この記事は、ラクス Advent Calendar 2024 11日目の記事です。
はじめに
転職して新しいチームに入り、週1でKPT振り返りを始めて3ヶ月。
ある日、同じ出来事に対して「Keepだ」と言う人と「Problemだ」と言う人に分かれるという現象に遭遇した。
最初は戸惑ったが、タックマンモデルを思い出してスッと腑に落ちたので、この記事で共有したい。
こんな人に読んでほしい
- 新しく発足したチームでリーダー/ファシリテーターをしている方
- 振り返り(KPT等)を導入したいが、意味があるか不安な方
- チーム内で意見が噛み合わず悩んでいる方
この記事を読むと分かること
- タックマンモデルの各フェーズが、実務でどう現れるか
- 振り返りを続けるとチームがどう変化していくか
- 「混乱期」を恐れなくていい理由
先に結論
- 混乱期と統一期は、反復横跳びのようにぐるぐるしながら繰り返す
- その先にようやく、統一期の完全体(=機能期)が見えてくる
- 振り返りは、チームの"現在地確認ツール"として非常に優秀
以下、詳細を書いていく。
タックマンモデルって?
筆者は以前から、チームビルディングには「タックマンモデル」のようにフェーズが存在するということを聞いていた。
タックマンモデルは以下のようなもので、チームの形成には「形成」「混乱」「統一」「機能」「散会」の5フェーズがあるというもの。

画像出典元:タックマンモデルでチームビルディングを効果的に行う方法
めちゃくちゃ雑に言うと
- 最初は緊張と遠慮があり(形成期)
- 次に価値観のぶつかり合いがあり(混乱期)
- それが徐々に揃っていき(統一期)
- チームとしてハイパフォーマンスになる(機能期)
- そしていつかは解散する(散会期)
という感じ。
振り返りの運用:頻度と手法
筆者は2024年9月に今の会社へ転職し、新しい開発チームにアサインされた。
チームに入るまでは、月に1回の振り返りがルーティーンだった。ただ前職でアジャイル開発をしていた経験もあり、「振り返りは1週間に1度のほうが良い」と提案した。
手探りでも良いのでやらせて欲しいと言ったところ、上司・チームメンバーともに快諾してくれたのは本当に感謝している。
振り返りの手法はKPT(Keep/Problem/Try)を採用した。
※KPTが何かについては、調べれば良い記事がたくさんあるのでここでは割愛する。
【形成期】振り返りが定着しない
週に1回というルーティーンの変更と、時間以内に集中してアウトプットするという負荷をチームにかけることになったため、最初からうまくいったわけではなかった。
ただ、これは当たり前というか、最初からパフォーマンスを発揮した振り返りができるわけではないというのは認識を持っていた。
ここはまさに 「形成期」 であるがゆえのことだったと感じている。
【混乱期】同じ事象で評価が割れる
振り返りを続ける中で、面白い現象が起き始めた。
「認識のズレ」をKeepと捉える人、Problemと捉える人
ある出来事に対して、
- Aさん:「認識がズレていたと分かったのでKeep」
- Bさん:「認識がズレていたのでProblem」
と意見が割れたのだ。事象として観測しているのは一つのことなのに、人によってそれを問題と捉えているのか、知見を得たと捉えているかは感じ方が異なっていた。
なぜ評価が割れるのか?──視点の違い
自分はどちらかというと「チームの問題が顕在化したこと」に対してはポジティブに感じられるタイプだが、それがPJのスケジュールへクリティカルに影響するとネガティブに感じるという発見があった。
別のメンバーは、改善点が見つかったのでPJの状況に関係なくKeepだとポジティブに捉えている人もいた。この考えに僕はチームメンバーとして大変救われることになるが、それはまた別の話なので今回は割愛する。
言いたかったのは、どこに視点を持っているかによって捉え方が変わるということ。
- 「スケジュール」──もっと言うと「デリバリー」を重視している人:仕様変更や、すり合わせられていない問題が露見すると、そこが後ろ倒しになるので Problem
- 「チームの立ち上げ」を重視している人:そういった認識のズレに気づけたこと自体が学びなので Keep
まさに、向いている方角が違うがゆえの価値観のぶつかり(というほどでもないかもしれないが)が発生しており、「混乱期」 のフェーズに差し掛かったのではと思うようになった。
