あーだこーだとトークする手段としてはチャットが主流ですが、場合によっては Wiki の方がやりやすいと最近思ってます。名付けて Talkable Wiki 、ということでアイデアや運用方法についてまとめてみました。
Q: Wiki でトークするとは?
A: 署名(いつ誰が書いたものか)付きでコメントを追記していくイメージです。
イメージを掴むための例を作ってみました(あくまで例なので細かい点はスルーしていただけると )。
* 新人に Git を教えないと。良い方法は無いだろうか。 -- Kusuo
* 新人のレベルによるので何とも言えない。うちの社員のリテラシーは幅があるからねぇ…… -- Hiroshi
* 7年目の中堅さん。本人曰く「SVN はばっちり」「Git は触ったことない」「勉強しながら覚えますよ」。僕が見た印象は、うちの製品開発は卒なくこなせるけど外の世界は知らない感じ。Git もジットって読んでたし。 -- Kusuo
* なんか本与えて読ませる。使えそうなら戦力。ダメそうなら戦力外(バージョン管理触らせない) -- Riki
* [http://gigazine.net/news/20160126-gitquest-review/ ギットクエスト] とか [http://www.softantenna.com/wp/software/git-game/ git-game] とか楽しく学ぶのが良いと思うよ! -- Shun
* ギットクエスト。これツクールやん思うたらブラウザで遊べるのね。実装どうなってんやろ。でもこれは普通に業務中は無理だと思う -- Riki
* 案外いけるかもしんねえ。規則とか読んでるけどゲームを直接禁止するルールはなくて、学習のため、で押し通れそうな気がするぜ -- Shun
* 押し通るのかよ…… -- Hiroshi
* 仕事しろ瞬 -- Shun
* むしろ俺が Git 教育コンテンツ作りたい。俺の仕事と交換しませんか? -- Shun
* shun/git-quest しかもREADME駆動開発 -- Kusuo
* 2時間で17コミットwww -- Riki
* 仕事しろ瞬 -- Kusuo
* 色々調べてたら [http://qiita.com/itosho/items/9565c6ad2ffc24c09364 Gitのコミットメッセージの書き方 - Qiita] [http://qiita.com/doilux/items/b5a9abd95ac91e848a5f Gitのこれやめて!リスト - Qiita] さっきからギクギクしながら読んでる。偉そうなこと書いたけど僕も人に教えられるレベルではない(面倒くさくなってきた) -- Kusuo
* 教えることもまた勉強になるんだぜ? -- Shun
* 前提と制約とゴールを設定できてない感。まずは整理してみたら? -- Hiroshi
* ん。そうする -- Kusuo
Q: チャットと何が違うの?
A: 方向性が全く違います。
ここでは(チャットと比べた時の)Talkable Wiki のメリットとデメリットを挙げることで違いを示します。
メリット1: ストック性が高い
チャットはリアルタイムに会話していく用途には最適ですが、過去の話題やメッセージを眺めたい場合には少々不便です。
一方で Wiki はストック性が抜群です。チャットみたいに何度もスクロールして追加読み込みを走らせる必要はありません。
メリット2: スレッド構造(っぽい書き方)が可能なので見易い
チャットでは一部屋内に複数の話題が混在するため、経過や文脈を追いづらいというデメリットがあります。今まさにチャットをしていてコンテキストが頭に入っているうちはいいのですが、話題が増えてきたり、期間が空いたりすると簡単に忘れてしまいます。そうなるとメッセージの海(しかも何度も追加読み込みを走らせる必要アリ)を読み返すハメになります。
一方、Wiki では関連する話題を一箇所にまとめて書けるので、このような弊害をチャットよりも抑えることができます。
デメリット1: 編集競合が起きること
チャットでは誰もが自由なタイミングで発言できていましたが、Wiki はそうもいきません。複数人が同じページを編集すると競合が発生します。
競合は編集人数または編集頻度が多いとすぐに発生します。トークのスピーディーさが損なわれてしまうため煩わしいです。
デメリット2: 書き込むまでの手間が(チャットよりも)大きい
チャットで発言したい場合、部屋に入室して入力ボックスに書き込むだけで済みますが、Wiki はそうもいきません。
Wiki で発言する場合、当該ページを開いて、当該箇所を見つけて、編集リンクをクリックしてから、その部分にコメントを追記する……とここまでやらなきゃいけません。チャットと比べるとだいぶ煩わしいです。
Q: 普通の Wiki と何が違うの?
