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KPTの魔改造をやめよう。ふりかえりをしよう。

Last updated at Posted at 2023-12-25

TL;DR

  • ひとつのフレームワークを使い続けているといろんな良くないことがある
    • 視野が狭まる
    • 形骸化する
    • 飽きる
  • 魔改造はフレームワークへの過学習の兆候かもしれない
  • いろいろ試すだけで視野が広がるのでやっていこう

KPTボードが魔改造されてませんか?

KPTボードが魔改造されてませんか?

ウチはされてました。
魔改造されたレトロスペクティブのボード。セクションが大量に配置されている。

詳細な情報はお見せできないためガビガビの画像で申し訳ありません。ですが、雰囲気はわかるとおもいます。

Problem内に配置された四象限、あふれるTRY、KPTの周囲に配置された謎のセクション、誰も読まない各エリアの説明……

チームの立上げ期にふりかえりの手法としてなんとなく選ばれたKPTが、日々の工夫を取り込んでいくうちこんなに大きく育ってしまったのです。


もちろん、チームとしてふりかえりを改善した結果なので、必ずしも悪いことではありません。

自分たちが行った改善の結果ですから、それぞれの工夫が効果的に働く場面があることも当然知っています。


しかし、やはりいくつかの問題もありました。以下に見ていきましょう。

同じフレームワークを使い続けることによる問題

まず、わたしたちがKPTの魔改造をやめるキッカケになったアジャイルレトロスペクティブズの記述を見てみます。

アジャイルレトロスペクティブズの「短い話題(Short Subjects)」という節には、スプリントごとの短いふりかえりの方法としてKPTのようなフレームワークをいくつか紹介したあとで、次のようなことが書かれています。

特定のフレームワークを何度も繰り返し使用したり、フレームワークの変更をしていてもそれをレトロスペクティブの唯一のアクティビティとして使用してしまう残念な傾向をもつチームがある。正しく使えば優れたアクティビティだが、単独でつかってもあまり豊かなアイデアは出てこない。

[略]

イテレーションごとにレトロスペクティブを開いていると、1〜2週間のインクリメントなどの短いイテレーションのときは特に、毎度おなじみのアクティビティにチームは飽きてしまう。

そんなときは、「短い話題」のバリエーションをつかって議論の観点を変更したり、独自の趣向を凝らしたり、チームに合ったカテゴリ(「継続」「統合」「リファクタリング」など)を作ったりするとよい。

Esther Derby and Diana Larsen『アジャイルレトロスペクティブズ』p.109 (一部改変)

つまり、おなじフレームワークを使い続けると、豊かなアイデアが出なくなるし、チームが飽きてしまうわけです。


わたしたちのチームでは飽きてしまうことは問題として顕在化していませんでしたが、レトロスペクティブに用いるアジェンダの形骸化と議論の窮屈さは声として聞こえるようになっていました。

具体的には以下のようなものです。

  • やり方も活用の仕方もわからない作業が増えている。

  • 形骸化した作業がレトロスペクティブの時間を圧迫しており、90分間のタイムボックスのうち30分程度しかプロセスの問題について話せない。

  • 具体的な改善のアイデアがあっても、そのスプリントで発生したプロブレムに紐づけないと提案しにくい

  • プロブレムが発散していくつものアクションが出来てしまい、管理しきれなくなる。

  • 投票制なので票が集まらないとプロブレムについて話す時間がとれない。

  • モヤモヤを書くエリアは一応あるが、触れる時間がまったくない。


各々が課題を感じながらも、魔改造されたKPTボードを前にするとたじろいでしまい、さらにアドホックな改造を施してさらに魔改造を… という負のループに陥っていました。

SSC+Slackでレトロのふりかえり に変えた

アジャイルレトロスペクティブズが「おなじフレームワークを使い続けるのは残念なチームだ」と言い切ってくれたことが、フレームワークをまるごと交換する勇気を与えてくれました。


当時もっとも大きかった課題はチームとして取り組むことが多すぎることだったので、やめることについて議論できるフレームワークとしてSSC(Start, Stop, Continue)を導入し、レトロスペクティブそのもののふりかえりはSlackにスレを立てて非同期で行うことにしました。


変更後のボードはこんな感じです。再びガビガビですみません。
SSCのボード。冒頭の複雑になったレトロスペクティブのボードと比べてシンプルになっている

左からStart、Stop、Continueで、下の数字の振ってある紫のエリアがTRYです(TRYは同時に最大5つしか取り組めないというWIP制限があります)。


冒頭に上げた魔改造KPTと比べるとだいぶシンプルになったとおもいませんか?


レトロのふりかえりでは以下のような声が聞けました。

  • 形骸化したアジェンダを捨て、時間に余裕を持ってふりかえりが出来るようになった。

  • なにかを止めるための問いかけはKPTにはなかったので、SSCを使うことで新たな視点でふりかえれるようになった。


SSCもずっと使い続けるとまた視野が狭まるのは明らかなので、飽きそうなタイミングでまた別のフレームワークを試そうと思っています。
きっと、そのときにはまた新鮮な気持ちと新たな視点でふりかえりが行えるようになるでしょう。

いろいろやるのオススメ

複雑になったKPTボードはフレームワークを過学習してしまっている状態のあらわれかもしれません。わたしたちが行うべきなのはふりかえりであって、フレームワークの魔改造ではないはずです。

魔改造状態に陥っていたとしても、別のフレームワークを試すだけでチームへの問いかけ方や時間の使い方が変わります。

それはチームに新たな手札を与え、ふりかえりそのものの成熟を促します。

やっていきましょう。

参考

アジャイルレトロスペクティブズの「短い話題(Short Subjects)」では上記で紹介したものの他に、以下のフレームワークが紹介されていました。

  • うまくいったこと/次回はやり方を変えたいこと

  • 続けること(Keep)/やめること(Drop)/加えること(Add)

  • やめること(Stop Doing)/始めること(Start Doing)/加えること(Keep Doing)

  • 開始(Start)/中止(Stop)/継続(Stay)

  • ニコニコ/イライラ

  • 喜/怒/哀

  • 誇/謝

  • プラス/デルタ

また、フレームワークの選定過程ではふりかえり実践会『ふりかえりカタログ』に大変助けられました。

手法とその特徴が網羅的に載っているので、チームの状況に応じて使用しやすいものが見つかると思います。

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