12月14日月曜日を担当させていただきました、Spicaの宮本と申します!
機能拡張スタンダードAll-Inという、細かい機能全部乗せ的なプラグインを販売しております。
リリースしてからはや3年がたちました。
今後もしっかり機能追加など行って良いプラグインにして行こうと思っております!
お題はPTA
今年はなにを書こうか、いくつか候補のテーマがありました。
- そろそろkintoneを導入されてだいぶ経つ企業様もおられるであろうことだし、増え続けるkintoneアプリを整理するための管理者むけのアプリでも……
- 意外とつまづく方が多いんじゃないかと思うSAML認証で、いろいろなIdPでの設定具体例でも……
みたいなのをちょっと考えていました。
が、今年は少し趣向を変えてもっとkintoneにまつわるよもやま話を書いてみるのもよいのではないか?
ちょうどアドベントカレンダーも半分。箸休め的なやつをひとつ。
今年のお題といえばやはりコロナの話ははずせないのでは?
でもどんな切り口で……そうだ、アレだ! PTAの話をしよう!
コロナでいちばん大変な思いをしているのは子供たちだ。
社会人の1年と子供の1年ではその価値は遥かに子供たちのほうが大きい。
コロナの影響を最も深刻に受けているのは子供たちなのだ。
そんな子供たちのために、親ができる活動のひとつにPTAがある。
完全に私事ですが、いま中学生の娘がひとりおりまして、私が昨年まで小学校でPTA本部役員を4年間やっておりました。
PTA本部に入って考えるのはやはり運営のIT化であろう。
そして、kintoneにはあるのです。
非営利団体向けライセンス という神プランが!
これだ。この話をしよう。
というわけで、私の体験談にしばしお付き合いください。
非営利団体向けライセンス
年間 9,900円で 900ユーザーが使用可能……って、え、900ユーザー!????
増えてない!? 前は300ユーザーじゃなかったっけ?
マジか……。
ええと、kintoneが年間9,900円 / 900ユーザーで使えます。しかもスタンダードプランです。
月額ではなく年額です。普通は1ユーザーあたり年額だと17,640円ですね。
単純に割引なし(笑)で900ユーザーで使いますと、費用は15,876,000円と。
いっせんろっぴゃくまんえん。
それがPTAで導入する場合、1万円です。
ちょっと何を言ってるのかわからないレベルの割引き率ですが、ここにサイボウズさんの社会貢献への本気度が表れていると思うんですよね。
これはPTA本部役員をやっている身としては導入しない手はないでしょう。
実際に申し込みました
PTAという組織の課題で、IT化や効率化で解決できることと解決できないことが当然あります。
解決できないことの代表例が 役員人事 でしょう。
悪名高い次年度の役員決めです。
これはIT化でどうこうという話ではないからあとで考えよう……。
そう考えてしまったのがおそらく失敗の根本原因だったな、と思います。
そう。何を隠そうこの話はkintone導入の失敗談なのです。
PTA本部に入って実際の活動がようやくわかってきた3年目、満を持してkintone導入の提案をしました。
稟議というか本部の他の役員に賛成してもらい、年間予算への組み入れも会員の過半数の了承を得て、申込み。
ライセンスの審査も無事に通過し、まずは導入することができたのです。イエーイ!
