LoginSignup
10
10

More than 3 years have passed since last update.

人物画像に対する機械学習でビジネスする上での法務についてのメモ

Last updated at Posted at 2019-01-17

とある案件で, 人物画像に対する機械学習でビジネスしたユースケースを元に, 法務周りをまとめました.

2019 年 1 月施行の著作権法改正の著作権法をベースにしています.

最初のころは手探りでしたが, 昨今は AI や機械学習に明るい弁護士も増えてきましたので, 機械学習でビジネスしたいひとはなんとなく道筋見えてきたらググるなりしてよさげな弁護士探して相談してください. 2019 年 1 月から, 著作権法も改正されてビジネスがやりやすくなってきています.

背景

人物画像(顔とか人物のポーズとか)に対する機械学習のプログラムやデータセットでビジネスしたいが, どうすればいいのかしらん. :thinking:

考慮すべき法律

  • 著作権
  • 特許権
  • 営業秘密(trade secret)
  • 肖像権(プライバシー権, パブリシティ権. 主に民法の範囲)

著作権

現状, 日本の著作権下においては, 人が介在しない創作は著作権が成立しないことになっています.

これは著作権自体は誰にも発生していない.

47 条の 7

進化する機械学習パラダイス ~改正著作権法が日本のAI開発をさらに加速する~
https://storialaw.jp/blog/4936

機械学習用途であれば著作物を記録して学習に使うこと自体は合法です.

(2019 年 1 月の著作権改正でいくらか変わります)

学習済みモデル

著作権法や特許権で保護は難しいです.
基本的には営業秘密として扱うことになります.

ネットワークを特許で保護というのは, 進歩性があれば可能ではあるようですが, 動きの早いこの業界, 特許で保護に時間をかけるのは割りに合わないような気もします.

Batch normalization の特許は気になりますね(現状 application の stage で, granted にはなっていない模様ですが)
https://patents.google.com/patent/US20160217368A1/en

学習済みモデルだけを販売する, みたいなのはなかなか保護がむずかしいです. distilling したり, ちょっと重みを変えたりで回避できます. 学習済みモデルだけを販売するような場合は, ビジネスモデルを考える必要があります(サービス化するとか, アプリ化するとか)

学習用データセット

元画像

写真については, 撮った人に著作権があります.

人物画像の場合は, 写り込んだ人物に肖像権(プライバシー権)があります.

public space でたまたま写り込んでしまった顔の場合は, 肖像権侵害を訴えるのは難しいです.
(公の場に自分から出て行ったから)

Flikr とかで自由に使っていいライセンスで公開されているものもありますが, 写り込んだ人物からの肖像権侵害というリスクはあります.

顔系の論文では, 大統領や有名人とかの顔画像がよく使われていたりしますが, (US)大統領や有名人は肖像権が限定されていて, 比較的自由に使えるというのがあります.

ちなみにマリリンモンローの肖像も, 自由に使えたりします.

アノテーション画像

元画像について, バウンディングボックスやラベルつけ, マスク処理や領域わけなどした画像は, 基本著作権は生じないです(アノテーションが創造的な作業であれば, アノテーションを行ったひとに著作権が付与される可能性はあるかも)

アノテーション画像から元画像が推定しやすい場合, 元画像の写り込んだ人物から肖像権侵害のリスクはあります.

プログラム(ソースコード)

著作権法で保護されます.

これは通常のプログラム開発とだいたい同じです.
使っている OSS のライセンスが問題ないかチェックしましょう.

データセットが重要で, ソースコード自体は公開しても問題無い場合は, GPL のライブラリを使ったり, 本体を GPL のライセンスにするという手も考えられます(プログラムを販売した先が, 改変物をバイナリ化して再販するのを防ぎたい場合は, 本体を GPL がいいかも)

著作権法の改正

2019 年 1 月から著作権法が改正されました.

準拠法と仲裁条項

海外の企業とビジネスする場合, 準拠法(governing law)と仲裁(arbitration), optional で 裁判管轄(jurisdiction)の選定が必要になります.

日本はベルヌ条約加盟国ですし, 著作権法 47 条の 7 もありますので, 基本的には日本国を準拠法に選びます.

仲裁は第三国にするという手もあります(日本から行きやすいところで, シンガポールとか).

ブロックチェーンで権利管理

現行の法律ではなかなか権利保護や管理が難しいケースがおおいので, ERC721 などでうまく権利を管理できるといいなと思いを馳せる日々です.

たとえば元画像に写り込んでいる人物が, 肖像がアノテーション画像に使われてるか確認したり, 肖像の利用許諾を与える代わりに, アノテーション画像に使われたら対価が仮想通貨で支払われるとか.

追記: IBM の事例

顔画像を扱うリスクに関連する事例が出てきました.

IBM が, 公開した顔データセットに Flikr の creative commons(CC-BY?)で公開されている画像が含まれていました.

Facial recognition's 'dirty little secret': Millions of online photos scraped without consent
https://www.nbcnews.com/tech/internet/facial-recognition-s-dirty-little-secret-millions-online-photos-scraped-n981921

収集した画像を公開したことに問題があったようですね.
(少なくとも画像を収集し, 機械学習に利用するのは日本では合法ではあります)

Flikr 自体は"場"を提供しているだけで, Flikr にアップロードした写真については各アップロードした個人が権利を持ち, 肖像権侵害などには責務を追わないという term of use になっているはず. 二次利用が Flikr の term of use ではどうなっているのかはより詳細な調査が必要ですが, 自分の肖像や, 写真家が撮った画像が, Flikr ではないところで自身や写真家が意図しない形で利用されていることに問題があります.

これはなかなかに解決が難しいところです. GDPR とからみ, 著作権者や個人が自身の画像を制御できる仕組みが求められていきますね.

弊社の場合は, 今は BtoB の取引のため, とりあえずは元画像のハッシュを計算しておくようにしました.
(Flikr の画像も納品物には含めず, URL のみ)

いずれ BtoC のサービスを提供したいと考えていますので, 利用用途の範囲の説明や, GDPR に準拠し各個人が自身の画像を管理したり, どのように使われているか追跡できる仕組みや(レンタルコントラクトや, 消去できる仕組みを持つブロックチェーン技術など?), 画像や顔の類似度を自動で判別する技術を極めたいところです.

追記: Google の例

GoogleさんがPixel4の顔認証システムのためにホームレスを騙して顔をスキャンする
https://www.gizmodo.jp/2019/10/pixel4-face-rec.html

Google もやらかしました. 少なくとも subcontractor を使うのではなく自社で責任を持って収集管理すべきでしたね. 
 

参考文献

  • エンターテインメント法務Q&A―権利・契約・トラブル対応・関係法律・海外取引
  • AI ビジネスの法律実務
  • AI の法律と論点
10
10
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
10
10