はじめに
ChatGPT、Claude、Gemini など、さまざまな LLM を使う際に
「もっと思い通りの回答が欲しい」
「出力が安定しない」
という悩みはありませんか?
実は、たった一つのテクニック、""プロンプトに「タグ」を導入"" するだけで、AIが指示内容を的確に理解し、より精度の高い回答を引き出すことができます。
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この記事を読むメリット
- 簡単なテクニックで ChatGPT の精度が上がる
- テクニックの多様な事例が学べる
- タグ一覧が充実しており、用途に合わせた拡張がしやすい
それでは早速、なぜタグが効果的なのか、どんなタグがあるのかを見ていきましょう。
1. タグを活用したプロンプトエンジニアリングとは
プロンプトエンジニアリングとは、生成AI(ChatGPT、Claude など)に与えるテキスト指示(プロンプト)を最適化し、狙った回答を得るための技術です。
特に、タグを使ってプロンプト内の文章やデータを「構造化」してあげると、AIが文章の意図を正しく理解しやすくなり、回答の精度・安定性・再利用性が大幅に向上します。
一例を挙げるとこんな感じ。
<text>こちらに長文のリサーチペーパー本文を貼り付ける</text>
<instructions>
1. 要点を3行で要約
2. 出力はJSON形式で、"summary" フィールドにテキストを入れる
</instructions>
<result>
{"summary": "ここにAIが要約を挿入"}
</result>
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メリットまとめ
- 出力フォーマット(JSONや表形式など)を維持しやすい
- Chain-of-Thought(思考プロセス)と最終回答を分けて、デバッグや検証が容易
- 大量のドキュメントを扱う際、どの部分がどの役割を担うか整理しやすい
- 金融系分析など複雑なタスクでも、データと解説を明確に分けてモデルに指示しやすい
2. タグ設計のポイント
-
わかりやすいタグ名
- 例:
<analysis>
,<instructions>
,<financials>
のように、タグ名から役割が推測できると混乱が減る。
- 例:
-
3~5階層以内
- 過度に深い入れ子構造はAIが混乱したり、タグを閉じ忘れたりしやすい。
-
タグ名を一貫して使用
- 同じ意味のタグを複数作るより、一つにまとめて運用するほうがAIは理解しやすい。
-
自己修正を促す
- 「不正なタグやJSONがあれば修正して出力して」とモデルに追加指示することでエラーを減らせる。
-
金融系や法務系など専門タグの活用
- 例:
<financials>
,<outlook>
,<balanceSheet>
などを使うと、数字や分析内容を分けて入力できる。
- 例:
3. タグ一覧表
ここでは、汎用的なタグと専門的なタグをより網羅的に紹介します。必要に応じて組み合わせながら、あなたのタスクに最適化してください。
タグ名 | 主な用途・意味 | 分野・用途 | 使用例 |
---|---|---|---|
汎用タグ | |||
<report> |
文書全体・レポート全体を包括する枠として利用 | ドキュメント構造 | <report><section>…</section></report> |
<section> |
大きな章やパートを区切る。属性 title="..." でタイトルを付与可能 |
ドキュメント構造 | <section title="Introduction">…</section> |
<summary> |
文章や分析結果の要約 | 要約/汎用 | <summary>今回の結論としては…</summary> |
<insight> |
独自の洞察や考察が必要な箇所を強調 | 考察/汎用 | <insight>AI導入の最大のメリットは生産性の向上です</insight> |
<instructions> |
モデルへの指示をまとめる | 指示/汎用 | <instructions>出力はJSON形式にし、要約は50文字以内</instructions> |
<text> |
任意の本文、またはユーザー入力のテキストを括る | テキスト/汎用 | <text>ここに分析対象の文章を貼り付ける</text> |
<example> |
Few-shotプロンプトなど、ひとつのサンプルを括る | 例示/汎用 | <example>入力:〇〇 / 出力:△△</example> |
<thinking> |
Chain-of-Thoughtで推論過程を明示的に分ける | 思考過程/汎用 | <thinking>計算式を再確認すると…</thinking> |
<answer> |
最終回答のみを括って提示 | 回答/汎用 | <answer>売上減少の主因は在庫回転率の低下です</answer> |
<result> |
JSONやXMLなど、フォーマットを厳密に管理したい部分を括る | フォーマット/汎用 | <result>{"key":"value"}</result> |
<table> |
表形式のデータを挿入するときに使う。 CSVや簡易テーブルを囲んでAIに出力を促す |
ドキュメント構造/汎用 | <table>列1,列2 データ1,データ2</table> |
<context> |
背景情報・前提条件をまとめる | 背景情報/汎用 | <context>この文書は社内会議用です。対象はマーケティング部。</context> |
4. 実践的な応用例
4-1. ブログ記事生成(章立て管理)
<report>
<section title="Introduction">
AI活用によるマーケティングの最新動向を解説してください。
</section>
<section title="MainPart">
