技術書典11向けに初めて電子書籍をつくりました。効率的に作業を進められる電子書籍の執筆環境をRE:ViewStarterで構築しましたので、環境設定例を記事としてまとめました。電子書籍「自宅で始める応力解析 -SalomeMeca2019で始める孔あき板の応力解析-」の紹介は、こちら
1.電子書籍とは?
データ形式の書籍でパソコン、タブレットなどで閲覧可能です。PDFの場合もありますが、Kindle、iPad、Kobo、Reader(Sony)などの端末で書籍で閲覧します。場所をとらないこと、目次から見たいページにすぐ移動できるなどのメリットがあります。
2.Re:ViewStarterの環境設定
Windows10上で環境を構築しました。Dockerをインストールすると使えるようなのですが、筆者はDockerのインストール環境が設定できず断念し、RubyとTexLite2021をインストールを行いました。Re:ViewStarterの公式ページ:https://kauplan.org/reviewstarter/
2.1 Rubyのインストール
以下サイトからRubyのインストールを行います。URL: https://rubyinstaller.org/downloads/環境を設定したときは、バージョンは2.6.7-1だったのですが、ブログ執筆日現在(2021年7月)は3.02です。インストーラーの指示に従い、インストールを進めていきます。
2.2 TexLive2021のインストール
以下サイトからRubyのインストールを行いますURL:https://www.tug.org/texlive/acquire-netinstall.htmlページ内の"install-tl-windows.exe"をクリックしていください。インストーラーの指示に従い、インストールを進めていきます。
2.3 ひな形ファイルの作成
以下のページの案内に沿って、ひな形ファイルを作成します。ページ内の"プロジェクト作成を始める"をクリックして、説明を設定を行っていきます。(下図は、入力の一部です。)URL:https://kauplan.org/reviewstarter/
作成が終わると、ひな形ファイルができた旨を伝える画面が表示されるので、「mybook.zipをダウンロード」をクリックして、パソコン内の任意のフォルダへダウンロードを行います。
2.4 作業フォルダの設定
ひな形ファイルmybook.zipを"C:\Users\ユーザー名"内に解凍し、作業フォルダ名を00workfolderに変更します。ユーザー名は、Windows10のユーザーアカウントです。書籍は、フォルダ内のひな形ファイル内の*.reファイルを編集して作成をしました。マニュアルを見ながら、書籍を作っています。
作業を楽にするため、バッチファイルをつくります。
作業効率化のため、アイコンをダブルクリックをすると、コマンドプロンプトと作業フォルダが開くようにしました。コマンドプロントは、電子書籍を作成する際に、「rake pdf」をいうコマンドを打つため、予め起動させておきます。ファイル名は、"restarter作業.bat"とし、デスクトップ上に配置します。
2.4.1 作業フォルダの自動起動
start C:\Users\ユーザー名\00workfolder
cd C:\Users\ユーザー名\00workfolder
cmd
使い方
"restarter作業.bat"をデスクトップ上へ配置し、このアイコンをダブルクリックをすると、コマンドプロンプトと作業ファイルが開きます。
2.4.2 作業フォルダデータのバックアップ
作業をしているとどうしても修正ができないところが出たため、作業フォルダのデータを前のバージョンに入れ替えていました。また、データ消失に備えて、バックアップをおこなうバッチファイルを作りました。ファイル名は"backup.bat"とし"00workfolder"内に配置します。
setlocal
set /p name="バックアップフォルダ名を入力してください>"
echo フォルダ名は %name% です
cd ../
mkdir %name%
xcopy /s 00workfolder %name%
echo バックアップ終了
pause
使い方
(1)backup.batをダブルクリックします。起動すると下図の画面が表示されるので、バックアップフォルダ名を入力し、エンターキーを押します。ここではtest2としました。
(2)作業がおわると、「…なにかキーを押してください」と表示されるので、エンターキーを押します。押すと下図の画面は閉じます。
(3)「C:\Users\ユーザー名」に、作業データのバックアップが作成されます。
2.5 テキストエディタ
今回、Terapadを使いました。VSCodeは、RE:ViewStarterの拡張機能をつかうと、コマンドに文字色がつき見やすさもよく、また、コマンドの補完入力が付くので、作業性が向上します。
3.RE:ViewStarterによる書籍作成
マニュアルを元に作成をしていきます。最近発売した本のサンプルページを例に説明します。触った感想はプログラムに近い作成を行っていきます。赤字がRE:StarterViewのコマンドであり、また、「2_geo_move1」は画像のファイル名で拡張子をのぞしています。
<RE:ViewStarter上での記述>
//clearpage
//noindent
(2)長方形を移動する
SalomeMecaの仕様では、原点Oを中心とした長方形しか作成できないため、長方形を移動させます。
//image[2_geo_move1][長方形の移動][pos=H,border=on]
①Translationをクリックします。
②Nameは、初期値のFace_1のままとします。
③Argumentは、DX:20,DY:5とします。
④Create a copyのチェックボタンを外します。
⑤Previewをクリックします。この状態にすると、移動後の形状の位置がわかるため便利です。
⑥Apply and closeをクリックします。
<サンプルページ>
4.BOOXによる原稿の校正環境
4.1 BOOXとは?
SKT SELECT社が発売しているディスプレイがe-ink方式であるアンドロイドOSのタブレットです。画面サイズは6~13インチサイズまでラインナップされています。私は、A5サイズサイズ相当であるディスプレイの大きさが10.3インチの「BOOX Note Air」を購入しました。製品ページURL:https://sktgroup.co.jp/boox-note-air/メリット
E-ink方式なので目が疲れない(夜に読んでもブルーライト対策ができる)
ディプレイの光で読書灯代わりになる。
ベースOSがAndroid10のため、Kindle、Dropbox、radikoなどのAndroidアプリが使える。
手書きメモが日記になり、PDFデータにできる。
デメリット
E-ink方式なのでモノクロなのでカラーではない
画面の切り替え速度が遅い(動画は見られない)
OSのアップデートができない。(BooxNoteAirはAnrdoid10)
デメリットは、本しか読まないことと、カラーでなくても読める本が大半だったので、デメリットは許容できるため購入しました。
4.2 校正方法
Re:viewstarerで作った書籍をBOOX内にコピーを行いチェックをします。
(1)誤字脱字のチェック間違っているところを見つけて印をつけて、右上のしおりボタンをタップします。下図は校正例です。しおりを付けた位置に移動させたいときは、上部の目次マーク(横線が3本ある記号)をクリックします。
(2)左下に目次マークが表示されるので、ここをタップします。
(3)左下のしおりボタンをタップすると、左側にしおり場所の一覧が表示されるので、確認したいしおり(赤□部)をタップします。校正内容を見て原稿を訂正していきます。
5.まとめ
技術書典11向けに本を出すに当たり、Wordで書くか、他の環境で書くかとても迷いました。Re:ViewStarterは、電子書籍の特徴である目次、しおり、注釈、リンクなど必要な機能を備えており、電子書籍が思いのほか便利なことがわかったため、今後電子書籍を積極的に活用していくつもりです。大学生の頃に少しだけみたMS-DOSのバッチファイルをまた触るとは思いませんでした。カウプラン機関極東支部(@_kauplan)様におかれましてはこのような執筆環境を公開していただきましてありがとうございました。お礼を申し上げます。