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Spinnaker+Kayentaでカナリアリリース Pipeline編 (local Kubernetes)

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はじめに

前回、Local環境にSpinnakerとKayentaを導入しました。
https://qiita.com/sugimount/items/0627f99b1bdabf511927

今回は、Spinnaker上にCanaryReleaseを行うための、Pipelineを設定します。

全体像

Kubernetesで何らかのサービスを提供している時の構成を、以下の構成と仮定します。

画像の左側に記載しているClientが、Kubernetes上のServiceを経由して、Deployment Prodで作成されるPodへアクセスする構成です。
ProdはVersion 1で稼働しています。
1104_4301.png

SpinnakerでCanaryReleaseを行う際には、新しいバージョン(Version 2)と現行バージョン(Version 1)のMetricを比較することにより、新しいバージョンに問題が無い事を確認する手法になります。Spinnakerを開発したNetflixやGoogleは、BaselineとCanaryを新たにDeployする方法を推奨しています。
もちろん、本番で稼働している環境を使用してMetric比較することは出来ますが、長時間稼働しているProdと、新たに作成するCanary間では、Metricの信頼度が異なる場合があるため、新たにBaselineを作成する構成を推奨しています。

DeploymentのProd, Baseline, Canary を同じServiceにぶら下げることにより、Podの数によってトラフィックを分散させる方法です。なお、Istioのように柔軟にトラフィックコントロールが出来るものを取り入れると、数ではなくより柔軟にコントロールが出来るのではないかと予想しています。
1180_4341.png

Canary分析に問題がなければ、Prod環境を全てVersion2に移行し、BaselineとCanaryは削除することにより、安全にリリースすることが出来ます。
1050_4131.png

PIPELINE構築

Application作成

SpinnakerでPIPELINEを定義するには、Applicationと呼ばれる枠組みを作成する必要があります。
Applicationメニューから、Create Application をクリック。Spinnaker上で、アプリケーションという枠組みを作成します。 (Kubernetesクラスタは何も変わりません)
1428_7581.png

適当に、Nameと Email を入力
615_5051.png

Applicationが作成されました。初期状態では、Canaryは有効になっていないので、有効にするためにCONFIGを選択します
1423_7571.png

FEATURES から Canary を選択して、Save Changes
1421_7581.png

画面を更新するために、一度Searchメニューを選択
1423_7611.png

Recently viewedから、作成したApplication 「testcanary2」 を選択します
1418_7521.png

元々、PIPELINE というメニューが、DELIVERY に変化しています。
1423_7211.png

CanaryConfig作成

DELIVERY - CANARY CONFIG メニューを開きます
1425_7581.png

Add configurationを選択
Canary分析の時に、何のMetricをどのように分析するかを設定します
1422_6901.png

今回はtest用にCPUのMetricを使用してカナリー分析を行います。
実際の本番環境では、アプリケーションの挙動に関するMetricをカナリー分析で利用すると良いです。
Webアプリケーションの場合は、HTTPステータスコード、応答時間、例外数、負荷平均などを確認すると良いとおもいます。

適当に Configuration Nameを入れます。 
Name: cpu-canary
1423_7521.png

まず、FILTER TEMPLATES で Add Templateを押します。
Canary分析のために、今回はPrometheusを使用しますが、Prometheusで収集しているMetricから、今回のアプリケーションで該当しているMetricのみ取得するようにFilterする設定となります。
1412_6741.png

以下のパラメータを入力します。
Name : cpu_filtertemplate
Template : pod_name=~"spinnaker-${scope}.*"
607_2571.png

上記のパラメータは、Canary分析で利用するMetricDatastoreに依存します。今回は、Prometheusを利用するため、Prometheusで「何のMetric」を「どのようにFilterする」というのを考えながら設定する必要があります。
今回は、testとしてPrometheusの「container_cpu_usage_seconds_total」のMetricを利用します。
下記の画像は、Prometheus上で「container_cpu_usage_seconds_total」のMetric表示させています
1587_7371.png

上記のMetricには、Labelに pod_name が付与されていて、該当のPod名前でFilterを行う事が出来ます。
Prometheus上でFilterを行うと、以下の式を指定すると、Podの名前が[spinnaker-prod]で始まるもののみ取得するようにFilterを掛けることが出来ます。
container_cpu_usage_seconds_total{pod_name=~"spinnaker-prod.*"}
Spinnaker上のFilterTemplateには、この式の {} 内に記載する文字列を指定します。
1587_5551.png

