この記事は GLOBIS Advent Calendar 2020 の16日目の記事です。
今回の記事では、自分の所属しているチームでのスプリントレトロスペクティブ(振り返り)の方法について紹介したいと思います。
スクラムイベントは形式的になりがち
スクラムを導入したチームが陥りがちな状態のひとつが、スクラムイベントが形式的なものになってしまうことです。
「デイリースクラムでメンバーが3つの質問に答える」「レトロスペクティブでKPTをする」のようなプラクティスは導入したものの、そのプラクティス自体の効果測定や見直しはあまり出来ておらず、毎スプリント表面的にスクラムイベントの手順をなぞるだけ、という状況を自分もよく見てきました。
先月アップデートされたスクラムガイド1は、スクラムイベントの指示的な内容が削除され、それぞれのチームがイベントの目的を踏まえて最適なやり方を議論し、改善していけるようなガイドになっています。
また、スクラムイベントの手順の見直しがされているチームでも、いつもスクラムマスターが改善を主導しており、主体的に自分たちのスクラムを改善する動きがまだ少ない、というチームもあると思います。
こういった状態に陥らないよう、自分のチームではスクラムイベントの進め方を自分達で改善し続けるための「議事録テンプレートによるスクラムイベントの手順管理」を行っています。
議事録のテンプレートとしてレトロスペクティブの手順を管理する
自分のチームではドキュメントツールとしてnotionを利用しています。notionにはテンプレート機能があり、柔軟にドキュメントの雛形を作成することができます。
レトロスペクティブの記録もnotionに残しており、そのテンプレートの一部はこんな風になっています。
テンプレートは以下のように運用します。
- テンプレートには、チームがレトロスペクティブで行う検査と適応のための手順をすべて書き出す
- 手順に従えば誰でもイベントの進行ができるように書く
- スプリント毎のレトロスペクティブではテンプレートから議事録を作成し、手順に沿ってイベントを進める
- レトロスペクティブでイベントの手順自体の変更が提案されたときは、その手順変更をテンプレートに反映する
議事録テンプレートのメリット
テンプレートとしてレトロスペクティブの手順を管理することには、いくつかのメリットがあります。
今チームが採用しているイベントの進め方を、参加者全員が意識できる
議事録に検査や議論の結果を残すだけではなく、どんな手順を踏んでいるかが議事録の見出しとして参加者の目に入ることで、**「今自分たちはどんな進め方でチームを改善しようとしているのか」を常に意識することができます。**チーム改善の主体をスクラムマスターでなくチームメンバー全員とする第一歩として、自分たちがどういう進め方をしているのかを客観的に意識できることは大きなメリットでした。
この効果をより高めるため、自分のチームでは必ず議事録を全員で見ながらイベントを進めています。Zoomなどのビデオ会議なら、ファシリテーターや書記が議事録を常に画面共有します。オフラインならプロジェクターで投影するなど、全員が議事録に視線を向けながら議論できる状態をつくります。議事録に書かれた手順を全員で見ながらイベントを進めることで、イベント中も自分たちがどういう手順を採用したか?なにか改善の余地はないか?を意識できるようになり、チームの改善もより進むようになりました。
イベントの手順変更のハードルが下がる
手順の変更は容易です。「次スプリントから○○という指標を計測したい」とチームが考えたとき、やることはテンプレートに手順を一つ追加するだけです(もちろん計測するための記録は別途考える必要があります)。この手軽さはチームがスクラムイベントの手順を変更するハードルを大きく下げていると思います。
また、手順の削除も簡単にできるため、効果が期待できない検査プロセスがイベントに残りつづけてイベントの時間を浪費することも少なくなりました。
また、決めた手順がそのままイベントの運用の議事録となるため、決めたルールと実運用の乖離が防ぎやすいのもメリットのひとつです。
スクラムチームの誰でもイベントの進行ができるようになる
テンプレートの運用が回れば、書かれた手順に従ってスクラムチームの誰でもイベントの進行ができるようになります。自己管理型のチームを目指す上では、スクラムイベントの運用はスクラムマスターだけではなく、メンバーの誰でもできるようにしておきたいところです。
notionならレトロスペクティブの手順のほとんどが1サービスで完結する(かもしれない)
notionにはデータベースの機能があり、そのデータをドキュメントやテンプレートから柔軟に参照することが可能です。それを活かし、レトロスペクティブで継続してウォッチしたい指標を議事録テンプレートにあらかじめ埋め込んでおくと、イベント中他サービスを参照する必要がなくなり便利です。
こちらは直近一ヶ月のベロシティ一覧をテンプレートに埋め込んだ例です。議事録のドキュメントから直接ベロシティを登録することもできます。
notionのデータベースはGoogleスプレッドシートなどと比べると機能は限られますが、複雑な集計などを必要としないデータの蓄積であれば利用できるケースも多いと思います。
KPTボードも作れ、もちろんこのままテンプレートに埋め込むこともできます。
notionデータベース以外にもnotionのドキュメントに埋め込めるサービスは複数あり、「notionの議事録上のみでレトロスペクティブのすべてが完結する」ことも頑張れば可能です。ぜひチームのレトロスペクティブの進め方に合わせてカスタマイズしてみてください。
おわりに
今回の記事では、notionのテンプレート機能を使ったスプリントレトロスペクティブの改善方法について紹介しました。
何かの参考になれば幸いです。