IT業界は進歩が恐ろしく速い分、いろいろな技術が流行っては廃れ、廃れたのかと思ったら常識になっていたりします。
ここ数年の流行をバズワードで振り返ってみましょう。
新人プログラマ応援としていますが、自分が振り返りたかっただけなことは秘密です。
前置き:バズワードとは
バズワード(英: buzzword)とは、定義が曖昧でありながら、権威付けする専門用語や人目を引くキャッチフレーズとして、特定の時代や分野の人々の間で通用する言葉のことである。コンピュータの分野で良く使われるが、政治など広い分野で使われる。
wikipediaより
上記の説明でもわかる通り、バズワードというと"キャッチフレーズ"、"目を引くための広告塔"、"流行語"といった意味合いが強く、否定的な意見も多々あります。
しかし、バズワードも何もないところから生まれるわけではなく、注目の技術やトレンドが注目された結果発生するものです。
技術者としては、よくわからずに飛びつくのも問題ですが、「誰かが流行らせているだけだから」と敬遠してしまうのも問題です。
そのワードの実体を理解しつつ、振り回されない程度に技術動向を追ってみましょう。
バズワード・注目ワード・先端テクノロジ
"バズワード"というワード自体、定義が難しい気もしますが、ここではなんだか業界人以外でも聞いたことあるなぁという単語や当時先端技術として将来を有望視されていた技術を取り上げます。
情報元としてはGartnerが発表している「先端テクノロジのハイプ・サイクル」を大いに参考にさせていただきました。
~2010年 Web/クラウドの活発化
- ユビキタス
- クラウドコンピューティング
- XaaS(PaaS/SaaS/IaaSなど)
- Web2.0
- ロングテール
- AR(拡張現実)
なんでもインターネットにつながる"ユビキタス"の考えや見せるだけのWebページから自由な発信やユーザ体験を重視する"Web2.0"などがもてはやされました。
"クラウド"や"XaaS"も出てきています。
"ユビキタス"は"IoT"に通ずるものがあったり、"Web2.0"の考え自体はもはや一般的になっていたりと単語自体は聞かなくなってもしっかりと根付いている印象です。
2011~2012年 ソーシャルメディア/モバイルの躍進
- クラウドソーシング
- ソーシャルネットワーキング
- アクティビティストリーム
- ゲーミフィケーション
- HTML5
- BYOD
- ワイヤレス送電
Facebookを始めとするソーシャルメディアの流行、スマートフォンの流行に伴う用語が多く出てきた印象です。
また"ゲーミフィケーション"などの、顧客にどうに見せるか・獲得するか・継続させるかといった要素も注目されています。"UX"(ユーザエクスペリエンス)などにも繋がっていくのかなと思います。
"BYOD"や"ワイヤレス送電"などモバイル端末活用の流れや、Web開発におけるモバイル端末への意識が強まっている時期かと思います。
"ハイブリッド開発"や"モバイルファースト"の考え方、"レスポンシブWeb"なども出てきます。
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2011年
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2012年
2013~2014年 ビッグデータ/仮想アシスタント
- 3Dプリンティング
- ウェアラブル
- 仮想アシスタント
- コンテンツマーケティング
- 暗号通貨
- ビッグデータ
- データサイエンス
"ビッグデータ"自体は昔からある単語ですが、ハードウェアの進歩から大量データの蓄積や集計が一般化されてきた時代です。それに伴う"データサイエンス"、"データマイニング"などが注目されました。
またビットコインのような"仮想通貨"、モバイル端末からさらに小型化した"ウェアラブル端末"など、21世紀的なものが注目されたという風に思います。
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2013年
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2014年
2015~2016年 人工知能ブーム到来
- スマート・ロボット/スマートアドバイザ
- IoT/IoTプラットフォーム
- ブロックチェーン
- コグニティブ・エキスパート・アドバイザー
- 人工知能/機械学習
- FinTech
- 自律走行車
- 自然言語による質疑応答システム
データ活用がさらに高度化され、その適用範囲が増えているのがわかります。
人工知能も"第3次人工知能ブーム"と言われ、その活用範囲が期待されていますが、少し加熱しすぎな様子も見られます。
2016年に入っても、2013年ごろから加熱し始めたIoT関連やデータサイエンス関連が着実に進歩している印象です。このあたりの用語はバズワードとは言われていますが、"一時の流行"で終わるのではなく自然と定着していくことで落ち着いていくのかなと思います。
また、これまでは"IoT"や"人工知能"のように技術自体を表す用語が多かったのに対して、"IoTプラットフォーム"や"質疑応答システム"のようにどのように活用を促進していくかといった応用のフェーズにも差し掛かっている印象です。
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2015年
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2016年
過去6年をざっと見ただけでも、いろいろなワードが作られていますし、流行が過ぎ去ったと思ってもその根底にある技術自体は着実に進歩していってる印象でした。
