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JavaScriptの初歩の初歩

Last updated at Posted at 2016-06-26

JavaScriptの初歩の初歩

はじめに

この文書は,JavaScript入門のための簡単なintroductionです.

JavaScriptはどうやって作られた?

JavaScriptは,古のNetscape社のエンジニアであるブレンダン・アイク氏が開発しました.
開発当時はLiveScriptと名乗っていて,同じ頃に開発されたJava言語が流行しそうだと感じた経営者が,LiveScriptの名称をJavaScriptに変更させました.
つまり,JavaとJavaScriptの間には何の関係もありません.
なお,略称はJS(ジェイエス)とよぶのが普通です.
決して「ジャヴァスク」とは呼びません.

その後,MicroSoft社のInternetExplorerにも採用されました.
しかし,ブラウザ戦争が勃発したため,各ベンダーはJavaScirptの独自拡張を繰り返し,互換性が低いものとなってしまいました.
そこで,ISOやIEEEなどでJavaScriptを規格として定めようとする動きが始まりました.
最終的に,ECMA(欧州発の情報通信システム分野における国際的な標準化団体)によって規格化され,正式な企画名はEcmaScriptと呼ばれています.
バージョンアップが繰り返され,現在では~~EcmaScript2015が定められており,それに続くEcmaScript2016も話し合いが続けられています.~~EcmaScript2016の仕様が決定されました。

JavaScriptはどこで動く?

基本的にWebブラウザの上で動かしますが,最近ではNode.jsやRhinoのようにブラウザ以外で動作させる環境が出てきています.
Webブラウザ上で動作させるためのインタープリタは,ブラウザごとに様々な実装があります.
例えばFirefoxではSpiderMonkeyと呼ばれるエンジン(インタープリタなどを含めた実行環境のこと)を搭載しています.
その他の実装を以下に示します.

ブラウザ 開発元 JSエンジン
Firefox Mozzila SpiderMonkey
Chrome Google V8
Safari Apple Nitro
Edge Microsoft Chakra
Node.js ライアン・ダール氏 V8

JavaScriptの基本文法

JavaScirptはオブジェクト指向言語の考え方と関数型言語の考え方を取り入れています.
しかし,ここで言うオブジェクト指向言語は,Javaなどで採用されているClass-Instanceの構造とは異なります.
ちょっと強引な解釈ですが,JavaScriptでは全てがオブジェクト(Instance)であり,新たに作成するオブジェクトは元となるオブジェクトの株分けのような存在となります.

はい,訳が分からないですよね.

難しい話は置いておきましょう.
ここで重要なのは,Javaなどではint型やdouble型,その他のクラスで構成される型がありましたが,JavaScriptではそれら全てがオブジェクトです.
例えば以下のコードを見てください.

console.log( "Hello, World" );

上記コードのみで,Hello,Worldを表示できます.
CやJavaと異なり,面倒な宣言(クラスやメソッド定義のためのおまじない)などは不要です.
なんとなく,楽そうというイメージが伝われば幸いです.

続いて,もう少しJavaScriptらしいコードを見てみましょう.

var a = [];
a.push( 5 );
a.push( 3.2 );
a.push( "hoge" );

1行目の「var」ですが,これはJavaScriptの変数宣言です.
型は代入するオブジェクトによって決まるので,とにかく何でもかんでもvarで宣言します.
右辺の「[]」ですが,これは空の配列を表しています.
JavaScriptでは全てがオブジェクトであり,配列には全てのオブジェクトを代入することができます.

2行目から4行目は順に,整数,小数を含む数値,文字列を配列に入れています.
pushは,配列の末尾にカッコ内のオブジェクトを代入するというメソッドです.

変数に代入できるもの

それでは続いて,関数を定義してみましょう.

function plus( x, y ) { return x + y; }
console.log( plus( 2, 5 ) );

上記コードの1行目で関数plusを定義しています.
内容は,2つのパラメータxとyを足して返すだけの簡単な関数です.
この例では1行に書きましたが,通常は複数行に分けて書きます.

