前回のつづきです。
Solving
物理モデルや境界条件などの設定をして、流体シミュレーションを実行する。
ここでの設定値は、末尾に掲載した参考文献に基づいています。あくまで一例なので、適宜目的とする条件に合わせて、同じまたは似たような条件のシミュレーションを行っている文献を参考にしてください。
メッシュファイルのインポート
Ansys Fluentを「Solution」モードで起動する。
作成したメッシュファイルをインポートする。File>Read>Meshで、目的のメッシュファイルを選択し、インポートする。
メッシュを表示する。Domain>Mesh>Displayをクリックすると、以下のウィンドウが開く。
Optitonsで、Edgesを✅すると、メッシュが表示される。Facesを✅すると、面が表示される。
Transparencyを50%ほどに設定すると、Facesが透けて中の構造も見えるようになる。
次に、Domainタブに移る。
メッシュのクオリティを確認する。Mesh>Check>Perform Mesh Checkをクリックする。Consoleに結果が表示される。「Done.」と書かれていることを確認する。さらに、Mesh>Quality>Evaluate Mesh Qualityをクリックする。Consoleを見て、
- Minimum Orthogonal Qualityが0.1以上であること
- Maximum Aspect Ratioが1.2以下であること
を確認する。
最後に、温度の単位をK(ケルビン)からC(セルシウス温度)に変更する。Mesh>Unitsをクリックし、Set Unitsのウィンドウが現れたら、Quantitiesの中からtemperatureを選択し、UnitsをKからCに変更する。これにより、温度をセルシウス温度で表示してくれるようになる。
Physicsの設定
Physicsタブに移る。
Solver
Solver>Generalをクリックする。画面中央の「Task Page」ウィンドウに注目する。「Solver」を以下のように設定する。
item | Setting |
---|---|
Type | Pressure-Based |
Velocity Formulation | Absolute |
Time | Steady |
Models
PhysicsタブのModelsにあるEnergyを✅する。これにより、温度のシミュレーションができるようになる。
次に、Viscousを設定する。ここで、流体の物理モデルの設定を行う。
item | setting |
---|---|
Model | k-epsilon(2 eqn) |
k-epsilon Model | Realizable |
Near-Wall Treatment | Standard wall Functions |
それ以外の項目はデフォルトのままにする。
日射による影響を考慮する場合は、Radiation Modelも設定する。
item | setting |
---|---|
Model | Surface to Surface (S2S) |
Solar Load Model | Solar Ray Tracing |
Solar Loadの「Solar Calculator」をクリックする。ここで、シミュレーションをする場所(緯度経度)や日時を設定する。
Global PositionとDate and Timeでは、シミュレーションしたい場所と日時を設定する。以下、8月1日12:00 札幌市でのシミュレーションの例を示す。
item | e.g. |
---|---|
Longitude | 141.35 |
Latitude | 43.06 |
Timezone | +9 |
Day | 1 |
Month | 8 |
Hour | 12 |
Minite | 0 |
Applyボタンをクリックし、設定を適応する。
Illumination Parametersは以下のように設定する。
1 | 2 | 3 |
---|---|---|
Direct Solar Irradiation | constant | 288.80 |
Diffuse Solar Irradiation | constant | 346.63 |
View Factorを作成する。View Factors and Clusteringの「Compute/Write/Read」をクリックする。保存場所やファイル名を適切に設定して、保存する。
Materials
Materials>Create/Editをクリックし、Materialを追加していく。
concrete(建物用)
まず、Material TypeはSolidを選択。Nameにconcreteと入力し、変更する。Chemical Formulaはalを削除し、空欄にする。次に、Propertiesを以下のように設定する。
1 | 2 | 3 |
---|---|---|
Density | constant | 930 |
Cp | constant | 840 |
Thermal Conductivity | constant | 0.86 |
「Change/Create」ボタンをクリックする。画面左にあるOutline View ウィンドウのMaterials>Soildを展開し、concreteが追加されているか確認する。
asphalt(地面用)
concreteと同様にasphaltを追加する。
1 | 2 | 3 |
---|---|---|
Density | constant | 1700 |
Cp | constant | 1000 |
Thermal Conductivity | constant | 0.9 |
Zones
Zones>Boundariesをクリック。
それぞれの境界条件を設定していく。
bldg
建物の境界条件を設定する。建物に該当するZoneをダブルクリックすると、そのZoneの境界条件を設定するウィンドウが現れる。
Momentumタブでは以下のように設定する。
item | setting |
---|---|
Wall Motion | Stationary Wall |
Shear Condition | No Slip |
Roughness Models | Standard |
Roughness Height | 0.08 |
Roughness Constant | 0.5 |
Thermalタブに移り、以下のように設定する。
item | setting |
---|---|
Thermal Conditions | Heat Flux |
Material Name | concrete |
Heat Flux | 0 |
Wall Thickness | 0.3 |
Heat Generation Rate | 0 |
ground
地表面の境界条件を設定する。groundをダブルクリックする。
以下の設定以外は、すべてbldgと同様。
Momentumタブ
item | setting |
---|---|
Roughness Height | 0.2 |
Thermalタブ
item | setting |
---|---|
Material Name | asphalt |
inlet
inletでは、風向きを設定する。気象庁が公開する気象データ等を参照し、風速を決定する。inlet面に対して垂直方向に風向きを設定する場合は、Momentumタブで以下のように設定する。
item | setting |
---|---|
Velocity Specification Method | Magnitude, Normal to Boundary |
Reference Frame | Absolute |
Velocity Magnitude | *風速を設定 |
Supersonic/Initial Gauge Pressure | 0 |
温度の設定は、Thermalタブで行う。
こちらも気象データを参照し、適切な値を設定する。
others
その他のoutlet、lateral_boundaryなどは設定を変更する必要はない。
Solution
Solutionタブに移る。
Scheme
Solution>Methodsをクリック。以下のように設定する。
item | setting |
---|---|
Scheme | SIMPLE |
Gradient | Least Squares Cell Based |
Pressure | Body force weighted |
Momentum | Second-order upwind |
Turbulent Kinetic Energy | Second-order upwind |
Turbulent Dissipation Rate | Second-order upwind |
Energy | Second-order upwind |
Save
ここまでの設定を保存する。
File>Write>Caseをクリックし、ファイル名を決め、保存する。
Initialize
Solutionタブに移り、Initialization>Initializeをクリック。
「done」がConsoleに表示されたら、OK。
Calculate
Run CalculationのNo. of Iterationsに300と入力する。
参考とした文献では、No. of Iterationsを6000と設定しているが、Iterationの回数を増やすほどシミュレーションに多大な時間を要するため、ここでは300と設定した。
そして、「Calculate」ボタンをクリック。シミュレーションが開始する。
以下のように、残差(Residuals)が逐次更新されていく。
画面右下では、進行状況がパーセンテージで確認できる。
パソコンのスペックや、メッシュファイルのデータサイズなどにもよるが、シミュレーション終了まで最短で20-30分くらいかかる。
-次回に続く-
参考文献
Adelia et al., Tool comparison for urban microclimate modelling (2020) -シミュレーションの設定値はこの文献の「3.2 CFD Simulation」の表に従った。