自己紹介
株式会社エイチームウェルネスのデザイナー / マネージャーです。
現在自社アプリのUIデザインを担当しております。
こんな経験、ない?
- デザインの説明をしたけど、相手にしっかり伝えきれなくてもどかしい思いをした。
- 自分なりにデザインセオリーに則って正しいものを作って提案したはずなのに、受け入れて貰えなかった。
- A案B案を比較した時、圧倒的にA案が良いのだけどその良さを上手く伝えられずB案に決まってしまった。
これらはデザイナーなら誰しもが一度は経験があるのではないかと思います。
デザイナーはビジュアルを用いて情報を伝えることは得意ですが、
言語での説明が苦手な方が多い印象を持ちます。
今回は上記のようなことで悩んでいるデザイナーに向けて、言語化力の鍛え方をお伝えします。
言語化力を鍛えるのに一番手っとり早いのは、
「自分でデザインを売る経験を積む」 です。
受注が決まってから作る経験ではなく、勝つためのデザインを行うという経験です。
なぜデザインを売る経験を積むことで言語化力が鍛えられるのか?
それは、コンペで勝ったり、クライアントに気に入ってもらう為の戦略として、デザインの言語化が必須になってくるからです。
とはいえ…フリーランスや営業会社でない限り、制作会社でも事業会社でも基本はある程度分業なので、自分のデザインを自分で売るという経験は積みにくいのが現状です。
しかし、今から紹介するトレーニングを日々の業務や日常生活の中に取り入れることで、
言語化力を鍛えて伸ばすことが可能になります。
STEP1. まずは、状況説明をしてみる。
何でも良いので適当な素材(情報要素が多めの広告クリエイティブ推奨)を準備し、
Googleドキュメントなどに貼り付けておきます。
そして、何かしらの理由でその素材を見ることができない相手がいると仮定します。
その相手に対して、どんな広告クリエイティブなのかを相手がイメージできるよう、言葉で伝える練習をします。
例)
- 背景はxとxのグラデーションで、下の方がx色で上の方がx色。
- メインコピーは「xxx」というテキストで中央より少し上に配置されている。
- 中央にxxxに似ているキャラクターが配置されている。色はx色。x頭身くらいのサイズ。
- 注釈文が◯色で右下に「xxx」と書かれている。
最初はこのくらいの粒度でOKです。
各要素のサイズ感や位置関係をなるべく相手がイメージしやすいように言語化していきます。
これを毎日なるべく数をこなしていきます。
実はたったこれだけでも最初はスムーズに説明できないことも多いです。
この段階では声に出してアウトプットするだけでも良いですが、次のステップからはテキストで残しておけると後で見返した時に自分の成長が目に見えてわかるので面白いと思います。
このトレーニングをしておくと、業務でデザイン要素の特徴や位置関係を説明する時にスムーズに言葉が出てきやすくなります。
また、このトレーニングは手元にPCがなくてもいつでもできるのが良いところです。
通勤時に目にする電車内の広告・繁華街のデジタルサイネージ・スマホのターゲティング広告等、身近に使える素材が溢れていますので、隙間時間を活用してチャレンジしてみましょう。
STEP2. 仮説を言語化してみる。
次に、Step1で使用したクリエイティブを使い、1つひとつの要素に対してなぜこのフォントなのか、なぜこのサイズなのか、なぜこの色なのか、なぜこの位置なのか…というのを考えていきます。
そうすると、「きっとこういう理由だからこうしたんだろう」という理由が頭に浮かんでくると思います。
これはデザイナーなら割と日常的にやっていることであり、それを言語化しないままテクニックとして意識的に取り入れたりしているはずです。
しかし、ここで一旦しっかりと言語化するというプロセスを挟むことで、クリエイティブを研究する際ビジュアルとして見せるテクニックの習得だけでなく、ビジュアルを言語化して説明する力も一緒に付けることが可能になります。
そうすることで、自分が作ったクリエイティブやデザインの説明を求められた際に、しっかりと言語で伝えることができるようになっていきます。
慣れてくると、デザインカンプ等を作る際に「この部分はどうやって説明しようかな?」と頭の中でビジュアルを言語にトランスレートしながら手を動かせるようになってきますので、グラフィックやUIに対してツッコミが入った際にある程度納得感を与えられる打ち返しができるようになります。
STEP3. 実務で実践してみる。
目に見えるものをある程度言語化できるようになってきたら、早速実務で実践してみましょう。
いきなりプレゼンの場に出て試してみる…というのも良いですが、まずは身近な人を頼りましょう。
デザイン業務ではレビュー体制を設けているチームも多いはずです。
普段デザインレビューは作ったものを先輩や上司に見てもらってフィードバックをしてもらうという流れが一般的かと思いますが、ただカンプのURLを投げてフィードバックを貰うだけで終わっていないでしょうか?
それではもったいなさすぎます。レビューの時間の使い方や工夫1つで言語化能力をより鍛えることができます。
レビューをしてもらう際、最初に必ず自分で説明をすることを徹底して下さい。
仮に前提情報がわかっている相手だったとしても、時間の許す限り言語化のトレーニングに付き合って欲しいという話を事前に通しておくとスムーズです。
そして、今回このアウトプットに至った経緯やデザインの意図を説明してみて下さい。
勘の働く相手ならば、更にいろいろ突っ込んで質問をしてくれるはずですので、それに対して自分なりに頑張って言語化してみて下さい。
デザイナー相手への説明に慣れてきたら、次は他の職能のメンバー相手にもチャレンジしてみて下さい。特にデザインにおける知識や経験が少ないノンデザイナー相手では、より具体的且つ詳細な説明が求められますので難易度は非常に高いです。
時には百戦錬磨のプロでもなかなか言語化できないようなことまで突っ込まれることもあるので、そういう場合はどう振る舞うと相手に不快な思いをさせずにことを前に進められるかといったことも学ぶことができます。
とにかく職場では言語化する機会を積極的に設ける、ということを徹底して行ってみて下さい。
以上がデザイナーが言語化力を鍛えるための3ステップです。
文中でもトレーニングと称していますが、やはり筋トレと一緒で継続して鍛えることで力が付いていきます。日々の業務の中に強制的に仕組みとして組み込み、ぜひ継続してみて下さい。
さいごに。
ただ、デザイナーが一生懸命頑張ったところで、言語だけでは伝えられない部分も多く存在するのがデザインの難しいところでもあります。
特に職能の異なるメンバーでチームを組んで業務を進める上では、デザイナーだけに言語化能力を求めるのではなく、ノンデザイナーも目を養い、クリエイティブの良し悪しくらいは判断できるくらいの審美眼を持つことが重要だと考えています。
その為にも、デザイナーが言語という「共通言語」を使って説明し続けることは、チームのデザインに対する理解の促進につながるのではないかと思っています。