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Microsoft Office on Amazon EC2 を構築する手順と制限事項

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はじめに

AWS と Microsoft の FAQ に記載されている通り、AWS 以外の第三者会社による SPLA ライセンスの提供は、2025 年 9 月 30 日より後に使用できなくなります。例を挙げると、EC2 インスタンス上で Excel や Word といった Office 製品を利用している場合、2025 年 9 月 30 日より後はライセンス違反となってしまうため、別の方法を検討する必要があります。

2025 年 9 月 30 日以降でも利用できる一つの選択肢として、Microsoft Office がインストールされている AMI を利用する方法があります。AWS Marketplace で提供されている AMI を利用することで、AWS 利用料の中に、Excel などの Office 製品やリモートデスクトップの SAL ライセンスが含まれている形で利用できます。

この記事では、Microsoft Office on Amazon EC2 の AMI を構築して実際に操作を行い、挙動の理解を深めていきます。

制限事項

構築手順を紹介する前に、2024 年 3 月時点での制限事項をリストアップします。

  • Microsoft AD が必要
  • 1 台の EC2 インスタンスあたり、リモートデスクトップの同時接続数は 2 人まで。10 人登録して、2 人が同時接続する、といったことは可能。例えば、、
    • A さんと B さんの 2 人がリモートデスクトップで作業をしている
    • C さんが 3 人目としてリモートデスクトップで接続すると、上限に達しているメッセージが表示される
    • A さんがリモートデスクトップをやめると、C さんが接続できるようになる
  • Windows Server の OS は、Windows Server 2022 のみ
  • Microsoft Office のバージョンは、Microsoft Office LTSC Professional Plus 2021 のみ
    • Word, Excel, PowerPoint, Outlook, Access, Publisher etc
  • 管理者権限は、Microsoft AD 上の admin ユーザーでのみ利用可能
    • 一般ユーザーが管理者権限を取得すると、admin ユーザーの ID とパスワードの入力を求められる
  • Windows Server OS 内の言語は英語

もし上記の制限事項が難しい場合は、Workspaces の Office Bundle の利用も検討してみましょう。

前提条件 : Microsoft AD の構築

Microsoft AD が必要です。作業手順をざっくりスクリーンショットで紹介します。set up directory を選択します。

image-20240220211759924.png

Microsoft AD を選択

image-20240220211830572.png

適当に DNS name を指定

image-20240220211918486.png

適当に VPC や Subnet を指定

image-20240220212919028.png

Create Directory を押す

image-20240220212930706.png

Status が Creating から Active に変わります。

image-20240220221452069.png

Microsoft AD の IP アドレスを確認

10.29.136.20
10.29.149.218

image-20240220224153021.png

DHCP Option set を作成し VPC に設定

VPC の DHCP Option set を作成して、DNS の宛先を Microsoft AD に設定します。Microsoft AD はデフォルトで外部の DNS サーバーを参照しているので、Internet 側の名前解決は引き続き可能です。

Create DHCP option set を選択します。

image-20240220224251582.png

指定します。Microsoft AD に指定した Domain name や、Microsoft AD の IP アドレスを指定します。

sample.local
10.29.136.20, 10.29.149.218

image-20240220224552935.png

Edit VPC settings で作成した DHCP Option set を指定します。

image-20240220224642946.png

新規作成した DHCP Option set を指定

image-20240220224717493.png

RSAT 用の EC2 インスタンスを作成

Microsoft AD 上のユーザー作成などを行うために、RSAT 用の EC2 インスタンスを適当に作成します。Internet に情報が多くあるため、適当にググって作ります。

License Manager と Microsoft AD の連携

ライセンスのサブスクリプションを管理する License Manager の設定をします。Microsoft AD と連携を行います。

User-based subscriptions から Configure を選択します。

image-20240220224854244.png

以下を設定して、Configure を押します。

  • 対象にする Microsoft AD を指定
  • 利用する Product から、Office Professional Plus を指定
  • VPC Endpoint を作成する 対象の VPC と Subnet を指定 (下の画像では、6 個の Subnet を選択しているが、AZ の重複はできないため、実際は最大でも 3 個の指定になる)
  • VPC Endpoint に割り当てる Security Group を指定。ここで指定した Security Group から、

image-20240220225015455.png

設定変更が発生し、ぐるぐる回ります。数分まちます。

image-20240220225709089.png

Status が Configured に代わりました。

image-20240220231148541-1709454472166.png

Marketplace で Office Professional Plus 及び RDS SAL のライセンスをサブスクライブする

Marketplace で、「Office Professional Plus」と「Win Remote Desktop Services SAL」をサブスクライブします。