【統一期へ】認識は揃ったり、ブレたり
こういった認識の違いが起きても、「認識が違っていたよね」ということをお互いが自覚できれば、次の週の振り返りでのアウトプットに影響が出てくる。
具体的には、ズレていた視点が揃い始めてくるので意見が揃いやすくなってくる。「自分もそれを思っていた」という部分が出てくるようになる。
(これは今思い返すと、結構偶然もあったのかもしれない)
この感覚が身についてくると、意見を出す時に「みんなもきっと同じことを思っているだろう」という安心感を抱きやすくなり、結果的に振り返りでの発言レベルが上がっていく。
もう少し具体的に言うと、
- 「この文脈で話をしても誤解なく伝わるだろう」
- 「センシティブな言葉を使っているがネガティブに捉える人はいないだろう」
という安心感が生まれる。よく言われる言葉を使えば、心理的安全性が向上している状態といえる。
ここは 統一期 に向かっているのかも・・・という自信を抱き始める。
でも、完全には揃わない
一方で、全ての視点・観点においてみんなの意識が揃っているわけではない。
別のまた異なるイベントが発生した時に、人によってそれをポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかはまた異なったりする。ここでまた、チームが 混乱期 を脱せていないことを自覚したりする。
つまるところ、混乱期から統一期に向かう途中ではある種反復横跳びのような、その両方の状況を不定期に繰り返す現象が発生しているといえる。
一部統一期、一部混乱期──多くのチームの現在地
世の中のチームはきっと、この「一部で混乱が起きていて、一部で意思が統率されている」というハイブリッドな状況にいるチームが多いのではないかと思う。いや、具体的な調査をしたわけではなく単なる経験則で喋っているが。
それが統一期に完全に移行したら、「機能期」として一番ハイパフォーマンスな状態になるのかもしれないと思った。
現在私がいるチームはまだ混乱期を脱しているとは言えない気がする。
ただ、日々の振り返りの質の向上やメンバーの意識の変わり方を見ていると、やがて統一期に完全移行できるであろうという希望は持っている。
まとめ:振り返りは「現在地の確認ツール」
今回はタックマンモデルを題材に扱ったが、これはチームの状況を表す物差しとしてやはり洗練されているのだろうと思う。また、その現在地確認として「振り返り」という行為が非常に有用なイベントであることに気づいた。
あなたが見ている一つの事象が、他の人から見たらどう写っているか?──そこをすり合わせていくことで、きっとあらたな視界が開けるかもしれない。
さいごに:心理的安全性のために、個人的に心がけていること
振り返りをするうえで、私が個人的に一番心がけていることがある。
(十分にできている自信はまだないが)
それは、自分の失敗を正直にアウトプットすること。 これが意外と難しい。
プライドとか、後輩を前にした意地とか、評価を下げたくないとか、いろんなしがらみが邪魔をする。もっと言うと、その思いが「自分は失敗してないのでは?」という錯覚すら起こすときもある。
でも、その感情に支配されて正しい失敗のアウトプットが出来ていないと、おそらくチームの統一は訪れない。周りの人が失敗の原因が明らかになっているのに、自分だけそれに気づいていないのは「同じ方向を向けていない」からだ。
言うのは簡単でも、実行するのは難しい。自分も日々この感情と戦いながら毎日を過ごしている。
でも、意外と失敗を認めてしまえばリラックスできたりする。
自分は、真言宗の開祖・空海のこの言葉をいつも思い出している。
心を楽にする秘訣は弱みをさらけ出すことである。
――弘法大師空海
冒頭で「混乱期を恐れなくていい」と書いたが、そのための第一歩は、自分の弱みを自分から出していくことなのかもしれない。
そして、逆に チームメンバーが自分の失敗や弱みを語ってくれたときは、そのことに大きく感謝し、リスペクトを持って受け入れてあげてほしい。
ぜひ、みなさんが
- 心を楽にして
- チームのパフォーマンスを上げて
- 混乱期を乗り越えられること
を祈っております。
このチームがその後どうなったか・・・は、またどこかのタイミングで、続編として報告します。