はじめに
SIerに勤めるエンジニアです。
プロジェクトでの学びを勉強会やブログなどで発信していたことを評価してもらい、最近広報エンジニアという役割をもって働くことになりました。
ただ、広報エンジニアという役割が会社・部門にはなく、ミッションや活動内容の検討から始めました。
まだ着任して2ヶ月ですが、ある程度活動内容がかたまり、成果も見えてきたので、自分のなかの整理も含めてまとめました。
漫然と過ごすと起こること
広報エンジニアという役割になる前は、プロジェクトやシステムをより良いものにするためにはどうしたら良いだろうと考えてはいましたが、プロジェクト全体の目的を振り返ることはほとんどなく、ただ漫然と日々の業務を遂行する日々でした。
プロジェクトの計画時にプロジェクト目標を決めますが、日々の生活で忘れ去られてしまい、プロジェクト完了時のふりかえりでは以下のようなことがしばしば起こっていました。
- 目標に対するふりかえりではなく、個人が思いついたことを言い合う
- 長いプロジェクト期間で、目標と現場の重要度が乖離した結果、目標に到達できなかった
- もしくはふりかえりすらしない
また、個人としても、半期や一年に一度、業績評価をする面談などで自分の成長を振り返ってみると、「あれ?今期、自分は何か成長したんだろうか?」と漠然とした不安を抱え、自分は成長していない気がする、と落ち込むサイクルを繰り返していました。
日々仕事をしていると、仕事は次から次へと降ってくる。いくら長時間働いても、絶対にすべての仕事が終わることはない。そして多くの人は、積み上がる仕事に何の疑問も抱かないまま、とにかく効率的に目の前のタスクをこなそうとする。右から左へと、まるで機械のように。
そんなやり方をしていたら、いつまでたっても忙しさに追われるだけだ。何ひとつやりとげることはできない。
引用:コミットする力 いつもの仕事をスペシャルな冒険に変える
見せる化
広報エンジニアの役割は見せる化です。私はいま、以下2つの見せる化について取り組んでいます。
- プロジェクトの方針の見せる化
- 案件の入り口を正しくするための見せる化
プロジェクトの方針の見せる化
チームメンバーに対して、チームが進んでいく方向やこの案件をこのチームでやる意義を見せます。
見せる目的
チームとしてプロダクトが何を実現するのかを決めて、進む方向性があっているのか都度都度認識あわせしなければ、いつのまにか周りと自分の認識がズレてきます。
度々方向や認識を見直し、時には修正することで、チーム全体が目的・目標を見失わずに行動することが出来ます。
どのように取り組むか
広報エンジニアとして、以下のお仕事を日々のサイクルに組み込んでいます。
- プロジェクトを始める前にどういうプレゼンスを発揮するか決める
- 実際にプロジェクトを遂行する
- 日々、成果とプランを比較し、チームメンバーに見せ、調整する
- チームの成果をしかるべき場所で発信する(チーム内・チーム外に見せる)
- 次の仕事につなげる
大切なのは、プランニングを日々のサイクルに組み込むことだ。ただ漫然と仕事をするのではなく、まずプランを立てる。仕事の成果をふり返るときには、プランと比較して検討する。そうしたプラン思考を徹底すれば、やるべきことをやっているという確信が得られる。
そしてもうひとつ、プランを立てることによる最大のメリットは、やるべきでないことが明確になることだ。
プランを立てるうえで何よりも重要なのは、やるべきことを最小限に絞り、そこにエネルギーを集中することだ。「できたらいいな」と 思うことを100個書き連ねるよりも、「絶対にやる」ことをひとつだけ決めたほうがいい。その「絶対にやる」こと以外は、思いきって捨ててしまおう。
引用:コミットする力 いつもの仕事をスペシャルな冒険に変える
実例
最近では「SIerがDevOpsをやる意義を、世間のエンジニアにも伝えたい」という目標を決め、実際にプロジェクトを遂行し、JJUG CCC 2016 Fallで発表してきました。(そのときの資料はこちら:SIerもはじめる わたしたちのDevOps)
実際に取り組んでみると、こんな効果がありました。
- チーム全員をまきこんでどういうプレゼンスを発揮するかという方針を決めているので、全員が目標を明確にしてプロジェクトに取り組むことが出来る。
- 目標・目的が明確なので、やるべきこと、やらなくてもいいもののが見えてくる。
- 成果を発表したり、まとめたりすることで、チーム全体の認識あわせの場を定期的に作れる。
- しかるべき場所で発信することで、多くのフィードバックが得られ、次の行動の機会を作れる。
案件の入り口を正しくするための見せる化
営業職の方に対して、私たちの施策・活動を見せます。
見せる目的
開発と営業というのは対立しやすいようで、例えばJJUG CCCのセッションでも、そういったお話がありました。
営業が開発の現場で何が起きているのか、何が出来るのかを知らないことから、軋轢が生まれていると思います。
営業が開発を知らない、その結果、炎上する案件やつまらない案件ばかりが営業から降ってくる。これは、開発だけで不満に思っているだけでは何も解決しません。
案件の開始前からお客さまと直接やりとりしている営業に直接アプローチすることで、案外サクッと認識を合わせることが出来たり、相談先として覚えてもらえたりすることが出来ます。
どのように取り組むか
広報エンジニアとして、以下のように働きかけています。
- 営業の人にヒアリングをしてどういう認識のズレがあるのか、何が求められているかを確認する
