はじめに
広く知られているHP電卓の多くは伝統的にRPN方式による入力方法を採用していますが、多段スタックへの拡張、各種ソルバーの充実やCAS機能の追加、RPLをユーザーにも使用できる形で実装したHP28・48シリーズは、1980年代のリリースから30年以上経過した今でも根強い人気を誇っています。
しかし、その後のPCの台頭に加え、TIやCASIOなどによる安価で高機能な電卓が市場を席巻するようになり、HP自体による電卓事業の見直しも相まって、HP電卓は金融業界向けの機種を除いて、その殆どが世間から忘れられた存在になってしまいました。
一部では、WP-34SのようなHPのビジネス電卓の中身を強力な関数電卓に書き換えてしまうプロジェクトが続いています。また、近年においてはHP15CやHP16CのようなHP電卓のクローンを実機でリリースしているSwissMicrosから、Free42をベースとするDM42、HP32sIIをシミュレーションするDM32のような高機能モデルもリリースされており、それらはRPN方式の計算機を求めているユーザーの需要に訴求しています。
ただ、いずれもRPN方式を主眼に置いたもので、RPLを実行するためにはPCやスマホのシミュレータに頼らざるえませんでした。
このような「RPL冬の時代」が続いていた中、「DB48X」という名称のとても興味深いプロジェクトを紹介するプレゼンテーション動画が昨年夏ごろに公開されました。RPLをDM42・DM32上に実装する試みです。
ということで、バージョンアップを積み重ねるにつれて実用性を十分兼ね備え始めたDB48Xのインストール手順を、あっさり目にまとめておきます。
なお、最新情報はSwissMicrosのフォーラム
またはHP museumのフォーラム
にて入手可能です。
DB48Xの使用方法やバージョンアップに伴う変更点は、開発者の方が公開されている動画
にて確認できます。
ダウンロード・インストール
上記掲示板に投稿されているリンクから、実行ファイルを取得します。現在の最新版、Ver 0.7.5の場合は以下のリンクになります。
DM42へインストールする場合はDB48X、DM32の場合はDB50Xを選択します。今回はDB42へインストールするので"db48x-v0.7.5.tgz"をダウンロード後、解凍すると、以下のファイルがローカル上に現れます。
db48X.pgm
DB48X_qspi.bin
help/DB48X.md
STATE/test.48S
DM42と上記のファイルを保存しているPCをUSBケーブルでつなぎ、DM42を起動、セットアップメニュからUSBディスクモードにします。DM42がPCへマウントされるので、各ファイルを保存します(古いファイルは削除のこと)。
DM42のマウントを解除後、セットアップメニュにて"Reset to DMCP menu"を実行(書き込んだファイルを認識しないことがあったので)、それから"Load QSPI From FAT"を実行し、QSPIイメージをフラッシュメモリへ書き込みます。保存してある"DB48X_qspi.bin"を勝手に認識して書き込みを開始します。十数秒で終了するので、DM42を再起動します。その際、"DB48X_qspi.bin"は勝手に消去されます。
続けて、"Load Program"から"DB48X.pgm"を選択して実行、再起動します。
DB48Xの起動画面が表示されます。セットアップメニュの"About"からシステムのバージョン情報を確認できます。
最後に
現在入手可能な最新の実機でRPL環境を実行できることが最高です、とても素晴らしいです。HP48シリーズのROMを使ったiOS向けのエミュレータも、Meta Kernel環境を手軽に試すことが出来たりして中々いい感じなのですが、DB48Xは計算精度やその他の拡張に目を見張るものがあります。
これからの進展がとても楽しみです。