SpinnakerのFilter Templateには「pod_name=~"spinnaker-${scope}.*"」と指定していますが、scopeは、Pipeline上の変数を指定する形式のなります。
scopeは後述しますが、baselineという文字と、canaryという文字が入ります。これにより、Prometheus上のMetricを正しくFilterして評価することが出来ます。
609_2441.png

次に、Canary分析時に、どのMetricを使用するかを指定します。METRICSメニューで該当のMetricをグループ分けを行うことが出来ます。グループ分けを行うことで、グループごとにMetric評価の重みを付けることが出来ます。
DefaultでGROUP1が存在するので、これの名前を変更します。
1423_7581.png

CPUと名前を変更します
1424_7541.png

CPUグループ内で、Add Metricを押します
1417_7041.png

以下のパラメータを入力します。

  • Name : cpu_utils 任意の名前を指定します。
  • Fail on : CanaryとBaselineを比較した時に、Failとする条件を指定します。以下の3パターンあります。
    • Increase : 比較して増加している場合はFail
    • Decrease : 比較して減少している場合はFail
    • Either : 増加・減少の両方ともFail
  • Criticality : このMetricをFailと判断した場合は、即座にCanary分析を失敗とします。最重要なMetricが失敗したときの挙動の設定の用途です。
  • NaN Storategy : Metricが存在しない場合の処理内容を指定。Default(remove) は削除して計算を行う。
  • Metric Name : Prometheus上のMetricの名前を指定
    1581_7281.png

追加されます。
1578_6861.png

最後に、各グループの評価の重みづけを行います。
合計で100になるように指定します。今回は1グループしか存在しないので、100を指定します。
Canary分析のJudgeアルゴリズムは「NetflixACAJudge-v1.0」となっており、これは、指定した全てのMetricが成功した割合を基に、判定を行います。
例えばPassを75%と指定している場合は、100個のMetricのうち、75個が成功(pass)している場合は、Canary分析を成功と判断します。
1443_7631.png

CanaryConfigが作成されます。
1434_7571.png

Pipeline設定 初期設定

PIPELINESメニューを選択し、Configure a new pipeline を選びます。
1427_7531.png

名前を入れます。
623_2401.png

Pipelineの全体像で書いたように、以下のStepを作成していきます。
Step 1. Baseline(現行バージョン)とCanary(新バージョン)のDeploymentをDeploy
Step 2. Canary分析
Step 3. Canary分析をPassした場合は、Prodを新バージョンに入れ替え
Step 4. BaselineとCanaryを削除

まずは、Pipelineの初期設定(Configuration)を設定します。
Pipelineのトリガーは、DockerHubへ新たなImageがBuildされたことをトリガーにします。
Add Trigger を選択
1422_7591.png

Triggerに、DockerRegistoryを選択
1420_7291.png

DockerHubのRegistoryの場所を指定します。DockerHubのRegistory自体は、Halyardで設定しています。
1429_7511.png

Add Artifactを選択します。
1419_7141.png

Dockerを選択
1420_7221.png

DockerImageに、Trigger元に含まれているであろう情報を指定し、Save Changes を押します。
index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo
index.docker.io はDockerHubです。
1434_7651.png

Pipeline設定 Baseline, CanaryのDeploy

次に、Step 1 として、Kubernetesクラスタ上に、CanaryとBaselineのDeploymentを作成します。
クラスタ内には既に本番環境として Service や Deploymentが存在しています。

PIPELINE で Add stage を選択します。stage は、pipelineの中で、実行するタスクの単位となります。
1432_7531.png

Stageが追加されます。Deploy (Manifest) を選択します。注意点としてはManifestを直接扱う「Deploy (Manifest)」は、現在開発中のため仕様が変わる可能性があります。
1425_7611.png

Stage Name を入力
1430_7601.png

Manifestを指定する方法は、直接Textで指定する方法と、Artifactとして外部参照する方法があります。Artifactで参照する方法は、制限事項がおおく扱いにくいため、Textで扱う方式とします。
TextareaにManifestファイルを直接指定します。
1419_7621.png