2017年 AI/RPA/ブロックチェーン等はまだまだ加熱中
追記[2017/8/20, 2017/12/30], 再編[2018/09/09]
- AI everywhere
- 没入体験
- サーバレスPaas
- ブレインコンピュータインタフェース
- ブロックチェーン
- ビットコイン
- 人工知能 / RPA
- デジタル・ビジネス・コンサルティング・サービス
- ポストモダンERP
- DevOps
大きなトレンドとしては引き続きという感じですね。
AI・人工知能関連、ブロックチェーンなどは相変わらず過度な期待ゾーンではありますが順調に幻滅期を経て一般化されそうな兆しです。
新たにピークを迎えそうなのがサーバレスPaasやブレインコンピュータインタフェースで、より未来的な製品が誕生しそうです。
また、ポストモダンERPやロボティックス・プロセス・オートメーション(RPA)など、AI技術のビジネス応用的な言葉も引き続き見られ、取り組もうとはしているもののなかなか、、、と言った状態でしょうか。
また、DevOpsという言葉が復活(数年前に注目されてましたよね?)しているのも面白く、IT活用の内製化・高速化がますます求められているのかなという印象。
またビットコインやアルトコインが一般にも広まる&金額的にも歴史的な高騰を見せた年でもありました。
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2017年
日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2017年
2018年
追記[2018/09/09]
「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2018年」が発表されたのでまとめます。
- デジタル・ツイン
- ディープ・ラーニング
- カーボン・ナノチューブ
- バイオチップ
- 仮想アシスタント
年始には仮想通貨が荒れた年でした。BTCが200万を超える高騰、コインチェックでの流出騒ぎやその後の仮想通貨全体の暴落に見舞われましたが、仮想通貨の中核をなすブロックチェーン技術自体は着々と幻滅期に向かっており、活用に向けて進んでいるイメージです。
ディープラーニングがここ数年ずっと過度な期待ゾーンに居続けているというのも面白いですね。ディープラーニング自体の進歩や応用範囲の広がりが速すぎて、幻滅期に行こうとしてもピーク期に戻されて続けているというようなイメージですね。
ARやMRは幻滅期に入り、IoTプラットフォームやデジタルツインが活性化しているようにハードウェア領域も活発な状態ですし、データサイエンスな部分とハードウェアな部分も親和性高く発展(&バスり)してそうです。
まだ年の途中ですが、数年前に「ブロックチェーン」や「ディープラーニング」みたいな単語が出てきたクラスのバズりはまだなく、この数年の技術トレンドが続いているのかなという印象です。
日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年
先端テクノロジのハイプサイクル:2018年
2019年 ビジネス活用への動きが加速
追記[2020/12/06]
2019年分を更新忘れてました。まとめていきます。
例のごとく、下記のハイプ・サイクルより抜粋。
- 5G
- AI PaaS
- 説明可能なAI
- デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォーム
- 市民データ・サイエンス
- プライバシー・バイ・デザイン
5Gが一般に聞かれるようになった時期かと思います。
出てくるワード自体はこれまでの延長線上という感じではありますが、印象としてよりビジネス活用という面が強く出てきたように思います。
例えば印象的なのは「AI/人工知能」「RPA」「IoT」「ブロックチェーン」などがついに幻滅期入りし、代わりにピークに来ているのが「説明可能なAI」「XXXプラットフォーム」「市民データサイエンス」のように、活用することや一般化させる動きについてのワードが入ってきていることなどです。
(このコメントは2020年の年末に書いてます)
本来は2019年もいろいろあったはずなのですが2020年の荒れっぷりがすごすぎてシンプルになってしまいました。。。
日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年
2020年 大変動の年
- ソーシャル・ディスタンシング・テクノロジ
- デジタルヘルス/ヘルスパスポート
- 責任あるAI
- 5G
- スマート・ワークスペース
- 次世代型リアル店舗
- テレワーク・ワーケーション
- DX
なんと言ってもコロナ(COVID-19)の年です。良くも悪くもIT業界にも大きな影響を与えています。
まずは医療関連技術への影響やソーシャルディスタンスなどの行動に関する部分の技術はもちろん、人々の行動様式が大きく変わったことでUserEatsなどは目に見えて増えてきましたし、そういった飲食店やリアル店舗を支える技術も急速に変化してきました。
また、今までは日本では珍しかったリモートワーク・在宅勤務なども企業としては急遽対応しなくてはいけなくなりましたし、テレワークやワーケーションという言葉も(国主導っぽいですが)定着してきました。学校はオンラインの対応に追われていますし、コミュニケーションもオンラインで「Zoom会議」「Zoom飲み」という言葉も流行りました。
働き方が変わり、コミュニケーションが変わり、使用するツールも変わり、・・・と挙げればきりがないほどの行動変容とそれをチャンスと捉えたITベンチャーの戦いが起きています。