2行目でplusを使って足し算を行い,表示しています.

続いて,同じような働きをする以下の様な書き方を見てみましょう.

var plus2 = function( x, y ) { return x + y; }
console.log( plus2( 2, 5 ) );

上記コードでは,1行目の右辺で無名関数を定義しています.
無名関数とは,functionと括弧の間にあるはずの関数名がない,名前の無い関数です.
しかし,名前が無いと使うことができないので,上記のように左辺のplus2に代入しています.
実は,JavaScriptにとっては,関数もオブジェクトなので,上記のように変数に代入することができます.

そのように定義した無名関数は,代入された変数名を使って2行目のように普通の関数と同じように実行することができます.

無名関数の使いドコロ

結局変数に代入して名前をつけるなら,名前有りの関数を定義すればよいのではないか?と思う人もいると思います.
その疑問は正しいです.

ですが,JavaScriptのような関数型言語においては,無名関数を使用する場面はたくさんあります.
いきなり難しい例を出して混乱するといけないので,肩慣らしから入ります.

function times_define( x ) { return function( y ) { return x * y; } }
var times = times_define( 2 );
console.log( times( 5 ) );

上記コードは,1行目でtimes_defineに倍率xを渡すことで,パラメータをx倍する関数を返してくれる関数を定義しています.
そして2行目で2倍する関数を定義し,変数timesに代入します.
3行目は実際に関数timesを使用して計算をする例です.

参考までに,1行目の中で返される関数は,無名関数です.
動作の変わる関数を定義して,その後の処理を簡単にするために使われることが有ります.

名前有り関数で同じようなことをしたくても,名前有り関数はJSエンジンが実行前に全ソースコードをチェックして,実行される前に定義されてしまうため,このような使い方はできません.
なお,1行目の例は無名関数を直接返していますが,一旦変数に代入してから返すことも可能です.

無名関数のもっと普通の使いドコロ

さて,もっと実践的な使い方を見てみましょう.
今度は,Webページのボタンの処理の書き方です.

<button id="btn1">押してね</button>
var btn = document.getElementById( 'btn1' );
btn.addEventListener( 'click', function( event ) { console.log( "ボタンが押された" ); });

このように書いておくと,ボタンが押されたらコンソールに"ボタンが押された"と表示します.
1行目のdocument.getElementByIdは,第1パラメータで与えられたidの要素を取得する関数です.
2行目のaddEventListenerは,btnで表される要素にイベント処理を追加する関数です.
この例では,クリックされた場合の処理を追加しています.

これまでにJavaScriptのサンプルを見て何気なく使ってきた人がいるかもしれませんが,これも立派な無名関数です.
もう少し説明すると,コンソールに表示するという無名関数を定義して,addEventListener関数の第2パラメータとして渡しています.
例によって,無名関数を変数に代入しておくと,以下の様な記述も可能です.

var btn_func = function() { console.log( "ボタンが押された" ); }
var btn = document.getElementById( 'btn1' );
btn.addEventListener( 'click', function( event ) { btn_func(); });

クラス定義

元々JavaScriptにはクラスという概念はありませんでした.
しかし,それでは不便だということでEcmaScript2015からクラスの概念が導入されました.
(実はEcmaScript2015の1つか2つ前の企画策定の段階でクラスの導入が叫ばれていたのですが,反対派によって握りつぶされたという苦い経緯が有ります)

クラスの書き方の例を示します.

class foo {
  constructor( x ) {
    this.x = x;
  }
  getX() {
    return this.x;
  }
  setX( x ) {
    this.x = x;
  }
  incX() {
    this.x++;
  }
}

var f = new foo( 5 );
console.log( f.getX() ); // => 5
f.incX();
console.log( f.getX() ); // => 6

上記コードの文法をJavaと比較すると,違う点がいくつか目立ちます.

