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業務でも使える教育業界の新しい学びの手法「ジグソー法」について

Last updated at Posted at 2017-12-22

 はじめに

 本日、担当しますテクノロジカルマーケティング部 UXマーケティンググループのssshirokumaです。
 私は、今年の夏に入社し、現在、既存サービスや新規事業、新サービスのプロジェクトに社内コンサル的な立場でUX関連の支援をする業務についてます。実務の中でワークショップを用いることも多く、今回ワークショップ関連の勉強会で見つけました新しい学びの手法「ジグソー法」について紹介します。

「ジグソー法」とは?

 まず「ジグソー法」とは、教育業界で新しい手法として普及し始めている「アクティブラーニング」の一手法になります。「アクティブラーニング」は、「学習者が主体的・能動的に学ぶ教授・学習法の総称」で、講義型の一方通行の学びと異なり、学習者はグループディスカッション,ディベート,グループワーク等を積極的に取り入れているのが特徴です。若い方々は大学の一部授業などで経験された方も多いと思いますが、我々の世代には馴染みの少ない教育手法です。
 教育業界で、文部科学省が「アクティブラーニング」を取り上げたのは、2012年8月の中央教育審議会(中教審)への『新たな未来を築くため の大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)』であり、更に2014年1月の「初等中等教育における教育 課程の基準等の在り方について」の中で、大学教育だけでなく初等中等教育の現場に導入する方針へ舵を切っております。ですので今は小学生から大学生までの幅広い年代の学生は、何らかの形で「アクティブラーニング」を用いて学んでいる人が多い事と思います。
 自分が学んだのは『教育心理学概論(放送大学教材)三宅 芳雄 (著),‎ 三宅 なほみ (著)』です。興味のある方はこちらの書籍を読むことをオススメします。近代の産業革命以降に知識詰込み型の教育が必要であった背景と、教育心理学、認知科学を中心に各分野の研究を紹介しながら、人が賢くなる仕組みについて説明しております。
 この書籍の中でも紹介されている「ジグソー法」は、自分で学んだことを自分の言葉で説明し、自説に対する質問に返答することや、他人の説明に耳を傾けることで、多様な解釈を理解したり、自分の考えを起動修正する事により、学んだことの深みと幅を広げていくことができる手法であると解釈しています。
 「アクティブラーニング」は、いくつもの手法がありますが、今回はその中で2011年から大学発教育支援コンソーシアム([CoREF]Consortium forRenovatingEducationof theFuture)で提唱されている「知識構成型ジグソー法」を軸に紹介します。
以下の内容は、東京大学CoREF(http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515)
で説明されている内容を参照し、自分なりの解釈を加筆修正して用いました。

ジグソー法の適した条件

 「ジグソー法」は、用いるのに適したテーマ設定と参加人数がありますので、その条件を説明します。

テーマ設定

 取り上げるテーマ(問い)は、3つか4つの知識を組み合わせることにより解決を目指せるものが良いです。
 簡単な事例では、勉強会を想定し、テーマを「書籍の要約を作ること」として、対象書籍を3〜4分割したり、テーマを「章の要約を作ること」として章の中身を3〜4分割して用いることが出来ます。
 また、テーマを「ある課題を解決すること」とし、そのために必要な情報が3から4の知識分野で編成できる場合や、テーマを「ある知識分野を把握すること」として、その知識分野を更に3〜4に再分割して用いることも出来ます。

参加人数

 参加するメンバーの人数は、3から4つの知識分野別に複数人いると学習が効果的なので、知識分野毎に3人の場合は計9〜12人、4人の場合は計12人〜16人いると理想的です。最低でも各知識分野に2人で計6人から8人は欲しいところです。
最悪、各知識分野に1名の計3〜4人でも実施できますが、学習の深さと幅が狭まります。

ジグソー法のプロセス

プロセスは、大きく【1】エキスパート(専門家)活動と【2】ジグソー活動の2つに分けることができます。
【1】エキスパート(専門家)活動は、更に2分割して【1-1】個人ワーク【1-2】専門家グループワークに、【2】ジグソー(協調)活動も、更に2分割して【2-1】グループ単位のジグソー(協調)ワーク【2-1】全体のジグソー(協調)ワークに、最後に【3】個人の振り返り、を入れて、合計5つのステップで構成されます。
 ジグソー法のプロセスは、シンプルなこの5ステップで構成されますが、参加人数が最小の3〜4人の場合、この【1-2】【2-2】が無くなることになりますので効果が減少します。
スクリーンショット 2017-12-22 10.03.48.png

【1】エキスパート(専門家)活動

【1-1】個人ワーク

まずテーマ(問い)について、はじめに思いつく答えを書き出しておきます。
次に、担当した知識分野についての資料を読み込んで理解をします。
スクリーンショット 2017-12-21 12.00.30.png

