのバックエンドを効率化する手段としてヘッドレスCMSが注目されています。
特にコンテンツ管理に特化したAPIを提供することで、フロントエンドのデザインやシステム構成を自由に選択できる点が大きなメリットです。
本記事では、中小企業のWeb担当者、フリーランス開発者、スタートアップの技術者などを主な対象読者とし、無料プランの上限や、有料移行時のコストパフォーマンスを重視したヘッドレスCMSの選び方を解説します。
日本市場向けのサポートや日本語対応を重視する方にも参考になるよう、microCMSをはじめ主要サービスの比較を行います。
比較表
はじめに、それぞれのCMSを無料プランの特徴や商用利用可否、コストなどでざっくり比べてみましょう。
- ◎:とても有利/充実
- ○:そこそこ良い/通常レベル
- △:条件あり/要検討
- ×:非推奨/制限大
CMS | 無料プラン商用利用 | APIリクエスト / 帯域 | ストレージ | コストパフォーマンス | 日本語サポート | 主な特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|
microCMS | ◎ (可) |
無制限 ※月20GB転送量超で停止 |
無制限 (1ファイル40MB) |
◎ Teamプラン4,900円~ |
◎ (国内製) | 小~中規模向け、 日本語UIが強み |
Contentful | × (不可) | 月10万回 ※帯域50GBまで |
1万レコード |
× 有料は月300ドル~ |
× (英語のみ) | エンタープライズ向け、 高機能 |
Strapi | ◎ (OSS) |
無制限 (自己ホスト時) |
無制限 (自己ホスト時) |
◎ 自己ホストなら無料 |
△ (英語中心) | 高い拡張性、 カスタマイズ自由度大 |
Sanity | ◎ (可) | CDN経由100万 + API25万/月 帯域100GB |
100GB |
○ 従量課金(99ドル~) |
× (英語のみ) | 無料枠広め、 チーム機能が充実 |
Ghost | ◎ (OSS) |
無制限 (自己ホスト時) |
無制限 (自己ホスト時) |
◎ Proは月9ドル~ |
× (英語のみ) | ブログ・メディア 運営特化 |
上記のとおり、microCMSやSanityは無料プランが比較的充実していて商用利用しやすく、StrapiやGhostは自己ホスト前提であれば無料&無制限で使えます。
一方でContentfulは無料プランでの商用利用が不可なので、小規模ビジネスにはややハードルが高いです。
2. ヘッドレスCMSの基礎知識
CMSとは?
CMS(Content Management System) とは、ウェブやアプリのコンテンツを管理するシステムです。
従来型(オールインワン型)CMSはフロントエンドと一体化していますが、ヘッドレスCMSではコンテンツ管理機能だけを切り出し、APIでフロントエンドへデータを渡します。
ヘッドレスCMSの特徴と選定ポイント
-
フロントエンドを自由に選択可能
- ReactやVue、モバイルアプリなど、あらゆるUIにコンテンツを提供しやすい -
スケーラビリティ・拡張性
- API連携を前提としているため、サービス拡大や多チャネル展開に向く -
選定の際に見るべき主な軸
- 無料プラン / 有料プランの価格体系
- 商用利用可否
- APIリクエスト数やストレージ量などの上限
- 日本語サポートの有無
3. 無料プラン比較
より詳しく、APIリクエスト数やストレージ容量、ユーザー数、コンテンツ数などの制限を見てみましょう。
-
商用利用の可否
- microCMS、Strapi、Sanity、Ghost は無料プラン(またはOSS版)で商用OK
- Contentful は無料だと検証用のみ -
上限超過時の挙動
- microCMSは月間転送量20GBを超えると翌月までAPI停止
- Sanityは無料プランでも100万+25万回までOK、超過時は従量課金
- StrapiとGhostは自己ホストなら制限なし(サーバースペック次第)
4. 有料プランとコストパフォーマンス分析
無料枠を使い切ったあと、あるいは追加機能や大容量を必要とする場合に検討すべき有料プランの概要と、主なメリットを比較します。
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microCMS
- Teamプラン(月4,900円~) でデータ転送量200GB/月に拡大、コンテンツ2万件。
- 上位プランのBusiness(6万円台~)は転送量1TB/月、より大量のコンテンツ管理や高機能をカバー。
- 日本語サポートが手厚い点が大きな強み。 -
Contentful
- 商用にはLiteプラン(約300ドル/月~) への移行が必須。
- 機能は豊富だが価格は高め。多言語・エンタープライズ対応に強い。 -
Strapi
- 自己ホストなら無料で無制限。
- 公式ホスティング「Strapi Cloud」も月15ドル~と低価格で使いやすい。 -
Sanity
- 無料プランだけでもリクエスト数や容量が多いが、チーム機能や拡張を求めるなら有料移行(約99ドル~)。
- 従量課金に近い仕組みで、使った分だけ費用が増えるため、スケールしやすい。 -
