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社内DS目線で読み解くものづくり白書2023

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初めに

2023年のものづくり白書が公開されました(https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2023/index.html) 。業況、人材確保・育成、研究など様々な観点から記載された本情報について、製造業で社内データサイエンティスト(DS歴2年目のペーペー)である著者の目線から重要と思った情報をまとめます。

本文

特別に引用を示していない図表等は上記白書から引用している。

デジタル技術の活用動向と課題

社内でデジタル技術を普及させるにあたり頻出の質問として、他社ではどのような取り組みをしているのか、がある。本項では具体的な解答をするというより、統計的に日本の製造業がどんな情報かを白書内から読み解く。具体例は別項で記述する。

ポイント

  • 世界的なランキングは昨年から1つ順位を落として29位
  • デジタル技術活用企業は近年増加傾向
  • 導入した技術のTOP3は「CAD/CAM」、「生産管理システム」 、「ICT(情報通信技術)」
  • 導入により得られた効果のTOP3は「そのままの人員配置で、業務効率や成果が上がった」、「労働時間が減少した]、「経験の浅い社員や若手を配置しやすくなった」*印象的な特徴:第4位の「変化は特になかった」、第5位の「女性を配置しやすくなった」
  • 導入できていない企業の課題のTOP3は「導入・活用に関するノウハウが不足しているため」、「導入・活用できる人材が不足しているため」、「予算の不足など経済的に導入・活用が難しいため」
  • 部門や事業所をまたぐデータの管理・活用の課題は人材である

詳細

世界デジタル競争力ランキング(2022)において、 日本は1つ順位を落として29位である。一般的な高等教育はそこそこ、通信インフラなどは良い反面、デジタル系のスキルやデータの利活用で非常に順位が低い。
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参照:https://www.imd.org/centers/wcc/world-competitiveness-center/rankings/world-digital-competitiveness-ranking/

 国内のデジタル技術の活用状況がこちらである。近年増加傾向である。これは自分の主観とも一致しており、皆さんの想像とも一致しているのではないだろうか?「白書あるある」と言える中小企業の解答に引っ張られやすいという特徴を考慮すると、思ったより低いという意見があるかもしれない。
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 続いて、活用されているデジタル技術の分野はこちらである。CAD/CAMや生産管理システムといった設計・製造・生産管理における主役とも言えるシステムがメインであり、AIやビックデータはまだまだなのが実情である。特にビックデータの利用が乏しい印象がある。原因として、データの蓄積が進んでいない可能性が高く、これは筆者の肌感とも一致している。生産設備のビックデータ解析による品質の安定化・向上を例に考えると、季節性を考慮するには少なくとも1年以上のデータが必要であったり、モデルの評価用にさらに長期間のデータが必要になったりと、データ数に対する要求は大きい。また、説明変数になるデータを増やす、自動で取得するためにIoT化を先に進めてからビッグデータ利用を考えるべきだという人も多いだろう。しかしながら、仮に2年分のデータを貯めたとして、それですぐに結果が出せるのだろうか?ビッグデータを活用するにも技術・ノウハウが必要である。

 私は、できるところでビッグデータの分析技術の導入・活用を進めておくことで、社内にビッグデータ利用プロセスに関するノウハウを貯めておくことが必要だと考えている。そうすることで貯めたデータから効果を刈り取るまでの時間を短くする、データ蓄積期間そのものを短縮するといった取り組みも期待できる。そのためには現場現物を見て、生産設備や検査設備など工程内に使えそうなデータが眠っていないかを探すことも社内DSチームに求められる仕事だと思う。
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続いて、デジタル技術活用による人材配置の変化についてがこちらである。デジタル技術によりどういった効果が得られるかを試算するにあたり、参考になる項目だ。1位の「そのままの人員配置で、業務効率や成果が上がった」、2位の「労働時間が減少した」などは定量的に評価しやすく想像しやすい効果なのに対し、「女性を配置しやすくなった」、「高齢者を配置しやすくなった」というのは見落とされがちな効果だと思う。これからは「外国人労働者を配置しやすくなった」という項目が上位に来るかもしれない。「変化は特になかった」という項目がおよそ2割である点にも注目したい。効果が得られない(あるいは期待に達しない)場合、次のデジタル技術活用の足枷になりかねない。色々な事例を知ることで、どんな課題に対してどんな技術でどんな効果を得られるのかの知識を広げていくことが必要だと改めて感じる。
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 続いて、デジタル技術未活用企業における活用しない理由がこちらである。予算を直接の課題とした企業は思ったより少なく、社内ノウハウや人材の不足が1番の課題となっている。こういった企業とデジタル技術導入支援サービス企業、副業プラットフォーム、が上手く結びつくことで活用企業が増えていくことを期待する。個人的にも副業できるレベルの技量に達することで収入増のチャンスにつながると期待している。
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続いて、部門・事業所を跨いだデータの利用の割合と課題についてがこちらである。大企業も中小企業も変わらず35%程度しか利活用できておらず、その課題も人材がメインである。
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ジョブセキュリティ