A: 同じです。使い方が違うだけです。
Talkable Wiki も Wiki であることに変わりはありません。ただ Talkable Wiki では トーク(署名付きのコメント) を「コメントしたい文章」のそばに書く、という運用をします。
これにより複数人で、対話的に、周辺の文章を残しつつ書き進めることができます。
Q: Wiki、Talkable Wiki、チャットの使い分けは?
使い分けは結局のところ人次第、状況次第なのでなんとも言えませんが、個人的には
- チャットは会話
- Wikiは情報集積
- Talkable Wiki は両者の中間くらいの位置付け
だと思っています。たとえば以下のような場合に出番となるでしょう。
- Wiki だけではいまいち意見が集まらない
- かといってチャットで高密度に話すほどでない
- 別に急ぎはしないので「意見書いといたら誰かが気軽にコメント書いてくれる」的なのが欲しい
Q: Talkable Wiki はどんな Wiki でも出来るの?
A: いいえ。
このような使い方が可能な Wiki には、いくつか要件があります。
Talkable Wiki の要件
Talkable Wiki として必要な要件は以下のとおりです。
- 編集履歴が漏れなく記録されること
- Wiki 内の全ての更新を「最新の更新一覧」みたいなページから確認できること
- ログインして利用する形態であること(編集履歴上で個人を識別できること)
- 署名(いつ誰が書いたかを表す文字列)を簡単に挿入できること
- 例:
--Username 2017年4月13日 (木) 14:48 (JST)
- 例:
- 編集競合を検出できること
- 見出し単位の編集ができること
これらが備わっていないと、以下の不満が生じます。
- 「このページは今日5回更新されてるのに更新一覧からは最後の1回分の差分しか見えないね……」
- 「このコメントは誰が書いたの?」
- 「編集が衝突してAさん更新分を丸々消したもうた。。。」
- 「この見出し部分だけ更新したいのにページ全体編集から辿らないといけないのだるい」
Talkable Wiki は気軽に書けるかどうかが重要(でないと書く気が失せる)なので、これら不満は出来るだけ潰したいところです。
オススメは Mediawiki
Talkable Wiki を実現できる Wiki は意外と少ないのですが、個人的なオススメは Mediawiki です。
Mediawiki について簡単に書いておくと、Wikipedia でも利用されている PHP ベースの Wiki エンジンで、最新バージョンは 2017-08-23 公開の 1.29.1 とあるように開発が続いています。
Mediawiki は上記要件を全てカバーしています。
- 更新履歴 → 漏れなく記録される&閲覧できる
- 最新の更新一覧 → 専用ページがある&トップページから辿れる
- ログイン利用 → 設定が必要だが可能
- 署名 →
~~~~
(チルダ四つ)で挿入できる - 編集競合 → 検出可能(既に誰かが編集した後に編集を Fix させようとすると警告が出る)
- 見出し単位の編集 → 見出し横の edit リンクから可能
Q: Talkable Wiki の運用例を教えてほしい
概要説明だけではイメージが湧きづらいと思いますので、具体例として当方の運用例をご紹介します。
前提
まず始めに当方の Wiki 環境について晒しておきます。
- Mediawiki を使用
- 同オフィス勤務者しかアクセスできないよう IP アドレスでアクセス制限
- アカウントを持ってないと(=ログインしないと)各ページは閲覧不可
- アカウント新規は招待制(といっても仕組みは無いため URL さえわかれば誰でも作れるのですが)
- メンバーの傾向
- 若手