マーケ施策を3つ紹介し、それぞれのメリットを挙げる。
</section>
<section title="Conclusion">
読者へのアクションアイテムを提示。
</section>
</report>
-
ポイント:
<section>
で導入・本文・結論を区切り、自然な文章構成に。
4-2. 金融レポート生成(財務諸表分析)
<report>
<section title="FinancialOverview">
<financials>
<profitLoss>売上高:2億円, 営業利益:2000万円</profitLoss>
<balanceSheet>総資産:1.2億円, 負債:5000万円</balanceSheet>
</financials>
</section>
<analysis>
昨年比マイナス10%の原因を考察。広告費が増加し利益率が低下した点に触れる。
</analysis>
<outlook>
来期は広告費を抑制し、利益率回復を目指す。リスクとして為替変動や原材料高を考慮。
</outlook>
</report>
-
ポイント:
<financials>
の中で<profitLoss>
と<balanceSheet>
を分割。数値と分析を分けて提示することで、モデルが誤って数値を混同しにくい。 -
仕上がり: AIが財務データを参照しつつ分析コメント(
<analysis>
)と将来見通し(<outlook>
)を生成してくれる。
4-3. A/Bテスト用マーケティングコピー
<audience>20代女性</audience>
<tone>カジュアル</tone>
<product>自然由来のスキンケア商品</product>
<variantA>
割引を前面に出したコピー
</variantA>
<variantB>
成分の安全性・こだわりを前面に出したコピー
</variantB>
<instructions>
各コピーは100文字以内としてください。
</instructions>
-
ポイント:
<variantA>
と<variantB>
を明確に区切ることで、2パターンの広告文を同時に生成。 - 成果物: すぐにA/Bテストを実施可能。
4-4. 要約タスク + JSON出力
<text>こちらに長文のリサーチペーパー本文を貼り付ける</text>
<instructions>
1. 要点を3行で要約
2. 出力はJSON形式で、"summary" フィールドにテキストを入れる
</instructions>
<result>
{"summary": "ここにAIが要約を挿入"}
</result>
-
ポイント:
<result>
タグ内にJSONを生成させることで、後続システムがそのままパースしやすい。
5. 複雑な応用例:Chain-of-Thoughtで金融分析を分割
<question>この企業のキャッシュフローと損益計算書から、財務リスクを評価してください。</question>
<thinking>
1. キャッシュフロー(CF)が黒字か赤字か
2. 損益計算書(P/L)上の利益率はどうか
3. 今後のキャッシュ不足リスクを推定
</thinking>
<analysis>
CFは+500万円だが、前年比-30%で悪化傾向。利益率も前年より2pt低下。
</analysis>
<outlook>
半年後には短期借入増加の可能性あり。改善策として固定費削減を検討。
</outlook>
<answer>
以上より財務リスクは中程度と判断されます。
</answer>
-
Chain-of-Thought (
<thinking>
) と分析結果 (<analysis>
) を分け、最終結論 (<answer>
) のみユーザーに提示できる。 - 複数の財務指標を組み合わせ、より高度な推論がしやすい構造。
6. 実践ステップ: タグ付きプロンプト作成の流れ
-
ゴール設定
- 「ブログ記事執筆」「金融レポート自動生成」「広告文A/Bテスト」など、目的を明確化。
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タグ設計
- どのデータ・セクションを何のタグで括るか決定。
- 入れ子は3~5階層以内を目指す。
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初期プロンプト作成・テスト
- AIに投げてみて、タグ構造が正しく機能しているか、出力フォーマットが期待どおりか確認。
-
デバッグ&改善
- タグ名を変更する、タグを統合/分割するなど、モデルの出力精度が上がるよう調整。
- 金融データの扱いが複雑なら
<financials>
内をさらに<profitLoss>
や<balanceSheet>
に分割するなど工夫。
-
最終版テンプレート化
- 成功したプロンプトはテンプレート化して使い回す。
- チーム内で共有して標準化すれば開発効率アップ。
7. まとめ & 次のアクション
タグを活用したプロンプトエンジニアリングの威力を実感していただけたと思います。
最初は少し面倒に感じるかもしれませんが、この方法を使いこなせば、AIとの対話が格段に進化することは間違いありません。
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次にやるべきこと
- 小さなタグ構造から始めて、想定どおりの出力になるかを試す
- トラブルが起こったら
<thinking>
や<analysis>
を活用してモデルの推論過程を可視化し、原因を特定 - 成功事例をテンプレ化し、ブログやレポート、コード生成など幅広いシーンに展開
ぜひこの記事を参考に、「生成AI タグ 活用」 による高度なプロンプト設計に挑戦してみてください。
プロンプトエンジニアリングを上手く使いこなせば、ビジネスドキュメントの自動生成や分析効率化など、多岐にわたるメリットを得られるはずです。