はじめに
Adventカレンダー「エンジニアのためのWebマーケティング」の6日目です。
サクッと読める記事を目標に。異論・ツッコミ大歓迎。
できるだけ専門用語を使わないように気をつけます。
それでは参りましょう
突然ですが・・・
みなさんは、今まで恋をしたことがありますか?
告白されたことしか無いという人は、爆発してください。
片思いをしたことがある人は、その時の感覚を思い出しながら読んでください。
いきなりポエマーな始まり方でしたが
小説家・脚本家の金城一紀さんが書いた**「映画篇」という小説に、こんな一説**があります。
君が人を好きになった時に取るべき最善の方法は、
その人のことをきちんと知ろうと目を凝らし、 耳をすますことだ。
そうすると、君はその人が自分の思っていた よりも単純ではないことに気づく。
極端なことを言えば、君はその人のことを 実は何も知っていなかったのを思い知る。引用元:金城一紀 『映画篇』より短編作品「愛の泉」(集英社/2007年)
これは小説の中に登場する大学教授が、主人公に
「君は人を好きになったらどうするの?」
と質問したあとに続けて喋りだすシーンです。
片思いをした状況の本質を、とても素晴らしく表現されています。
そしてそのあと、教授は
「知った気になって接した瞬間に相手は新しい顔を見せてくれなくなるし、
君の停滞も始まるもんだよ」
と続けます。
マーケティングは片思いに似ている
この小説の引用は、元電通のクリエイティブディレクターの佐藤尚之さんが、明日の広告という著書の中で引用されています。
なぜ引用されているかというと、上記の一説は「まるごとそのままマーケティングの話」に該当するからです。
広告は企業から消費者への「愛の表現」
企業が商品やサービスを作って、それを消費者に対して売り出したい時。
本当にそれが消費者が求めているものなのかは、正直わからないですよね。
仮に求めているものだったとしても、それに気づいていない可能性だってあります。
逆に、求めていないものだったけど、色々と魅力を知るうちに欲しくなることだってあります。
相手が自分(=商品)に興味がなくても、魅力を伝え続けることは大事になるわけです。
好きになった相手がいたとして、最初は自分に興味がなくても、色んなアプローチをすることでその人に気に入ってもらおうと人は努力しますよね。
甘酸っぱい片思い・・・。
広告はまさに、その手段ですね。
対する効果測定は「相手を知ること」
さて、一方で自分が頑張ってアプローチしている想い人。
それを続けることで少しづつ自分のことを気にかけてくれているのでしょうか。
全く効果がないのでしょうか。
打算的な話になってしまいますが、
好きな相手の自分に対する好感度を知ることができたら、片思いはきっと有利な方へ動き出しますよね。
でも、思った以上に相手のことを知るのは難しく、そう簡単には行かないことを自覚します。
(片思いの場合、それが良いところでもあったりするのですが)
ポルノグラフィティの楽曲「サウダージ」にも
時を重ねるごとに 1つずつあなたを知っていって
さらに時を重ねて、1つずつわからなくなって
という歌詞があり、頑張って相手の事を知ればさらに謎が深まっていくこと表しています。
我々は消費者のことを何も知らない
先程紹介した「映画篇」作中の教授の
「知った気になって接した瞬間に相手は新しい顔を見せてくれなくなるし、
君の停滞も始まるもんだよ」
という言葉は、知った気になった途端に、我々が答えをだすことをやめてしまうことを示唆しています。
相手を知った気になってはいけない
だから、相手のことを「知った気」になってはいけないのです。
わからないときはあんなに知恵を絞って頑張って相手を知ろうとしていたのに、相手のことを勝手に決めつけてしまうことで、失敗をしてしまいます。
実際に相手の気持ちを決めつけてしまった事例
フルーツジュースのブランド**「Tropicana」**が昔、パッケージのリニューアルをおこなったことがあります。
左が元々のパッケージで、右が新しいパッケージです。
(画像出典:Logoworks)
度重なるアンケートを実施した結果、感触はとても良かったそうです。
にも関わらず、Tropicanaが新パッケージで発売した時に売上は急落し、クレームさえ生まれます。
これはTropicanaのファンの気持ちをマーケターが正しく把握できていなかったことが原因でした。アンケートで「新しいデザインを良いと思いますか?」と聞いてYesという回答が多かったというのですが、たしかにそういう質問をしたらみなさんだいたいYesと答えますよね。
**「俺(私)のことを、カッコいい(かわいい)と思う?」**と聞いて
**「Yes」**と返ってきたからといって、
**「付き合ってください」**と今度聞いたら、
必ずしも「Yes」と返ってくるわけではないのは、みなさんも想像できるかと思います。
だから、相手(消費者)の事をきちんと知ることが大事
冒頭の「目を凝らし、耳を澄ますこと」が如何に大事なのか、わかってきたのではないでしょうか。
- なんで、ユーザーはこんな行動をとっているんだろう?
- なんで、こんな時間帯にアクセスしてきているんだろう?
- なんでここまで来たのに商品を買わないんだろう?
自分の中で理由をつけるのは簡単です。
でもそれを繰り返していても、商品は売れないですよね。
広告に言い換えると・・・
- どんな広告を経由して
- どんなページを見て
- どんな成果を上げたのか
- どんな人達がいるのか
- 目を凝らし、耳を澄ます必要がある
広告を分析するのは
- 自分のアプローチが上手く行っているのか
- もしくは上手く行っていると思いこんでいないか
常に確認して、
- 自分が誤った方向へ消費者を導いていないか、
- 自分が誤って消費者を導けていると思いこんでいないか
それを自身で気づくために、する必要があるのです。
なぜ広告を分析する必要があるのか
一言で表すなら、**「知った気にならないため」**でしょうか。
全ては金城さんのこの一説につきます。
君が人を好きになった時に取るべき最善の方法は、
その人のことをきちんと知ろうと目を凝らし、 耳をすますことだ。
そうすると、君はその人が自分の思っていた よりも単純ではないことに気づく。
極端なことを言えば、君はその人のことを 実は何も知っていなかったのを思い知る。引用元:金城一紀 『映画篇』より短編作品「愛の泉」(集英社/2007年)
どうでもいい話
そんなつらつらと話を述べた筆者ですが、
生きてきて**「愛の告白」**というものをされたことがありません。
モテる奴は爆発してしまえー!
おわりに
明日は、世の中にあふれている「広告用語」を知りましょう