はじめに
「Cua」は、AppleシリコンMacでmacOSやLinuxの仮想マシンを高速に実行できるうえ、AIエージェント機能も備えたオープンソースプロジェクトです。
この記事では、Cuaのインストール方法から基本的な使い方、主要機能、そして具体的な使用例までを順を追って解説します。
Cuaとは?
Cuaは、AppleのVirtualizationフレームワークを利用し、macOSやLinuxの仮想マシンを手軽かつ高速に実行できるツールセットおよびライブラリ群です。
さらに、AIエージェント機能を活用して、仮想マシン上での操作を自動化することができます。
特徴的な点は、コマンドラインツール(Lume)とPythonライブラリを用意していること。
CLI派の方でもPython派の方でも、用途に合わせた使い方が可能です。
インストール方法
1. CLIツール(Lume)のインストール
AppleシリコンMacで動作する軽量CLIツール「Lume」は、Homebrew経由で簡単にインストールできます。
ターミナルで以下のコマンドを実行してください。
brew tap trycua/lume
brew install lume
一行インストーラースクリプト
Homebrewを使わない場合、以下の一行インストールスクリプトでも導入可能です。
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/trycua/cua/main/libs/lume/scripts/install.sh)"
2. Pythonライブラリのインストール
Cuaが提供するPythonライブラリを利用して仮想マシン操作をしたい場合は、必要なパッケージをpipでインストールします。
-
仮想マシン操作用(Computerライブラリ)
pip install cua-computer
-
AIエージェント用(Agentライブラリ)
pip install "cua-agent[all]"
特定のAIモデルや機能のみを使用したい場合は、[anthropic]
や[openai]
などオプション指定ができます。
セットアップ手順
CLIツール(Lume)での仮想マシン起動
インストールしたlume
コマンドを使えば、仮想マシンをワンコマンドで立ち上げられます。
たとえばmacOS仮想マシンを起動する場合は、以下のように実行します。
lume run macos-sequoia-vanilla:latest
上記コマンドにより、あらかじめ用意されているmacOSイメージがダウンロードされ、Virtualizationフレームワークを通じて高速に仮想マシンを起動できます。
UbuntuなどのLinuxディストリビューションも、類似コマンドで起動可能です。
また、lume serve
コマンドを実行すると、ローカルHTTP APIを立ち上げることができます。
これにより、外部からREST APIを介して仮想マシンを制御できるようになります。
Pythonライブラリでの仮想マシン起動
PythonからCuaを使う場合は、cua-computer
などをインストールしたうえで、以下のようにスクリプトを書きます。
from computer import Computer
computer = Computer(os="macos", display="1024x768", memory="8GB", cpu="4")
await computer.run() # 仮想マシンを起動
# ... ここで各種操作を実行 ...
await computer.stop() # 仮想マシンを停止
-
os="macos"
のほか、os="ubuntu"
など別のOSイメージを指定可能 -
display
、memory
、cpu
などで仮想マシンのリソースを調整
上記の例では、内部的にLumeが呼び出され、必要なイメージが自動でダウンロードされます。
主要な機能
1. 仮想マシンの高速作成・管理
AppleのVirtualizationフレームワークを利用するため、AppleシリコンMac上でほぼネイティブに近い速度で仮想マシンを実行できます。
CLIとPythonの両方に対応しているので、好みに応じた操作が可能です。
2. Computerライブラリによる操作自動化
Computer
クラスでは、仮想マシン上での以下の操作がプログラム的に可能です。
- マウスカーソルの移動・クリック
- キーボード入力
- クリップボード操作
- スクリーンショットの取得 など
人間が行う操作を自動化できるので、GUIアプリのテストやバッチ処理がぐっと楽になります。
3. AIエージェントによる高度なタスク自動化
Cuaの目玉機能が、仮想マシン上での操作を支援するAIエージェント機能です。
Agentライブラリを使えば、複数のアプリやブラウザ操作を含む一連の作業を、自然言語で指示するだけで実行可能。
- OpenAIやAnthropicなど、さまざまなLLMバックエンドと統合
- OmniParserとの連携で画面のUI要素を認識し、自動操作が可能
具体的な使用例:AIエージェントでウェブリサーチ
例えば、次のようなタスクをAIエージェントに指示するとします。
- Safariを開く
- Wikipediaにアクセス
- 「Claude AI」を検索
- 内容を要約してコンソールに出力
すると、Cuaが仮想macOSを起動し、エージェントがSafariを自動操作してWikipediaをブラウジング。
必要な情報を収集して要約を返してくれます。
Pythonコードのイメージ:
from computer import Computer
from agent import ComputerAgent
# 仮想マシンを起動
computer = Computer(os="macos")
await computer.run()
# エージェントを初期化 (Anthropic/OpenAIなど好きなモデルを選択可能)
agent = ComputerAgent(computer=computer, model="anthropic")
# タスクの指示を渡す
task_instructions = """
1. Safariを開く
2. Wikipediaにアクセス
3. 「Claude AI」で検索
4. ページ内容を要約
"""
result = await agent.run(task_instructions)
print(result) # 要約結果をコンソールに出力
await computer.stop()
このように、人間が手動で行うGUI操作をAIと仮想マシンの組み合わせによって自動化し、リサーチや情報収集・データ処理など幅広い用途に活用できます。
まとめ
AppleシリコンMacを使って高速に仮想マシンを動かしたい方、あるいはAIエージェントを活用してGUI操作を自動化したい方にとって、Cuaは非常に便利なプロジェクトです。
CLI・Pythonの両面からサポートされているので、自分のワークフローに合わせやすいのも魅力ですね。
ぜひCuaのGitHubリポジトリ( trycua/cua )をチェックして、ドキュメントやサンプルを参考にしながら試してみてください!
- 公式リポジトリ: trycua/cua
- ドキュメント: リポジトリ内のREADMEや各種ノートブック参照