Raspberry Pi Zero 2 Wはメモリが限られており、ヘッドレス(ディスプレイなし)運用を想定して**Lite版(GUIなしのOSイメージ)**を使う方も多いです。
しかし、Lite版では初期設定ウィザードがなく、SSHがデフォルトで無効になっています。
そこで、「SSHを最初から使いたいけどどうすればいいのか?」という疑問がよく出ます。
本記事では、Raspberry Pi Zero 2 WにRaspberry Pi OS Lite版をインストール後、SSH接続をすぐに有効化する方法と、セキュリティ上の注意点をまとめます。
目次
- Raspberry Pi Imagerの「Advanced settings」を使う方法(推奨)
- bootパーティションにファイルを置いて手動で有効化する
- ディスプレイとキーボードがあるならraspi-configで設定
- どの方法がおすすめ?
- SSHセキュリティに関する注意点
- よくある質問 (FAQ)
- まとめ
1. Raspberry Pi Imagerの「Advanced settings」を使う方法(推奨)
Raspberry Pi Imagerは、公式サイトからダウンロードできるSDカード書き込みツールです。
最新版(v1.6以降)には「Advanced settings」機能があり、GUI環境がなくてもSSHやWi-Fi設定を事前に有効化できます。
1.1. 手順の概要
-
Raspberry Pi Imagerのダウンロード&インストール
- 公式サイト へアクセスし、PCへダウンロード・インストール。
-
Imagerを起動して以下を選択:
- Operating System: “Raspberry Pi OS Lite (32-bit or 64-bit)” などのLite版
- Storage: 使用するMicroSDカード
-
画面右下の歯車アイコン (Advanced settings) をクリックして詳細設定を開く。
-
SSHを有効化し、初期ユーザー名・パスワードを設定する
- 例: 「Enable SSH (Use password authentication)」「Set username and password」
-
必要に応じてWi-FiのSSID/パスワードやロケール設定(言語、タイムゾーンなど)もここで指定可能。
-
「Save」してから 「Write」 を実行し、OSイメージを書き込む。
1.2. 起動とSSH接続
- SDカードをRaspberry Pi Zero 2 Wに挿入し、電源をつなぐ。
- 数十秒後、ネットワークに接続されればSSHが有効になっているはず。
-
IPアドレスを特定して、以下のようにSSH:
ssh <username>@<RaspberryPiのIPアドレス>
-
<username>
はImagerで設定したユーザー名 - パスワードもImagerで設定したものを入力
-
メリット:
- GUIなしでもOS起動直後からSSHが使える
- Lite版でもWi-Fiやロケール設定を一括で行える
- トラブルが少ないので、初心者にも非常におすすめ
2. bootパーティションにファイルを置いて手動で有効化する
「Raspberry Pi ImagerのAdvanced settings」を使わない場合、または別の書き込みツール(dd
、Etcher等)を使う場合は、bootパーティションを操作するのが定番です。
2.1. 「ssh」ファイルでSSHを有効化
- Lite版のイメージをMicroSDに書き込む。
- 書き込み後、SDカードをPCに挿し直すと、bootパーティション(FAT32) がマウントされる。
- そこに 空のファイルを作成し、名前を「ssh」(拡張子なし) にする。
- 初回起動時に自動でSSHを有効化してくれる。
2.2. Wi-Fi設定が必要な場合: wpa_supplicant.conf
Wi-Fiを使いたい場合は、同じ bootパーティション に wpa_supplicant.conf
ファイルを置きます。内容例:
country=JP
ctrl_interface=DIR=/var/run/wpa_supplicant GROUP=netdev
update_config=1
network={
ssid="Your_WiFi_SSID"
psk="WiFi_password"
key_mgmt=WPA-PSK
}
-
country=JP
は日本の場合(地域に応じて変更)。 - SSIDとパスワードを正しく入力。
2.3. 起動とSSH接続
- SDカードをRaspberry Pi Zero 2 Wに挿入し、電源を投入。
- 数十秒後にWi-Fiに接続され、DHCPでIPが割り当てられる。
- PCから
ssh pi@<RaspberryPiのIPアドレス>
とし、初期パスワード(例:raspberry
)を入力- OSバージョンによって異なる場合あり
3. ディスプレイとキーボードがあるならraspi-configで設定
もし ディスプレイ・キーボードを用意できるなら、Lite版でもコンソールから直接SSHを有効化できます。
- 起動後、ユーザー名・パスワードを入力し、コンソールログイン。
-
sudo raspi-config
を実行。 - 「Interface Options」 → 「SSH」 → 「Enable」。
-
sudo reboot
(必要に応じて)。 - ネットワークに接続後、SSHでログイン可能。
4. どの方法がおすすめ?