導入の障壁とそれ以前の問題
やりたいことはシンプルでした。
記録を残すこと
この一点突破です。
というのも、本部役員として所属しているはずなのに、いつまで経っても知らない事実が出てくる。
なぜやっているのか、なぜ必要なのか誰も知らない。誰に聞けばいいかもわからない。
10年分の議事録……ほしい……。
もうこれだけです。
いちいち議事録を作るのは無理だとしても、LINEのチャットではなくkintoneに決定事項だけでも残されていれば十分だと。
そうすれば自動的に、 脱USBメモリ も、できるはず。
USBメモリですよ。
現役で主ストレージとして運用されています。すべてのファイルはUSBメモリに収まって継承されてきていたのです。ちなみに世代管理されていないバックアップ用のUSBメモリがさらに2つありました。
学校はちゃんとしてるはずです。
ですが、PTAは……
「個人情報? 知らない子ですね」
という感じ。取り扱いに気をつけましょう、という話はするものの……、それはリスクアセスメントでは無いわけです。
児童の名簿なんかのデータは入っていませんが、関係者の住所電話番号なんかがそこそこの人数ぶん入っています。
保管場所へのアクセスは容易ですし、いわゆるCIA(可用性 完全性 機密性)リスクはアセスメントするまでもないという状態。
挫けてる場合ではない。こんな危なっかしい状態、なんとしてもやめなければ。
ちなみに学校にPTAが使用できるネットワーク環境はありません……。
そりゃそうです。
なにしろPTAで使っていたPCのOSはwindows 7でした。徹底的にスタンドアローンで使っているからまだギリギリセーフ……いやそれでもアウトでしたが、それは狙ってネット非接続運用をしているわけではなく、結果的にそうというだけ。
この事実を知った時の私の絶望感を誰かと分かち合いたい(笑)
正直私が学校側のシス管だったとしても絶対に学校のネットワーク設備は使わせないっすね。おととい来やがれってなもんです。
それでも生きていかざるを得ない
やれることをやるしかない。PTAはボランティアだから、やれる人がやれる範囲で、なんていう理想論を振りかざしている場合ではありません。
なにしろ自分の子供が通っている学校のことなのです。地域の防犯活動維持とかも関わってくる、がっつり自分ごとなんですよね……PTAって。
新しいPCの購入を提案し、ポータブルWifiの契約を提案し、USBメモリ内のデータを確認し、議事録的な記録を残すべく一足はやく導入していたkintoneにアプリを作っていきます。
保護者名簿、備品管理、共用のイベントカレンダー、とりあえずこれだけでもなんとかしよう。
ヒト、モノ、コトの棚卸しをするのだ、と。
さくっとアプリを用意したところで、LINEでやり取りされていた決定事項や共有されたファイルの転載をしていきます。
そして他の本部役員の方々にも、kintoneができましたよー、目的と使い方はこうですよー、とりあえずやり取りのデータは私がどんどん入れていきますよー、どんなものか触ってみてわかったら入力もしてみてくださいねー、と促していきます。
「俺、本部に浸透したら一般の保護者にもkintone開放するんだ……」
今思い返したみたら完全に死亡フラグになっているようなことを考えていました。
LINEが強すぎる
本部に方たちとのやり取りはこんな感じでした。
「どうやってログインするんですか?」
「IDにメールアドレスを入れてもらってですね、パスワードを入力してください」
「はいれました! もしかして毎回パスワード入れないとダメですか?」
「そうですね、いちおうシングルサインオンというやつで自動的にすることもできますけど……」
「なるほどー。とりあえずLINEのほうに書きますね」
とりあえずLINEに書きますね。
とりあえずLINEに書きますね……。
ぴえん。
「キントーンでしたっけ? どうですかあれ。うまくいってます?」
「そうですね、まだまだこれからですけど、データは増やしていってますから見てみてください」
「はーい。アナログ人間なもんでとりあえずLINEで確認しまーす。そっちはお任せしますね!」
とりあえずLINEで確認。
とりあえずLINEで確認……。
ぱおん。
ていうかアナログ人間て。
お断りしておきますが、すべてのPTA組織がこうではありませんし、もっとうまく導入を進められる方もおられると思います。あくまで私の体験談です。
それからPTA本部役員の方たちのリテラシーがダメだと言いたいのではありません。
みんな時間の無いなか能動的に子供のためとボランティア活動をするような人たちです。やる気めっちゃあります。
仕事に子育てにと忙殺される日々の合間合間に、チャットを開いてPTAの相談をする。決め事をする。
