エンジニアの中に「文言」を「もんげん」と読む人がいることに気づきました。僕は、「もんごん」と読み、「もんげん」には違和感があります。
よく考えてみると、「文言」は4通りの読み方があると思いました。
- ぶん・げん
- もん・げん
- ぶん・ごん
- もん・ごん
以上が音読みのパターンで、訓読みとして「ふみ・こと」という読み方もあるかもしれません。
呉音・漢音
気になって調べてみると、日本語のシステムとして同じ音読みにも大きく「呉音」と「漢音」の2つのタイプがあることが分かりました。あまり多くないそうですが「唐音」というもあるそうです。
漢字の読み
├── 訓読み
└── 音読み
├── 呉音
├── 唐音
└── 漢音
「文」を「もん」、「言」を「ごん」と読むのが呉音、一方の「ぶん」と「げん」は漢音だそうです。そして、熟語を読むときは呉音または漢音のどちらかで読み、呉音と漢音は基本的にまぜないのが日本語の傾向のようです。なので呉音と漢音がまじった「もんげん」や「ぶんごん」に違和感を感じるのはこうした習慣があるからです。ただ「人月(にんげつ)」のように呉音・漢音が混じった単語もあります。
なぜ複数の読み方があるか
漢字の読み方が一種類であったほうが混乱がなさそうです。では、なぜ複数の読み方があるのか?気になったので調べてみました。
結論から言うと、読み方が中国から日本に伝わった時期が違うのと、中国も方言があって読み方の起源になった地域が違うから、ということでした。
呉音
漢字というと奈良時代の遣隋使が日本に持ち帰ったイメージですが、それよりも前の5〜6世紀頃に伝来し日本で定着していた漢字音があって、それを呉音というそうです1。揚子江下流方面の南方方言からであろうと推定されている2ということなので、今の上海の近くの方言が呉音のルーツのようです。
呉音は仏教で使われることが多いそうです。「利益」を仏教で「りやく」というのは呉音の影響が強いためです。仏教が日本に伝来したのが5〜6世紀なので、呉音と仏教はもとからセットだったんでしょう。
漢音
一方の漢音は、8〜9世紀ごろに遣唐使が持ち帰ったものだそうです。遣唐使の多くが、唐の首都の長安に留学していたので、中国の現在の西安市付近の方言が、漢音のルーツのようです。
その後、792年に漢音を正しい読み方とする勅令が出たり、明治時代に西洋科学の専門用語の翻訳に漢音が使われたため、近代的な漢語は漢音がメジャーになったとのことです。「変化」の読みとして「へんげ」より「へんか」のほうが専門的に感じるのは、こうした歴史的な文脈があるからではないでしょうか。
見分け方
呉音・漢音の見分け方が気になり調べてみましたが、呉音・漢音の見分け方にあるとおり、一定の傾向はありそうですが、感覚を養っていく他なさそうな感じがします。