そして、今年はそんなこともあってかバズワードらしいバズワードが久しぶりに色々出てきた気がします。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)
- AI/DX人材
- テレワーク
- ニューノーマル
などなど。
もともと本来の意味での「バズワード」に合致するのはこのあたりかなと。それにしても今年はやけにDXを聞いた気がする。。。
というドタバタした年でしたが、良くも悪くも技術的に注目されたものもありました。
DeepFakeの騒動だったりGTP-3など、もはや人間が作ったのか機械が作ったのか判断できないようなレベルの映像や文章が作られるようになったこと、それに伴い情報との付き合い方が大きく変わりそうなことなどを予感させる年でもありました。
日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2020年
2021年
「去年はコロナで大変でしたねぇ」という年になるかと思いきや、現在進行形でまだまだコロナな年です。
その影響もあってか、デジタルがどんどん生活に浸透してきている年です。去年〜今年で社会人になったり転職した方は「会社全然行ったことないや」という人も多いのでは。(学生もWebでの講義が中心か。。。)
そんな年の技術トレンドを見てみましょう。
- NFT(非代替性トークン)
- スマート・ワークスペース
- デジタル・ツイン
- データ・ファブリック
- AI拡張型ソフトウェア・エンジニアリング
- 従業員コミュニケーション・アプリケーション
- 人間中心デザイン
- (メタバース)
また、先進テクノロジのハイプ・サイクル:2021年ではトレンドにおける3つのテーマとして
- 信頼を構築する
- 成長を加速する
- 変化を形作る
が挙げられており、それぞれテクノロジがまとめられています。
技術トレンドとしては引き続きという感じなのですが、その中でも信頼性の担保だったり、人のコミュニケーション(バーチャル空間とかも含む)だったりというのが目立ってきたという印象です。
もうちょっとML寄りだとTransformerなんかがかなり話題になっていたりしました。(今年あんまり追えてないので色々見落としてそう。。。)
また、括弧書きの「メタバース」はハイプサイクルには出てないのですが、FacebookがMetaに社名変更してメタバースに注力していく、という発表が年の終わりにあり今後が注目されるものです。
ここからとても個人的な感想
印象的なものとして「AI/人工知能」「ブロックチェーン」が、ハイプサイクルの谷の底にいることです。(人工知能、ちょっと脱出しかけてる)
これ結構実生活でも印象があって、”AI”とか”人工知能”という言葉を不自然に聞かなくなった印象です。話している内容は”AI”とか言ってもいい内容なのに、意図的に避けてるというか流行遅れ感が出るのを避けてるというか。
まさに幻滅期だなぁという印象の年でした。
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2021年
日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2021年
2022年
アフターコロナ感が出てきた年です。
ハイプサイクルを見ると、NFTやWeb3が「過度な期待」のピークに達しています。
- NFT(非代替性トークン)
- Web3
- DAO
- ファウンデーションモデル
- 分散型アイデンティティ
- メタバース(が、黎明期に登場)
Web3やNFTはピーク期にあり、NFTを配りますーという取り組みなども周りでちらほら見られます。
ただ、「AI」などのピーク期とは少し様子が違って見えます。Web3やNFTは一昔前の「何でもかんでもAI」というような熱狂はなく、「よくわからん」という一般人とどう使っていくべきか真剣に模索してる一部の技術者、というような印象。
また、ハイプサイクル全体を眺めても何か劇的に変化というよりは着実な動き、ネガティブに言うと若干の閉塞感もあるようなそんな印象です。(この記事のこの部分は2023年に書いてるからそう感じるだけかもしれません。)
しかしこれは嵐の前の静けさだったのでしょうか。
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年
日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2022年
2023年 ChatGPT登場
バズワード史(?)において、一つの歴史になる年でしょう。
OpenAIの公開したChatGPTが爆発的にヒット。その勢いにのって各社言語モデルやら画像生成できるモデルやら群雄割拠時代に突入。NVIDIAの株価がすごいことになりました。
- ファウンデーションモデル
- Generative AI / 生成AI
- LLM(大規模言語モデル)
- ChatGPT
- クラウドネイティブ
- WebAssembly
- X(TwitterがXになった)
この部分の記載が2023/9時点なのであと3ヶ月でどう変わっていくか。
先進テクノロジのハイプ・サイクル:2023年 - Publickeyの日本語解説
日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年
おまけと注釈
上記とは少し色合いが違っていたのでいれていませんが、
- ノマド
- クラウドファンディング
- アフィリエイト
- ステルスマーケティング
などの働き方やお金に関するものも興味深いものがありますね。
※ 今回のワードはわりと独断かつ偏った知識で選んでいます。何か抜けてる部分がありましたご指摘お願いします。