張り付けるManifestファイルの例

- apiVersion: apps/v1beta2
  kind: Deployment
  metadata:
    labels:
      app: spinnaker
      source: demo
      stack: frontend
    name: spinnaker-canary
    namespace: default
  spec:
    replicas: 1
    selector:
      matchLabels:
        app: spinnaker
        source: demo
    template:
      metadata:
        labels:
          app: spinnaker
          source: demo
      spec:
        containers:
          - envFrom:
              - configMapRef:
                  name: spinnaker-demo-config
            image: index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo
            name: primary
            ports:
              - containerPort: 80
            readinessProbe:
              httpGet:
                path: /
                port: 80

Req. Artifacts To Bindを選択します。これにより、Textで指定したManifestファイルのimageの指定が、Trigger元のDockerHubのイメージtagに書き換えられます。
※ 書き換えには、Textで指定したイメージ名と、Trigger元のイメージ名が一致している必要があります。
Text : index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo
Trigger元 : index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.28
書き換え : index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.28
1425_7941.png

次に、BaselineをDeployするStageを設定します。
まず、現行環境のprodで使用しているイメージのタグ情報を取得するstageを追加します。
Add stage を選択し、Typeを選びます。
1421_7781.png

Stage Name と Depends On を選択します。
1415_7941.png

KubernetesクラスタからImage情報を取得するための、パラメータを指定します。
1426_8431.png

指定した条件を基に、下位のStageで使用するArtifact情報を生成します。
Produces Artifacts から、 Add Artifact を選択
1420_8261.png

Dockerの指定と、Docker image を指定します
index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo
1425_8351.png

これで、Prod環境で使用しているImage情報を、下位のStageへArtifactとしてお知らせする準備が出来たため、Baseline Deploymentを作成するStageを作ります。
Add stage
1437_7491.png

Typeなどを指定します
1431_8441.png

Manifestの内容をTextとして指定します
1411_8471.png

Manifestファイルを書き換える情報をbindします。どちらが find で生成した Artifact か判断できませんが、基本的には下側になっていると思います。下側を選びます
後程Pipelineの動作確認を行います。
1431_8301.png

保存します。
1441_7971.png

Pipelineの動作確認を行います。
Pipelineのメニューを開き、Start Manual Excution を選択します。
※ Pipeline のTriggerをDockerHub (SpinnakerがDockerHubをPullする形)を指定しているので、手動でPipelineを実行することが出来ますが、GitHubからWebHookでPushされる形にすると、基本的には手動実行は出来ません。Pushされる形で手動実行すると、Artifactが生成されないため、手動実行に失敗します。
1414_8231.png

対象のImageIDを指定します。
621_3391.png

実行されています。
1442_7741.png

正しく生成されています。IMAGES の列で、baselineとcanaryで正しいtagが使用されていることを確認します。

root@qicoo-k8s-master01(default kubernetes-admin):~# kubectl get deployments -o wide
NAME                 DESIRED   CURRENT   UP-TO-DATE   AVAILABLE   AGE       CONTAINERS    IMAGES                                              SELECTOR
spinnaker-baseline   1         1         1            1           50s       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.27   app=spinnaker,source=demo
spinnaker-canary     1         1         1            1           50s       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.28   app=spinnaker,source=demo
spinnaker-prod       1         1         1            1           12h       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.27   app=spinnaker,source=demo

Pipelineの実行が終了しています。
1440_7641.png

Pipeline設定 CanaryAnalysis

Canary分析を行います。
PipelineのConfigureを押します。
1432_7901.png

Add stage
1425_8491.png

Stageのパラメータを入力します。
1429_8561.png

Canary Config を入力します。

  • Acalysis Type : Real Time
  • Config Name : 作成済みのCanary Configを指定 (cpu-canary)
  • Interval : 1 minutes
  • Lookback Type : Growing
  • Baseline : baseline (ここで指定する文字列が、PrometheusからMetricを取得する際の、変数scope の値となる。CanaryConfigの中にあるFilterTemplateに使用される)
  • Baseline Location : default (これも同様に、FilterTemplate内で使用できるが、現在は使用していない。変数locationの値)
  • Canary : canary (ここで指定する文字列が、PrometheusからMetricを取得する際の、変数scope の値となる。CanaryConfigの中にあるFilterTemplateに使用される)
  • CanaryLocation : default (これも同様に、FilterTemplate内で使用できるが、現在は使用していない。変数locationの値)
  • Lifetime : 0 hours 1minutes (Canary分析で分析を行う期間を指定。推奨としては3時間といった長い期間が推奨されている。)
    1418_8111.png