  1. コンストラクタがconstructorである
  2. インスタンス変数の宣言がない(this.xが初めて出てきた時点で作られる)
  3. メソッドの返り値の型を指定しない(そもそも型を気にしない言語なので)

それ以外は,プライベートインスタンス変数が存在しないこと以外はだいたい同じように使えます.

thisとイベント処理とラムダ式

ここまで分かったら,クラスを作成して,ボタンがクリックされたら何か処理を行うようにしたくなりますよね?
ところがここで落とし穴があります.
もう少し細かく言うと,イベント処理に落とし穴があります.

クラスの中で以下のようにイベント処理を記述したとします.
クラス定義のサンプルから増えているのは4,5行目です.
ボタンが押されたらxを増やすという処理を付け加えたつもりです.

class foo {
  constructor( x ) {
    this.x = x;
    var btn = document.getElementById( 'btn1' );
    btn.addEventListener( 'click', function( event ) { this.incX(); } );
  }
  getX() {
    return this.x;
  }
  setX( x ) {
    this.x = x;
  }
  incX() {
    this.x++;
  }
}

しかし,上記コードではクリック時にエラーが発生します.
解説すると,addEventListener内では「thisはイベントが発生したオブジェクト」を指します.
つまり,この例ではボタンです.
ボタンにincXという関数が定義されていることはないので,ここでエラーとなります.
なぜこのような作りになっているのかという経緯を説明すると長くなるのでカットします.

ここで以下のようにラムダ式を使うと想定通りの結果になります.
コンストラクタのみ書きます.

  constructor( x ) {
    this.x = x;
    var btn = document.getElementById( 'btn1' );
    btn.addEventListener( 'click', ( event ) => { this.incX(); } );
  }

ラムダ式というのは,無名関数を完結に記述する文法と説明されることが多いのですが,JavaScriptではその意味が異なります.
まずはラムダ式の文法を見ていきましょう.

丸括弧内に受け取るパラメータ名を列挙します.
上記の例では1つですが,複数書くことも可能です.

次に「=>」を書きます.
一節によるとこの記号がλに似ていると言われています.

続いて実行する処理を書きます.
上記の例では1行ですが,当然複数にまたがった処理を記述することも可能です.

文法の確認のため,以前の例をラムダ式を使って書いてみます.

var times_define = ( x ) => { return y => x * y; }
var times = times_define( 2 );
console.log( times( 5 ) );

1行目の中カッコ内でラムダ式(y => x * y)によって定義された無名関数を返すという処理「return y => x * y;」を書いています.
括弧がないのは省略形です.

そして,定義された処理を含むラムダ式を定義して,times_defineに代入しています.

と言うわけで,無名関数の省略形として使うこともできるラムダ式です.
さて,無名関数とラムダ式で何が異なるかというと,「無名関数内のthisは,無名関数が実行されるときにthisである」のに対して「ラムダ式内のthisは,ラムダ式が定義されているときのthisである」ことが最大の違いです.
つまり,「thisに関して苦労したくなければラムダ式を使え」ということになります.

ちょっとややこしく感じるかもしれませんが,そういうものだと思ってください.

Canvasを使おう

あまり基礎ばかり説明しても嫌になってしまうので,基礎確認のための応用編に入ります.
ここでは,HTML5で定められた描画のための要素であるCanvas要素を使って,お絵描きをします.

<canvas id="canvas1" width="400" height="400"></canvas>
var element = document.getElementById( 'canvas1' );
var context = element.getContext( '2d' );

上記のようにHTML内でCanvas要素を定義しておきます.
続いて,JavaScriptの1行目のように要素を取得し,2行目のようにグラフィックコンテキストを取得します.
グラフィックコンテキストとは,描画する対象を表すオブジェクトです.
以後,このグラフィックコンテキストに対して線を書くなどのメソッドを使用します.

JavaScriptの実行時にエラーが発生!?

上記をファイルにしたものを以下に示します.
これまで特に説明してきませんでしたが,JavaScriptのプログラムはHTMLの中に記述することができます.