-
Raspberry Pi ImagerのAdvanced settings:
- 初心者にも最も簡単かつ、Wi-FiやSSH設定を一度に済ませられる
-
bootパーティションに「ssh」ファイル /
wpa_supplicant.conf
:- 独自のイメージ書き込みスクリプトを使う場合などに便利
- シンプルで確実
-
raspi-config:
- ディスプレイとキーボードをつなげる環境があるなら簡単
- Lite版でも使えるのでGUIがなくても問題なし
5. SSHセキュリティに関する注意点
上記の手順では簡単にSSHを有効化してパスワード認証を使っていますが、セキュリティ面では以下に注意が必要です。
5.1. 公開鍵認証の導入
- 最も安全なのは、パスワード認証を無効にして公開鍵認証を使うこと。
- ローカルPCで鍵ペアを作成(
ssh-keygen
)、Raspberry Piの~/.ssh/authorized_keys
に公開鍵を登録し、PasswordAuthentication no
と設定すれば、辞書攻撃をほぼ無力化できます。
5.2. パスワードを強固にする
- パスワード認証を残すなら、安易な文字列は避け、十分に複雑なパスワードを設定してください。
- 初期設定(例:
pi:raspberry
)をそのまま使うのは非常に危険です。
5.3. ポート変更やFail2banなど
- ポート番号を
22
以外に変更するとポートスキャンの頻度を下げられます(ただし本質的な防御にはならないことも多い)。 -
fail2ban
やufw
、その他ファイアウォールを活用し、ログイン失敗の連続をブロックする仕組みを導入するのも効果的。
5.4. ネットワーク構成で守る
- インターネットに直接公開するのではなく、VPN経由やローカルLAN内のみに制限するだけでも安全度は大幅に高まります。
- 公開せざるを得ない場合は、公開鍵認証+しっかりとしたFirewall設定を行いましょう。
6. よくある質問 (FAQ)
Q1. Raspberry Pi Zero 2 WのIPアドレスがわからない…
-
A1:
- ルーターの管理画面(DHCPクライアントリスト)で確認
- ネットワークスキャナツール(
arp -a
,nmap
など)を使う - ディスプレイを一時的につなげられるなら
hostname -I
で確認
Q2. 「ssh」ファイルを置いたのに接続できません
-
A2:
- ファイル名が「ssh.txt」など拡張子つきになっていないか要確認。拡張子なし「ssh」が必要
- OSバージョンによってはユーザー名・パスワードの設定が必須になる場合あり
- Wi-Fi設定(
wpa_supplicant.conf
)が誤っている可能性もあるので再チェック
Q3. GUIを後からインストールしたい
-
A3:
-
sudo apt update && sudo apt install --no-install-recommends raspberrypi-ui-mods
などで導入可能 - ただしZero 2 Wではメモリ512MBのため、重くなる可能性が高い
-
Q4. SSH接続がしばらくすると切断される
-
A4:
- Wi-Fiの省電力モードやルーターのアイドルタイムアウトが原因の可能性
- なるべく省電力機能をオフにする、または有線LANアダプタを使うなどを検討
Q5. Wi-Fiが繋がらない
-
A5:
-
wpa_supplicant.conf
の記述ミス(SSID/パスワード/国コード)が最も多い原因 - 2.4GHz帯を使えるか、暗号方式がWPA2-PSKになっているかも確認
-
Q6. Raspberry Pi OS以外のOSでも同じ「ssh」ファイル方式?
-
A6:
- 多くのLinux系で同様の仕組みがあるが、Ubuntu Server for Raspberry Piなどはcloud-init等が使われることも
- 公式ドキュメントやディストリビューションごとの案内を確認する
Q7. Windows/MacからSSHする場合、特別な設定は必要ですか?
-
A7:
- Windows 10以降は標準でOpenSSHクライアントが入っており、
ssh <user>@<IP>
でOK - Macもターミナルで同じように実行すればOK
- いずれも公開鍵認証に切り替えたい場合はキーを作成し、Piに登録する手順は同じ
- Windows 10以降は標準でOpenSSHクライアントが入っており、
Q8. SSHアクセス時に「host key mismatch」や「host key verification failed」が出ます
-
A8:
- これは、以前同じIPアドレスのホスト名で別のSSH鍵が登録されていたなどの状況。
- クライアントPCの
~/.ssh/known_hosts
内の該当エントリを削除(ssh-keygen -R <IPアドレス>
など)して再接続してみてください。 - セキュリティ上、原因を理解した上で行う必要があります。
Q9. 公開鍵を使おうとしているが~/.ssh/authorized_keys
に書き込めません
-
A9:
- Pi側で
mkdir ~/.ssh && chmod 700 ~/.ssh
をした後にファイルを作成。 -
chmod 600 ~/.ssh/authorized_keys
で権限を設定。 -
/etc/ssh/sshd_config
でPubkeyAuthentication yes
が有効か確認。 - これらを整えれば公開鍵認証が使えるようになります。
- Pi側で
7. まとめ
- Raspberry Pi OS Lite版は初期状態でSSHが無効化されているが、簡単な手順でヘッドレス運用が可能
- Raspberry Pi ImagerのAdvanced settingsを使うのが最もラクで、Wi-Fi・SSH・ロケール設定を一度に行える
- あるいはbootパーティションに「ssh」ファイルや
wpa_supplicant.conf
を置く方法、またはraspi-config
を活用 - SSHセキュリティには注意し、公開鍵認証などを導入して不正アクセスを防ぐのがおすすめ
これで、Raspberry Pi Zero 2 WにRaspberry Pi OS Liteをインストールした直後からSSH接続を有効化する方法と、セキュリティ上の配慮について解説しました。トラブルがあればこの記事を参考に原因を切り分け、安全で快適なRaspberry Piライフをお楽しみください!
参考リンク
- Raspberry Pi公式 - Software (Imager)
- SSH (Secure Shell) – Raspberry Pi Documentation
- Raspberry Pi ImagerのAdvanced settingsの日本語記事など
以上