Marginal : 50 (50%以上のScoreの場合は、人の目による判断を行う設定方法が出来る)
Pass : 75 (75%以上のScoreが出ると成功とする)
1437_7981.png

CanaryPipelineの動作確認
1431_8431.png

前回は、0.0.28を使用したため、今回はtestで0.0.27 を使用
609_3321.png

実行されています。
1428_7021.png

正常に実行出来た場合は、CANARY REPORTS のページで、カナリー分析の詳細を確認できます。
1425_8451.png

Pipeline設定 Prod環境へDeploy

Step3. Canary分析が成功した場合は、Prod環境をCanaryで使用したImageに置き換えます。
Add stage
1427_8261.png

stageのパラメータ入力
1417_8181.png

Manifestファイルを指定
1427_8551.png

ArtifactのBindを指定。上側の物が、Canary用の新しいバージョンだとおもいます
1435_8731.png

Pipeline設定 Baseline, Canaryの削除

Step 4. として、BaselineとCanaryで作成したDeploymentを削除します。
Add stage
1429_8351.png

Stageのパラメータ入力
1441_8481.png

削除対象のDeploymentのパラメータを指定し、保存します。
1441_8101.png

同様にCanaryも削除します。
Add stage
1428_8231.png

Stageのパラメータを指定します。
1434_7751.png

削除対象の情報を指定し、保存します。
1433_8071.png

動作確認のために、手動でPipelineを実行します
1435_8341.png

0.0.28を指定
615_3371.png

Baseline, CanaryのDeploy後のKubernetesの状態↓

root@qicoo-k8s-master01(default kubernetes-admin):~# kubectl get deployments -o wide
NAME                 DESIRED   CURRENT   UP-TO-DATE   AVAILABLE   AGE       CONTAINERS    IMAGES                                              SELECTOR
spinnaker-baseline   1         1         1            1           49m       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.27   app=spinnaker,source=demo
spinnaker-canary     1         1         1            1           49m       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.28   app=spinnaker,source=demo
spinnaker-prod       1         1         1            1           13h       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.27   app=spinnaker,source=demo

ProdをCanary用イメージに入れ替え後↓

root@qicoo-k8s-master01(default kubernetes-admin):~# kubectl get deployments -o wide
NAME                 DESIRED   CURRENT   UP-TO-DATE   AVAILABLE   AGE       CONTAINERS    IMAGES                                              SELECTOR
spinnaker-baseline   1         1         1            1           50m       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.27   app=spinnaker,source=demo
spinnaker-canary     1         1         1            1           50m       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.28   app=spinnaker,source=demo
spinnaker-prod       1         2         1            1           13h       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.28   app=spinnaker,source=demo

Baseline, Canaryを削除後↓

root@qicoo-k8s-master01(default kubernetes-admin):~# kubectl get deployments -o wide
NAME             DESIRED   CURRENT   UP-TO-DATE   AVAILABLE   AGE       CONTAINERS    IMAGES                                              SELECTOR
spinnaker-prod   1         1         1            1           13h       primary       index.docker.io/sugimount/spin-kub-v2-demo:0.0.28   app=spinnaker,source=demo

正常に実行されたことを確認できます
1417_7081.png

まとめ

SpinnakerとKayentaを利用して、CanaryReleaseを行うPipelineを確認出来ました。ただ、まだ以下の課題があると考えています。

  • Pipelineのコード化
  • CanaryAnalysisで利用するべきMetricの選択
  • MetricをPassかFailか判断するときのアルゴリズムが不明。(どれくらいの差であればPassとなるのか?Marginは設定可能なのか?)

Pipelineのコード化は、spincliで構成する方法があるようですので、これを確認したいと考えています。
CanaryAnalysisで利用するべきMetricについては、アプリケーションへの依存している部分が大きいため、アプリケーション専用のExporterを準備するやり方が良いのではないかと考えています。こちらもどういうやり方が良いかふくめて、引き続き検討したいと思います。

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