【1-2】専門家グループワーク

担当した知識分野が同じ人でグループを作り、同じ資料を読み合います。その資料に書かれた内容や意味を話し合い、グループで理解を深めます。担当する資料に少し詳しくなります。
参加人数が3〜4人の場合、このステップが省略されることになりますので、専門家としての理解の深さと幅が少なくなります。
スクリーンショット 2017-12-21 12.01.18.png

【2】ジグソー(協調)活動

【2-1】グループ単位のジグソー(協調)活動

次に、違う資料を読んだ人が一人ずついる新しいグループに組み替え、さきほどのエキスパート活動でわかってきた内容を説明し合います。このグループでは、元の資料を知っているのは自分一人なので、自分の言葉で自分の考えが伝わるように説明することになります。この活動が、自分の理解状況を内省したり、新たな疑問を持つ活動につながります。同時に他のメンバーから他の資料についての説明を聞き、自分が担当した資料との関連を考える中で、理解を深めていきます。理解が深まったところで、それぞれのパートの知識を組み合わせ、テーマ(問い)への答えを作ります。
スクリーンショット 2017-12-21 12.01.54.png

【2-2】全体のジグソー(協調)活動

グループで答えが出たら、その根拠も合わせてクラスで発表します。他者の意見に耳を傾けて、自分たちも全体への発表という形で表現をし直します。答えが一つになることが想定されるテーマ(問い)の場合、各グループから出てくる答えは同じでも根拠の説明は少しずつ違うことになると思います。また、一つの答えではなく多様な解釈ができるテーマ(問い)の場合、答えが大きく異なると思います。互いの答えと根拠を検討し、その違いを通して、一人ひとりが自分なりのまとめ方を吟味するチャンスが得られ、一人ひとりが納得する過程が生まれます。
参加人数が3〜4人の場合、このステップが省略されることになりますので、同じ情報を用いながら、多様な結果が得られることによる示唆を得られる機会が少なくなります。
スクリーンショット 2017-12-21 12.04.06.png

【3】個人の振り返り

最後に個人で振り返りを行います。テーマ(問い)に改めて向き合い、最後は一人でテーマ(問い)に対する答えを記述してみます。
スクリーンショット 2017-12-21 12.10.06.png

まとめ、更に学びを深めたい人へ

 以上が、ジグソー法の紹介になります。参加者が主体的・自主的になって学ぶ機会を作りたい方や、多様性のある学びを得たい方は、参加人数を確保出来きた時にお試し頂ければ幸いです。多様性が求められ、各自が常に成長し続けることが求められる時代の中で、その効果を実感できる手法であると思います。
 しかしながら、気づいた方も多いと思いますが、一見すると効率的な学習とは言えない手法でもあります。短期間に必要な知識をある一定以上得るには講義型の学習の方が効率が良いです。しかしながら、主体的に自主的に学び続ける人材を作りたい場合、その成功体験をこのワークに身につけることができるので、長期的な視点では、効率がよくなる手法であると考えています。
 その根拠は、先に紹介しました『教育心理学概論(放送大学教材)三宅 芳雄 (著),‎ 三宅 なほみ (著)』に多くの事例と共に記述されておりますのでご参照下さい。この書籍は、お子さんへの教育に興味のある方も含めてオススメの一冊です。この本の中で自分の一番の気づきとなったのは「生涯に渡り生きた知識」となるのは、「自発的な意識と、多くの失敗を通して学んだこと」であり、「失敗する権利を子供から奪わない方が良い」的な事が書かれております。
 このことは、自分自身を振り返ってみて、これまでの人生で身につかず、テストを乗りきる為に覚えて、記憶の彼方に押し出され、忘却されている・・・・”学んだはずの多くの知識”と共に心当たりがありすぎる内容でした。自分にとって「学び」についての考え方・認識が目から鱗が落ちる様に変わったきっかけになりました。またある意味では「今後は自分の興味出たことを中心に失敗する経験を通じて学び続けよう!」と開き直りに近い境地に付かせてくれた書籍でもあります。
 実はこの「失敗を恐ることは損失である」的なマインドは、新規事業におけるマインドと重なることが多く、「一生命体である個体としての学び」と「新規事業における組織の学び」が繋がった様に感じた瞬間でもあります。ちなみに三宅(両)先生は、教育心理学と共に、現業務に関わりの深い認知科学の専門家でユーザビリティ評価などUXに関わる分野での大先輩でもあります。一見関係のない離れた分野のテーマだと思ってましたが、今の業務につながりの深い学びを得られた書籍でした。何かピンときた方は是非一読をオススメします。
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