マネジメントコンソールで Marketplace を開き、以下のキーワードで検索します。

Offce Professional Plus

image-20240220231339859.png

Continue to Subscribe を選択します。

image-20240220231421213.png

Accept Terms を押します。

image-20240220231455331.png

Pending に変わります。

image-20240220231524697.png

Pending から以下の見た目にかわりました。

image-20240220231930291.png

License Manager のページで、Office Professional Plus が Inactive から Active に変わっています。

image-20240220231845077.png

同様に RDS SAL をサブスクライブします。以下のキーワードで Marketplace を検索します。

Win Remote Desktop Services SAL

image-20240220232039261.png

View purchase options を押します。

image-20240220232139987.png

Subscribe を押します。

image-20240220232204762.png

画面が変わりました。

image-20240220232233923.png

License Manager 上で、RDS SAL も Active に変わりました。

image-20240220232318549.png

Microsoft Office on Amazon EC2 の AMI を利用して EC2 インスタンスの起動

実際に Office がインストールされている EC2 インスタンスを作成していきます。EC2 インスタンスの設定ページで、Browse more AMIs を選択します。

image-20240220233139290.png

以下のキーワードで検索して Select を押します。

Office LTSC Professional Plus 2021

image-20240220233247018.png

Subscribe Now を選択します。

image-20240220233400864.png

AMI が選択されています。

image-20240220233452167.png

Network や Storage などを適当に選択します。今回は手順を Simple にするために Public Subnet を指定しますが、実際は Private Subnet と Sessions Manager との併用も検討しましょう。

image-20240303173836700.png

EC2 インスタンスに付与する IAM Role は重要です。Systems Manager と通信を許可する IAM Role を設定します。これを設定しないと構築に失敗します。次のように、EC2 を信頼するように Trust relationships も必要です。

{
    "Version": "2012-10-17",
    "Statement": [
        {
            "Effect": "Allow",
            "Principal": {
                "Service": "ec2.amazonaws.com"
            },
            "Action": "sts:AssumeRole"
        }
    ]
}

次の Document の「Systems Manager マネージドインスタンスのインスタンスプロファイルを作成するには (コンソール)」の欄を参考に IAM Role を作成し、指定しましょう。

image-20240222014841457.png

作成した EC2 インスタンスが無事立ち上がったので、試しにローカルの Administrator でリモートデスクトップをしてみます。

image-20240220235342699.png

こうなりました。ローカルの Administrator は Remote Desktop を禁止されています。

image-20240220235600086.png

Microsoft AD でユーザーを作成

Microsoft AD 上でリモートデスクトップをおこなう User を作成します。

image-20240221005731952.png

こんな感じの user001 で適当に作成します。

image-20240221005813530.png

License Manager でユーザーを紐づけ

License Manager で Microsoft AD 上のユーザーと EC2 インスタンスとの紐づけ作業を行います。EC2 インスタンスを作成してから、すぐに紐づけができるわけではなく最大 20 分くらい待機する必要があります。

製品を購読したら、その製品を含む AWS Marketplace AMI からユーザーが接続するためのインスタンスを起動する必要があります。AWS Systems Managerインスタンスを起動すると、そのインスタンスをドメインに参加させ、リソースの追加設定と強化を試みます。インスタンスを使用できるようにするための設定は、完了するまでに約 20 分かかることがあります。License Manager コンソールのユーザー関連付けページでインスタンスのHealth ステータスが Active であることを確認することで、リソースが使用可能な状態になっていることを確認できます。