- 社畜に染まってない
- エンジニア気質
- 計10人くらい、アクティブユーザー(毎日数回以上は見ている&書き込んでいる)は5人くらい
メンバーについては、一言で言えば「同オフィスに勤務する若手の集まり」です。上司や頭の堅い社畜の目に触れることなく、気軽に本音(もちろん勤務中の社会人として最低限の節度は守ります)ベースで書き込める場所です。
運用例1: 新規事業の検討
概要:
- 新規事業検討用のページをつくって、アイデアとかコメントとか「こんな事例があったよ」的なものを皆でワイワイ書いている
- 業務命令で行っているわけではなくて、そういうのが好きそうな若手で集まって、好きな時に気軽に書いてね、というスタンス
何が嬉しい?:
- 一人だと思い付かない視点やネタがどんどん飛び込んでくるので勉強になる
- Wiki でワイワイ検討するのは純粋に楽しい
近況:
- 現状はどちらかといえば本気の検討というよりも気分転換やインプットの域を出ない
- しかし最近ではガチなページも作り始めている
- 例1: フレームワークに則って検討内容をまとめたページ
- 例2: 社内の新規事業制度で進めているプロジェクトについての情報・進捗共有
運用例2: 相談事
概要:
- 「●●したいんだけど確か社内システムがなかったっけ?」「新人に●●教えないといけないんだけどコツとかあったら教えて」みたいに、相談事全般を書き込む用のページを作っている
- 誰かが相談を書くと、誰かが返事してくれる
何が嬉しい?:
- わからないことは一人 or チーム内で解決できるのが理想だが、社内雑務系はググっても出ない&情報整備されてなくて探せない、チームにしてもみんな忙しかったり(レガシーは得意でもモダンはさっぱりで)頼れなかったりしてそうもいかない。が、Wiki の相談ページに書くと解決することがあるので便利
- 書かれた相談に対して「私ならどうやって答えようか」を考えるのが楽しい&アピールにもなって(承認欲求的に)嬉しい
近況:
- 社内雑務ポンコツばかりなので社内雑務に明るい人を増やしたい。。。
運用例3: 吐き出し
概要:
- 愚痴や不満を吐き出す用のページを設けていて、たまに書き込んで発散する
- もちろん勤務中の社会人たるもの節度は守るべきで、その旨は注意書きにて明示的に記載
何が嬉しい?:
- ストレス発散できる(自分で抱え込まず吐き出すことは重要)
近況:
- センスのある皮肉を吐き出すテイストが流行っている
- 不満から改善にまで繋げたいところだが、だいたい「大人の事情」「社内政治」「ルールだからしゃーない」的な壁に阻まれ不満のまま終始する
- ウンコード・マニア 的なこともやりたいなと画策中
運用例4: 社内ニュースページ
概要:
- メモ魔の私は、社内通知をピックアップして要点を書く、というページを設けている
- このページは他メンバーにとっては「社内ニュースを知る手段」になると同時に、各ニュースに対するコメントを書いたり読んだりする場にもなっている
何が嬉しい?:
- 社内ネタは他では話せないこともあり盛り上がりやすくて楽しい
- 社内における今後の立ち回りについて考える機会になる
- 例:
「実はこの件ね、裏でこういう意図があるみたいでね……」
「申し込むつもりだったけどマジか、やめとくわ」
- (主にメモしてる私のメリットですが)「その解釈は間違ってる」「正しくはこうじゃない?」とミスを指摘してもらえる
近況:
- 社内通知サイトから自動的に Wiki に投稿する仕組みを作ろうとしている(が、これやるとピックアップ数がえらいことになるのでどうやって絞ろうか考えているところ)
おわりに
Talkable Wiki についてまとめてみました。当たり前のことを長々と書いちゃってる感もありますが、「Wiki でトークするのは意外と便利で楽しい」ということが伝われば幸いです。