
ここで話題にするのですから、もちろん「プログラミング言語 Python 用の、軽量なウェブアプリケーションフレームワーク」(Wikipedia)です。Google 検索すると、最初に出てくるのはこれです(少なくとも私がやるとそうなる)。

英語読みだと「フラスク」と発音されますが、日本語では「フラスコ」です。ポルトガル語語源の Frasco です。一般的な日本人なら、化学実験で使う、細い首の付いたガラス容器が最初に思い起こされることでしょう。実際、英次郎には(実験の)フラスコがトップに示されています。米国辞書でもその意味は記されていますが末尾の方なので、アメリカ人にはわかってもらえないかもしれません。
Oxford Learner's Dictionaries の第1義も実験器具なので、英国人(あるいはコモンウェルス人)なら話が通じます。

同じ英国英語圏でも、Cambridge Dictionary は可搬型の魔法瓶、つまり暖かいにしろ冷たいにしろ温度を一定に保つ液体のための容器を第1義に示しています(Oxford では第2義)。しかも、「米国の商標で『サーモス』のこと」と言い切っています。
ついでに言うと、英国サーモスは「Thermos® flasks make everyday life better, every time」と書いています。やはりお茶は暖かく飲みたいものです。

米語圏では、ウィスキーを容れる小型の容器です。ズボンの尻ポケットに入りやすいようにちょっと湾曲させた、平たい金属製の容器です(いわゆる hip flask)。
Merriam-Webster 米語辞典は「注ぎ口が狭まっていて、アルコール飲料を入れるのにしばしば用いられる容器」を最初の意味として出しています。American Heritage Dictionaryも同様です。アメリカ人は酔うことしか考えていないのでしょうか(日本人に言われたくはないと思うが)。Collins は「飲料を持ち運ぶ容器」と、中身についてはお茶を濁していますが(濁ったお茶を入れるわけではない)、どう見たって酒でしょう。あんなのを街角で煽っていたら、間違いなく職務質問されます。

どうでもいいですが、日本ではウィスキー入れを「スキットル」(skittle)と呼ぶようです。この手の商品を日本のオンラインショップで購入したければ、検索時にはそちらを使った方が多くヒットします。しかし、英語圏で skittle は卓上あるいは芝生でプレーするボーリングに似たゲームです。
あるいは M&M と似たサイズの小粒なお菓子です(ガムで有名な Wrigley/Mars の商品)。
動物の角から作った、火薬を入れる容器も Flask です。火縄銃など、弾丸式でない銃器に火薬を詰めるときに使うあれです。英語版 Wikipedia はこれを「Powder horn」の見出しに載せていますが、「厳密にはPowder flaskと呼ぶ」と書いています。
Flask の作者の Armin Ronacher は、Bottle という Web フレームワークの名から取って Flask にしたと述べています(「Opening the Flask」参照)。Ronacher はオーストリア人なので、bottle(英)→flasche(独への直訳)→flask(独の英読み)なわけです。
WSGI(Web Server Gateway Interface)の読みがウィスキーだから Flask であると、Grey Li というソフトウェアエンジニアさんは述べています(Pycon China で発表したらしい)。確証はないですが、この意味も含まれている気はします。何と言っても、旧ロゴのモットーが「one drop at a time」(一滴一滴)ですからね。ドモホルンリンクルみたいですが。
付記
画像のソースは Flask(ソフトウェア)の新ロゴは Flask 公式サイトから、Thermos Flask(飲料容器)は Thermos UK のサイトからそれぞれリンクしています。それ以外は Wikipedia へのリンクです。