<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
  <meta charset="UTF-8">
  <title>Document</title>
  <script>
    var element = document.getElementById( 'canvas1' );
    var context = element.getContext( '2d' );
  </script>
</head>
<body>
  <canvas id="canvas1" width="400" height="400"></canvas>
</body>
</html>

さて,Webブラウザで上記ファイルを読み込むと・・・エラーが発生します.
何故かと言うと,このような書き方をすると,Webブラウザ内でCanvasなどの要素を配置する前にプログラムが実行されてしまい,「'canvas1'なんて無いよ!」とエラーになってしまいます.

そこで,ちょっと面倒ですが以下のように記述します.

<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
  <meta charset="UTF-8">
  <title>Document</title>
  <script>
    window.addEventListener("load", function() {
      var element = document.getElementById( 'canvas1' );
      var context = element.getContext( '2d' );
    });
  </script>
</head>
<body>
  <canvas id="canvas1" width="400" height="400"></canvas>
</body>
</html>

大きく違うのは7行目です.
この行は,windowに対して,「このページン関する全ての準備が整ったら第2パラメータで与えられた関数を実行せよ」という意味を持ちます.

次に,実際に描画する処理を加えたソースを示します.

<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
  <meta charset="UTF-8">
  <title>Document</title>
  <script>
    window.addEventListener("load", function() {
      var element = document.getElementById( 'canvas1' );
      var context = element.getContext( '2d' );
      element.addEventListener( 'click', ev => {
        var rect = ev.target.getBoundingClientRect();
        x = ev.clientX - rect.left;
        y = ev.clientY - rect.top;
        context.beginPath();
        context.moveTo( x, y );
        context.lineTo( x+1, y+1 );
        context.stroke();
      })
    });
  </script>
</head>
<body>
  <canvas id="canvas1" width="400" height="400"></canvas>
</body>
</html>

基本的にはCanvas要素に対してクリックのイベントを付けてあげて,そのイベント処理の中で座標を取得して点を打っています.

Canvasに描画するメソッドを以下に示します.

メソッド 意味
beginPath 描画開始
moveTo 描画開始座標を設定
lineTo 線を描画
stroke 実際に描画

クラス化

さて,上記ソースはお世辞にも見やすいとは言えません.
見やすくするためにやることは2つあります.

  1. JavaScriptをHTMLとは別ファイルにする
  2. プログラムの見通しを良くするためにクラス化する

と言うことで,まずは1からやってみましょう.

まずはJSを別ファイルに

HTMLファイルから外部JavaScriptを読み込むためには以下の6行目のように書きます.

<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
  <meta charset="UTF-8">
  <title>Document</title>
  <script src="test1.js"></script>
</head>
<body>
  <canvas id="canvas1" width="400" height="400"></canvas>
</body>
</html>

これにより,HTMLは文書構造のみを記述することができ,何が書かれているか分かりやすくなりました.
このように,JavaScriptやCSSなどは外部ファイルとして書きましょう.

クラス化してみる

次にプログラム本体に手を入れ,クラス化します.
クラス名はDrawingにしておきます.
メソッドはコンストラクタ,イベントの設定(set_event),点描画(drawPoint)の3つです.
クラス化したことに伴い,このように処理を細分化することで,メンテナンスや再利用が容易になります.

test1.js
class Drawing {
  constructor( element ) {
    this.element = element;
    this.context = element.getContext( '2d' );
  }
  set_event() {
    this.element.addEventListener( 'click', ev => {
      var rect = ev.target.getBoundingClientRect();
      var x = ev.clientX - rect.left;
      var y = ev.clientY - rect.top;
      drawPoint( x, y );
    });
  }
  drawPoint( x, y ) {
    this.context.beginPath();
    this.context.moveTo( x, y );
    this.context.lineTo( x+1, y+1 );
    this.context.stroke();
  }
}

window.addEventListener("load", () => {
  var element = document.getElementById( 'canvas1' );
  var draw = new Drawing( element );
  draw.set_event();
});

あとがき

Webブラウザ上で実行できるので,誰もが開発環境を揃えられるという点はJavaScriptの利点です.
その割にあまり学習用に使われていないのは,クラス指向ではなかったことや文法が曖昧であるためだと思います.
しかし,EcmaScript2015になってクラスやラムダ式が導入されたので,今後はどんどん使われていくと思います.

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