- 現在の課題に対してどういう施策をどのように売り込めばいいか検討する
- 営業の部会などで時間を割いてもらい、発表して見せにいく
営業の部会で発表するというのは、「そんな施策知らなかった」と言わせないようにするためです。
社内広報の役割は,先に述べた「知らなかった」と言わせないように,積極的に情報開示をしていくこと
会社の社内報,イントラネット,社員の多くが目にする場所への掲示,定期的な成果報告会のようなもの,そのほかいろいろな手段が考えられます。
引用:http://gihyo.jp/lifestyle/serial/01/kaizen/0014
実例
私たちの部署では、全社向けの技術相談窓口(いろんな事業部から技術のエキスパートを集めたチームが技術的相談に乗ってくれる)を用意していますが、あまり相談がこない、来ても「トラブってる!助けてくれ!」みたいなものしかありませんでした。
そこで、そもそも案件をとってくる役割である営業職の方にアプローチして、「相談窓口があるので相談してね」ということを、紹介してまわりました。
実際に取り組んでみると、こんなことが見えてきました。
- (全社向けの業務連絡として報知していたが)施策自体が営業に全く知られていなかった
- 営業は何が技術的に出来るのかを知らず、知りたいと思っている
- 営業は技術についての相談先に悩んでいる(弊社は大規模SIerなので、部署がたくさんあり、なかなか全貌が把握しにくいです。)
- お客さまは思っているよりもずっと最新の技術動向に興味がある(金融・産業関係なく)
- 技術職は営業から見ると「技術がわかってないと相談してはいけない」という怖さがあるので、相談のハードルを下げてあげることが大切
施策を説明すると、営業からのリアクションもよく、「こういうものが欲しかったんだ!」と言ってもらえます。
まだまだ広報を始めたばかりですが、エンジニアの立場から、営業に向けてアプローチすることで、先手を打って技術的リスクを軽減できると計画しています。
見せる化に必要なスキル
広報エンジニアとして働いていて、こんなスキルが必要だな、と思ったことを紹介していきます。私自身が、まだまだ力をつけていないので、今後も精進を続けていきます。
広い範囲の知識をカバーする
お客様や営業とお話するためには、カバーしなければいけない知識がたくさんあります。
自分の得意分野だけではなく、広い知識をもっていなければ会話が出来ません。
かつ、話題になっている技術と実際に使える技術のギャップがわかっていないと提案が出来ません。
とりあえず最近は、浅くても広い知識を得るために、お客様や営業が情報のInputとして使っている日経コンピュータなどの業界紙も読むようにしています。
なんでも抵抗なく試してみるマインドをもたなければなりません。
自分の知識をこれからどんどん貯めていくこと、実際に触ってみて使えるかどうか判断すること、それによってどんどん深い知識に変えていくことを今後続けていく必要があります。
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時間が無いからといって、学ぶ対象を絞りに
いくと、技術の感受性が落ちます。
結果的に、吸収できる量が減ってしまうの
で、何でも食いにいく姿勢は失わないように
しておくことが大事です。
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http://www.slideshare.net/kawasima/ss-62476324
すばやく成果を見せる
お客様や営業、それ以外の人に対して、アイデアを人に見せる形で素早く提供する必要があります。
例えば、少し前にこんな記事がありました。
お客様が気になっている・最近話題になっている技術を使って、どういう面白いことを実現出来るのかを考え、それを実現することを習慣にする必要があります。
エンジニアなので、スライドをただただつくるのではなく、プロトタイプを見せることで、相手がよりイメージしやすいように工夫します。
魅せる化
広報エンジニアは、見せる化だけでなく魅せる化も重要です。
私の魅せる化は、**「参加してくれている人、聞いてくれている人に楽しんで帰ってもらいたい、という気持ち」**です。
たとえば、先日開催された、JJUG CCC 2016 Fallの発表では、午前中にわざわざ聞きに来てくれている人の気だるい感じや眠気を吹き飛ばし、楽しんでもらおうと、DVOP(以下の図参照)を歌って踊りました。
(そのときの資料はこちら:SIerもはじめる わたしたちのDevOps)
また、企画・運営している社内イベント(LT FREE STYLE BATTLE)でも、ただ司会をするのではなく、ディスコボールを置いたり音楽を流したりする雰囲気づくりや、最初にイベントの世界観に入り込んでもらうためのオープニングムービーづくりをしました。
はじめよう広報エンジニア
これを読んでいただいているみなさまの組織でも、広報エンジニアを置いてみてはいかがでしょう。きっと楽しく仕事するチャンスが増えることでしょう!!!!!!
また、これまで書いたことは「広報エンジニア」でなくても実践し、効果を得ることができることだと思います。
たとえば、下のようなサイクルを日々の仕事に組み込んでみてはいかがでしょう。
- アウトプット(ブログ・勉強会など)するテーマを決める
- プロジェクトを通して、アウトプットを意識しつつ知見をためる
- 成果とプランを比較する
- アウトプットする
- 次の仕事・アサインにつなげる