思うに、スイッチを切り替えるという考え方ではダメなんですね。PTAの活動は私生活の延長なのです。
いかにして生活の一部にkintoneにログインする行動を浸透させるか。最初にここから考えなければいけなかったのです。
ひとがいない
そこから先はもう、敗戦処理みたいなものでした。
導入したからにはデータは入れ続けます。
井戸端会議的に流れていってしまうLINEと違い、話題別にまとまって確認できる場所があることはやはり便利で、ずいぶん助けにはなったと思います。
しかしいよいよやってくるわけです。
PTA最大の宿敵、 役員決め が。
幸い(?)、うちのPTAは全員参加。そのかわり負担を極力分担して年間で1~3日くらい活動に出席してもらうだけ、という形にしています。
それもどうしても無理という場合にもなんらかの解決策を考えます。
それが良いか悪いかは諸説あるかと思いますが、誰かが立候補するのを会議室でひたすら無言で待つような地獄の耐久レースはありません(笑)
私の関心事はそんなことではない。なんならもっとハードルが高い、kintone管理者の引き継ぎの問題があるのです。
アプリを作れるような人がいなくてもいい、既存のアプリにデータ入力ができるレベルの人が何人かできれば……。
もう1年なんとか運用して、慣れてもらえれば……。
とそんなことを考えていました。
そして役員決めが終わった時……。
本部役員も結構いれかわってましたよねー
また一からだ。しかもそれは今年だけの話じゃない。さすがに、終わった……。
そうだ。PTAは会社じゃないんだ。管理スタッフを雇えるようなNPO法人でもない。本部役員はおろか、会長だって数年で代わるんだ。
こんなに人材が流動的な組織で、どうやって技術継承しろというんだ。
ただでさえ本部役員をやってもいいという人は少ない。
そこに加えて、kintone管理者ができるなんて、はぐれメタルどころかメタルキング……いや、プラチナキング級のレアキャラクターなんじゃないか?
そんな人材が毎年存在する。それ自体がもはや奇跡ではないか。
そして気づきました。そうか俺はプラチナキングだったんだ!(違う)
そしてタイムアップへ……
PTAとは Parent Teacher Association の略です。
親と先生による団体です。先生もkintoneの運営に関わってもらえれば、技術継承に光が見えるかもしれなかった。
これを当初から想定していなかったことも敗因のひとつです。
でも先生は本当に忙しいのです。個人的には学校のなかで子供のことをしっかり見ていてもらうことに時間を使ってほしい。
そんな想いもあって、相談することも控えました。
私の子供も卒業する年となっていました。顧問という形で本部役員に籍を残すこともできます。でも、学校に子供が通っていない人がPTA活動に関わるような体制は歪であると言わざるを得ません。
しかも世はまさにコロナ禍のなかにあり、PTA活動どころか学校活動自体がおぼつかない始末。
組織の革新を進めるような攻めの姿勢にはなかなかなれないのも仕方のないところ。
kintone導入から撤退するしかありませんでした。
この活動でできたことといえば、
メーリングリストを導入し、ちょっとだけペーパーレス化ができたこと。
USBメモリのデータをGoogleドライブのストレージに移してそこをマスターとしたこと。
これくらいです。これも正直いつまで続くかわかりませんが……。
PTAのIT化を阻む壁とは
PTAのIT化は、その活動に深く関わる人ほどそこに強い思いを抱いているといっても良い悲願です。
それなのになかなか実現しないのは、ここにずっと書いてきた通り、事業継続性の問題が大きいからだと思いました。
PTAの効率化というテーマでいろいろな記事を見かけますが、どうやって意識改革をしたか、何を導入したかという話はあっても、継続する仕組みをどう作ったかまでは話が及びません。成功しているところはおそらく、先生の協力などずっと関わり続ける人がいるのではないかと思います。
LINEが強いということを書きましたが、これはチーム内にシステム管理をする人が不要という一点のみで、その強さが実現されているのでしょう。
脱システム管理こそが、PTAをIT化するための必須事項だと思うわけです。
PTA本部役員でこうした失敗を経験して、教育に強い関心を持つようになりました。
教育改革の大きなテーマである「探究」する姿を、我が子に見せるという意味でも、どんな形がベストなのか考え続けていきたいなと思っています。
そこにkintoneを使うことができれば、非常に面白い。
ということで、いちおう最後にkintoneの話ですよ、という薄いアピールをさせていただいたところで、PTAとkinoneにまつわるよもやま話を締めくくりたいと思います。
次は中学校PTAだ!(笑)