Ghost
- 公式ホスティング「Ghost(Pro)」のStarterプランが月9ドル(年払時)。
- スタッフユーザー数や会員制限はあるものの、ブログ・会員制ニュースレターに特化して高い完成度。
総じて、小規模~中規模案件には microCMS(国内サポート)やSanity(充実無料枠)、Strapi(OSS or安価なCloud) などが導入しやすく、Contentfulは本格的な多言語対応など大規模案件向きです。
5. サービス別詳細レビュー
5-1. microCMS
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日本語サポート&UI
- 日本語管理画面が標準で分かりやすい。サポート対応の早さも安心材料。 -
無料プラン(商用利用OK)
- 転送量月20GBまで、コンテンツ1万件、ユーザー3人までOK。 -
有料プランも段階的
- Teamプランで月4,900円~。転送量200GB、コンテンツ2万件、API数(モデル数)上限増。 - 結論: 小~中規模サイトなら予算を抑えつつ始めやすい。日本語サポートは特に強み。
5-2. Contentful
-
無料プランは商用不可
- 学習・検証のみ。API制限(10万/月)や帯域(50GB)も厳しめ。 -
有料プランの価格帯が高い
- Liteプランで約300ドル/月。大企業向け。 -
大規模・多言語対応に強み
- エンタープライズ機能や多言語管理を包括的にサポート。 - 結論: 大規模プロジェクトや多言語サイトを念頭に予算が潤沢な場合に検討。
5-3. Strapi
-
オープンソースで自前ホスティング
- 制限ゼロで無料、自由にカスタマイズ可能。 -
公式ホスティング「Strapi Cloud」
- 月15ドル~、安価なプランから利用可。 -
技術力があるチーム向け
- サーバーの運用管理が必要だが、拡張性は最上級。 - 結論: 初期費用を抑えたい&フルカスタマイズが必要なら最適。
5-4. Sanity
-
無料プランが非常に充実
- 月100万(CDN)+25万(API)リクエスト、ストレージ100GB、コンテンツ1万件。 -
チームコラボ機能が強み
- リアルタイム編集や履歴管理が可能。 -
従量課金ベースで柔軟にスケール
- 有料プラン(約99ドル~)で追加ロールや予約投稿機能など拡張。 - 結論: 小~中規模で使い始め、拡大に合わせて段階的に費用をかけるモデルに向く。
5-5. Ghost
-
ブログ・会員制メディアに特化
- サブスク課金や会員管理、ニュースレター送信などが標準装備。 -
自己ホストは無料・無制限
- 公式ホスティングは月9ドル~ (Starterプラン、スタッフ1名・会員500名)。 -
汎用的なコンテンツ管理には不向き
- コンテンツモデルを細かく作り込む用途にはあまり向かない。 - 結論: メディア運営やブログ配信が主目的なら非常に便利。
6. ケーススタディ・実際の導入事例
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小規模ECサイト(商品数100点程度)
- microCMSの無料プランで問題なく運用スタート。
- 取扱商品やPVが増えたらTeamプランへ移行。
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スタートアップの自社メディア + アプリ連携
- Sanity無料枠内で十分なAPIリクエストを確保。
- コラボ機能や公開予約が必要になれば、有料プランへ。
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多言語対応が要件の大企業サイト
- Contentfulの有料プランで多言語管理機能やサポートをフル活用。
-
カスタム機能の多いアプリプロジェクト
- Strapi (自己ホスト) なら拡張自由&無料。
- DevOps環境が整備できるなら最もコスパが高い。
-
ブログ運営 + 会員制ニュースレター
- Ghostの自己ホスト or Ghost(Pro)でスピード導入。
- 会員管理や有料購読を簡単に実装。
7. 結論とおすすめポイント
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microCMS
- 日本語サポート重視なら最強。無料でも商用OK、UIも使いやすい。 -
Sanity
- 無料枠が大きく、チーム開発と拡張性に優れる。 -
Strapi
- OSSで初期費用ゼロ。クラウド版も安価。サーバー管理ができる技術力があれば最強コスパ。 -
Contentful
- 多言語や大規模運用に適するが、小規模には割高。 -
Ghost
- ブログ・会員制にフォーカス。汎用ヘッドレス用途には弱い。
今後の展望と読者への提言
ヘッドレスCMSは今後ますます広がるため、各社の料金改定やプラン拡充が続くことが予想されます。
まずは無料プランで試し、コンテンツ量やトラフィックに応じて有料プランへスムーズに移行できるCMSを選ぶのが得策です。
特に日本語サポートを重視するならmicroCMS、開発リソースが豊富ならStrapiなど、それぞれの強みに合わせて検討しましょう。