以下のように、Instance configuration status が Preparing の場合は完了まで待ちます。

image-20240221002343041.png

この裏側では、Systems Manager の Inventry に登録されていて、Run Command が実行されている様子が確認できます。もしエラーになった場合は、このあたりも確認してみましょう。

image-20240221005401352.png

自分の環境では 約 10 分ほど待機すると、License Manager 上で Active になっていることが確認できます。Subscribe & associate users を選択します。

image-20240221005550939.png

Microsoft AD 上のユーザー名を指定して、Subscribe & associate users を選択します。

image-20240221005916953.png

Associated が 1 に変わりました。

image-20240221010637871.png

紐づけている User の一覧を確認できます。

image-20240221010704480.png

対象の EC2 インスタンスにリモートデスクトップしてみましょう。

以下のユーザーを指定して RDP 接続します。

sample.local\admin

リモートデスクトップができて、Office 製品がインストールされています。

  • Access
  • Excel
  • Outlook
  • PowerPoint
  • Word
  • など

image-20240221011229832.png

Microsoft Office LTSC Professional Plus 2021 が利用されています。制限事項にあるとおり、言語は英語です。

image-20240221011501463.png

2 台目のインスタンスを立ち上げ

動作確認のため、2 台目の EC2 インスタンスを立ち上げたあと、associate してみます。

image-20240222020327437.png

user 名を指定して Subscribe & associate users を選択します。

image-20240222020401972.png

2 台目に紐づけられました。2 台目も無事に 同じユーザー sample.local\user001 でRemote Desktop ができました。

image-20240222020421498.png

6 個のユーザーを 1 個の EC2 インスタンスに紐づける

1 台の EC2 インスタンスに 複数のユーザーを紐づけてみましょう。

Active Directory に以下の 5 名のユーザーを新たに作成して、6 名のユーザーを作成した状態にしています。

  • sample.local\user002
  • sample.local\user003
  • sample.local\user004
  • sample.local\user005
  • sample.local\user006

Subscribe を押します。

image-20240223020505262.png

複数のユーザーを紐づけます。紐づけ操作は同時に 5 人まで指定可能です。

image-20240223020614874.png

Progress している様子が見えます。ちょっと時間がかかります。

image-20240223020635641.png

一定時間後、正常に 6 人分紐づけができました。

image-20240223022002955.png

試してみると、user001 と user002 を利用して、同時に 2 人のリモートデスクトップ接続ができました。

image-20240223022110763.png

この状態で user003 で接続すると、既存で 2 つの Session が利用されている画面が表示されます。3 人目のユーザーの視点で、既存のリモートデスクトップのセッションを奪うアクションが可能です。

image-20240223022412883.png

user001 側の奪われる側の視点では、画面に「Remote Desktop のセッションを切断して、明け渡してもいい?」と聞かれます。OK を押すことで、user003 側に渡すことができます。30 秒クリックしないと自動的に切断もされます。

image-20240223022552889.png

OK ボタンを押すと、user001 側が切断され

image-20240223022614213.png

user003 が接続できました。

image-20240223022640789.png

仮に、user001 の画面で Cancel を押してみると、

image-20240223022445631.png

user003 の画面では、拒否された旨が表示されます。

image-20240223022455581.png

付録1 : 管理者権限について

  • 管理者権限について
    • user でログインして、管理者権限を求められたときに、以下のような画面が表示される。
    • この画面で admin とそれに紐づくパスワードを入れれば、管理者権限を取得可能。
    • ただ、ドメインの管理者権限を渡しちゃうようなものなので、かなり厳しいと想像する。

image-20240221011835458.png

付録2 : 1 人のユーザーを 2 台の EC2 インスタンスに紐づけたときの料金について

1 人のユーザーを 2 台の EC2 インスタンスに紐づけても、SAL Subscribe の料金が増えるわけではない。あくまで、User ベースの料金となるため、EC2 インスタンスの台数が増えても、それが直接 SAL Subscribe の料金には影響はしない。(EC2 や EBS の料金は増える)

1 人が 1 個の EC2 インスタンスにサブスクライブしているときの見え方

image-20240222012335485.png

1 人が 2 個の EC2 インスタンスにサブスクライブしているときの見え方。上と同じ。

image-20240223005720042.png

参考 URL

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