本稿では、製造業やデジタル技術を専門とする職種におけるジョブセキュリティの観点で気になったトピックをまとめる

ポイント

  • 製造業に従事者の割合は減少トレンド
  • 学術・専門技術サービス業の若手人材とのコンフリクトがジョブセキュリティの観点では最大の懸念材料。要は専門性もビジネススキルの両方を磨かないと生き残れない可能性あり

詳細

初めに、就業者数における製造業従事者の割合である。直近数年でもやや減少傾向である。
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続いて、産業別就業者数の動向である。学術・専門技術サービス業の割合が増加しており、ジョブセキュリティの観点でコンフリクトする存在である。要は「外注すればいいや」に負けない専門性や成果が求められている。
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続いて、学部卒、院卒、博士の製造業への従事割合である。直近数年で見ると、就業者の割合において製造業従事率が若干下がっている。専門技術を持った人材の就業者数も、全体動向と同じように減少しているように見える。高専生の製造業従事率も下がっている。高専生=めちゃくちゃ優秀な人、という図式が頭にある私としては、こういった人材が技術サービス業に流れているのは恐ろしい。また、大学におけるDS系学部の増加も相まって、技術サービス業に従事する若手技術者の存在がジョブセキュリティ上の最大の懸念材料である。
先述したようにデジタル化の課題として人材不足を認識している企業が多い状況では職にあぶれるリスクは少ないようにも思えるが、果たして自分程度のスキルがあれば人材不足の解消になるのかは謎である。しっかり稼ぐには相応の力量が必要なので気を引き締めないと。
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## 外部環境の変化
ここでは、外部環境の変化について気になったトピックをまとめる。

ポイント

  • 中長期的な労働力確保、長期的な国内市場の縮小がリスク
  • GLobal Lighthouseに中国企業が多く認定されている

詳細

中期的な労働力確保、長期的な市場縮小がインパクトの大きな課題。そこに産業構造の変化が重なり将来の見通したが立ちにくい。
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手本となるような最先端工場を「Global Lighthouse(グローバル・ライトハウス)」として認定しており、2023年1月時点で、合計132の工場が選出されている。その分布を示した図がこちらである。中国企業の自社工場の数が多い点が目立つ。ドイツより多いという点に驚いた。実際に見てみたいものである。
シンプルに日本の製造業そのものの立ち位置が危ぶまれていると思う。目指す姿を間違えると一気においていかれかねないが、何を目指すべきなのかは正直よくわからない。
日立製作所 大みか工場
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面白かった個別事例

本項では、白書中で紹介された個別事例の中で業務に活かせそうな事例をピックアップする

生産管理システムによる「現場の見える化」及び経営層と現場との「橋渡し」人材の活用で、製品完成までの時間と品質のばらつきを改善・・・武州工業(株)(東京都青梅市)

「一個流し生産」におけるデジタル技術の活用方法と、現場でデジタル技術を普及させるための取り組み方法が紹介されている。要点だけまとめる。

  • 現場の見える化
    一個流し生産では生産量や品質の属人性が高い。これを解決するために、生産設備にスマホを取り付けて振動を監視した結果を社内システムに転送することで、工程の見える化を行う。生産が遅れている場合は作業者にスピードアップを促したり、そもそもの生産目標を変更するなどの取り組みを行う。検査設備の結果を日に数回分析することで、品質値が悪化傾向にあれば作業者に頻繁な確認を促す、改善傾向であれば確認回数を減らす、など実態に沿った指示を出す。
  • デジタル技術普及の取り組み
    現場でデジタル技術に興味のある人材をエバンジェリストとして育成する。指導役のDSとエバンジェリストという体制で工程のデジタル化に取り組む。別の会社でも現場に立ち上げたプロジェクトチームと、上位のDSによる現場改善を実施している企業あり。社内で完結させる場合の標準的なアプローチになるかもしれない。

わかりやすい図解集

  • 横軸がシェア、縦軸が市場規模、バルーンのサイズが市場における注目国の占める売上高、という図。対数化しているところ、1兆円規模の曲線が引いてある点なども含めてかなり見応えのある図。こんな図が書けるライブラリがあるんだろうか?
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以上。面白かった個別事例やわかりやすい図解集は追って更新するかもです。

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